MAVERICK DC GROUP主催のライブイベント「V系って知ってる? powered by MAVERICK DC GROUP」が、12月27日に東京・日本武道館で開催される。
直球とも言えるタイトルが目を引くこのイベントのテーマは「V系の再興」。出演者にはD'ERLANGERを筆頭に、ムック、DEZERT、アルルカン、キズ、girugameshといったさまざまな時代のV系シーンを盛り上げてきた猛者達が名を連ねている。さらに先日、“V系Respect Super Session”なるパートで蜉蝣、LUNA SEA、GLAY、DIR EN GREY、BUCK-TICK、シド、ZI:KILL、ムック、hideの楽曲がバンドの垣根を超えたメンバー達によって披露されることが明らかに。参加アーティストの豪華な顔ぶれには驚かされた人も多いはず。
そんな話題沸騰中のイベントを盛り上げるべく、音楽ナタリーではkyo(D'ERLANGER)、ミヤ(MUCC)、Sacchan(DEZERT)、奈緒(アルルカン)、来夢(キズ)という各バンドのブレインとも言えるメンバーによる座談会を企画。それぞれのルーツ、ヴィジュアル系バンドとしての矜持、これからのシーンに期待することなどを語り合ってもらった。
取材・文 / 西廣智一
イベント情報
V系って知ってる? powered by MAVERICK DC GROUP
2022年12月27日(火)東京都 日本武道館
OPEN 13:00 / START 14:00
<出演者>
DEZERT / キズ / アルルカン / ムック / D'ERLANGER / girugamesh / V系Respect Super Session
蜉蝣 Respect Session
千秋(Vo / DEZERT)、結生(G / メリー)、海(G / vistlip)、kazu(B / the god and death stars、gibkiy gibkiy gibkiy)、きょうのすけ(Dr / キズ)
LUNA SEA Respect Session
葉月(Vo / lynch.)、ミヤ(G / ムック)、ヒロト(G / アリス九號.)、明希(B / シド)、堕門(Dr / アルルカン)
GLAY Respect Session
maya(Vo / LM.C)、酒井参輝(G / 己龍)、悠介(G / lynch.)、YUKKE(B / ムック)、アレン(Dr)
DIR EN GREY Respect Session
ガラ(Vo / メリー)、reiki(G / キズ)、來堵(G / アルルカン)、ユエ(B / キズ)、SORA(Dr / DEZERT)
BUCK-TICK Respect Session
逹瑯(Vo / ムック)、Shinji(G / シド)、柩(G / NIGHTMARE)、祥平(B / アルルカン)、ゆうや(Dr / シド)
シド Respect Session
暁(Vo / アルルカン)、Miyako(G / DEZERT)、ユエ(B / キズ)、影丸(Dr / -真天地開闢集団-ジグザグ)
ZI:KILL Respect Session feat,deadman
眞呼(Vo / deadman、LOA-ROAR)、ミヤ(G / ムック)、aie(G / deadman、the god and death stars、gibkiy gibkiy gibkiy)、kazu(B / the god and death stars、gibkiy gibkiy gibkiy)、晁直(Dr / lynch.)
ムック Respect Session
来夢(Vo / キズ)、暁(Vo / アルルカン)、奈緒(G / アルルカン)、reiki(G / キズ)、Sacchan(B / DEZERT)、Яyo(Dr / girugamesh)
hide Respect Session
来夢(Vo / キズ)、PATA(G / X JAPAN)、ミヤ(G / ムック)、明希(B / シド)、SORA(Dr / DEZERT)
D'ERLANGER Respect Session
HYDE(Vo / L'Arc-en-Ciel、THE LAST ROCKSTARS) / Die(G / DIR EN GREY) / テツ(B / メリー) / ネロ(Dr / メリー)
SADISTICAL PUNKERS
kyo(Vo / D'ERLANGER) / HYDE(Vo / L'Arc-en-Ciel、THE LAST ROCKSTARS) / 逹瑯(Vo / ムック) / 千秋(Vo / DEZERT) / CIPHER(G / D'ERLANGER) / Die(G / DIR EN GREY)/ Miyako(G / DEZERT) / SEELA(B / D'ERLANGER) / Sacchan(B / DEZERT)/ Tetsu(Dr / D'ERLANGER)/ SORA(Dr / DEZERT)
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絶大な影響力を持つX JAPAN
──今回はヴィジュアル系やVisual Rockというキーワードのもと、皆さんに集まっていただきました。世代の異なる皆さんですが、それぞれルーツも異なると思います。こういう貴重な機会ですので、まずは皆さんにとってのV系のルーツや音楽的影響について伺えたらと思います。
Sacchan(DEZERT) 僕は歳の離れた姉の影響で、小学生の頃からX JAPANやLUNA SEAに触れる機会が多くて。その中で当時めちゃくちゃテレビに出ていて、とても刺激的だったのがGLAY。ただその頃はヴィジュアル系という認識ではなくて、バンド音楽のくくりの中でGLAYを見ていて。そのあと高校生になったときに友達からMUCCの「ガーベラ」という曲を聴かされて、そこでヴィジュアル系というものをしっかり意識しました。
来夢(キズ) 僕もSacchanとけっこう一緒で、最初はXなんです。小学校のときに親父が隠し持っているAVを観ようとしたら、実はそれが「破滅に向かって」のビデオボックスだったという(笑)。そこから始まりました。
奈緒(アルルカン) 親父さんがXを好きだったんだ。
来夢 そう。そこからハマって、hideさんが大好きになって聴くようになって。で、高校のときにMUCCさんの曲を友達に借りて、「朽木の灯」はめちゃめちゃ聴きました。Visual Rockのドロっとした世界観にどハマりしたことを、よく覚えています。
奈緒 僕は子供の頃、フルートを吹いていて、バンドサウンドとはまったく縁がなかったんです。でも、当時音楽番組ですでに解散していたX JAPANを観たときに、「これはメタルだけどクラシックだ!」と衝撃を受けたのがルーツ。僕が知ったときにはすでにhideさんは亡くなられていて、同じ番組の中で「紅」と一緒にhideさんのソロ曲も紹介されていたんですが、「同じ人なんだ!」と驚いて。音楽の幅広さもそうですけど、hideさんの立ち姿がカッコよくて「ギターを弾きたい!」と思うようになりました。
ミヤ(MUCC) みんなX JAPANと言ってますけど、僕はXからですね。そこが世代の違いだと思うんですけど、小6のときに兄貴の部屋にあった「BLUE BLOOD」のカセットテープを聴かされて「なんだこれは!?」と驚いて。自分もずっとピアノをやっていたし、親も音楽の教員だったので、「親の仕事と同じ匂いがこの人たちの音楽からする。面白い!」と思って、まずドラムの道に進んだんです。ただ、ツーバスのセットを買ってもらえなくて、「少年マガジン」を叩いたりしていて、そこから紆余曲折を経てギターの道に進みました。
──皆さんの世代にとってX、X JAPANの影響は相当強いんですね。
ミヤ そこはやっぱり、自分の音楽に対するイメージというのをひっくり返してくれましたから。クラシックが聞こえてくるけどロックだし、ドラムがドコドコして速いし、髪が立っているし。苦手だったものが「あれっ、カッコいいじゃん!」と自分の中で逆転した、不思議な感覚でした。
ヴィジュアル系萌芽期におけるkyoのロック観
kyo(D'ERLANGER) 僕はMUCCの「鵬翼」と「極彩」ですかね(笑)。
全員 (笑)。
kyo というか、やっぱりみんな邦楽なんですね。僕達の時代にはそれこそヴィジュアル系という言葉もなかったですし、そもそも絶対的な情報量が今より少なかったんですよね。だから、新宿の輸入レコード街を1日中歩き回って、ジャケ買いして……ハズレのほうが多かったんですけど、その中から自分の好みの音を見つけて。ちょうどMTVが日本でも深夜に始まった頃で……って、すごい昔の話をしていますね(笑)。観ていると“いい子の音楽”しかなくて、それほど興味が持てなかったんです。僕にとっては髪が長くて化粧をしていて派手な格好をしていて、どこかアンダーグラウンドの匂いを感じさせて、音も“ワルそう”でジャケットが怖いのがロック。だから、みんなが言うXはそれを体現していたんでしょうね。これだけ世代が離れていて、入り口やきっかけも違うんだけどロックに感じる匂いというのは共通なのかなと、みんなの話を聞いて思いました。ただ、Xとはアマチュア時代ずっと一緒にやっていましたから、「へえ、すげえな」と思うと同時にちょっとムカつきます(笑)。
ミヤ (笑)。当時はメディアを通してでしかロックのことは知らなかったですからね。まだ子供でしたし、インディペンデントというものもよくわからないし、ライブハウスに通うようになるのももっとあと。だから、テレビで出ているから好きになれたというのも大きくて。
──確かにXが出てきて以降、特に90年代後半に差しかかるくらいまではヴィジュアル系バンドも多数音楽番組に出演していたので、テレビの影響は絶大だと思います。
kyo そうですね。そもそも僕らがバンドを始めた時代には、ロックアーティストはテレビに出ませんでしたし。それが、90年代以降は特にロックバンドが音楽番組に出ることが普通になった。それと同時にCDもバカみたいに売れて、いろいろ時代が変わっていった。だから、今みんながバンドを始めるうえですごく大きな要因にはなったんでしょうね。
奈緒 でも、それ以降はバンドからアイドルにどんどんシフトしている感じがありますよね。特に2000年代以降はヴィジュアル系と呼ばれるバンドがテレビにはほとんど出なくなり、テレビで観られないから結局ネットで探すという。まだYouTubeが違法みたいなノリの時期でしたけど、そのときにいろいろ探していたことは覚えています。
来夢 確かに、そういったバンドをテレビで観た印象はほとんどなくて、どちらかというとDVDとかで観ていた印象ですね。
Sacchan 僕は出身が田舎なので、情報を得る手段が「Mステ」(ミュージックステーション)か「うたばん」か「HEY!HEY!HEY!」(「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」)くらい。本当に失礼な話ですけど、テレビに出ているバンド以外は存在しないと思ってしまうくらい情報が少なくて、東京に出てきたくらいのときにさっき話に出たYouTubeとか、そのへんがちょこちょこ普及し始めた。ヴィジュアル系というジャンルがコアになり始めたのが、その頃なのかなという印象は確かにありますね。
ミヤ たぶん自分がバンドを始めたぐらいの頃には、ヴィジュアル系バブルはもう終わっていて、インディペンデントがカッコいいという時代に入っていたと思うんです。メディアとかそういうところに出ないほうがカッコいいでしょ、みたいな。今みたいにAmazonとかなかったけど、コアなファンはライブ会場や通販でCDを買えるし、それで5000枚とか1万枚とか売れていたので、ブームは終焉しているけどCDは売れるという時代。変な時代でしたけど、そこはある意味救いでしたね。
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ヴィジュアル系は文化