音楽ナタリー Power Push - 電波少女

被害妄想が生み出した、キャッチーでコアなヒップホップ

2015年7月リリースの2ndアルバム「WHO」のヒットによって、その名を一気に広めた電波少女。昨年12月にリリースしたiTunes Store限定シングル「COMPLEX REMIX feat. Jinmenusagi, NIHA-C」がiTunes Storeのヒップホップ / ラップのシングルチャートで1位を記録し、今年2月に行った東京・WWWのワンマンライブはチケットがソールドアウトするなど右肩上がりの状況が続いている。そんな彼らから届けられた新作「パラノイア」は、テレビ東京「音流~ONRYU~」5月度エンディングテーマ「笑えるように」を含んでおり、ポップ度を増したトラックと「“被害妄想”が全体のテーマ」だというエッジの効いたリリックが1つになった充実作。話題の若手ラッパー・ぼくのりりっくのぼうよみがリスペクトを公言している電波少女の存在は、本作によってさらに幅広い層に浸透していくことになりそうだ。

今回音楽ナタリーでは電波少女の2人にインタビューを実施。前作「WHO」以降のライブの手応え、「パラノイア」のコンセプト、ポップとコアのバランス、ファンとの関係性などについて聞いた。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 小坂茂雄

2人でも完結できるライブが目標

──前作「WHO」以降、東京・Shibuya Milkyway(参照:「幸せ者だ!」電波少女、客演ゲスト続々ワンマン大団円)とWWW(参照:電波少女、濃密ワンマンでMINAMI NiNE&ぼくりり出演イベントを発表)でのワンマンライブを開催しましたが、ワンマン含めて、2人体制でのライブの手応えはどうですか?

電波少女

nicecream 数もけっこうこなしてきたので、ある程度は安定してきたと思います。まだまだですけどね……。

ハシシ だいぶ形ができてきたと思います。けど2人で完結できる曲が足りないので、常に友達のラッパーやダンサーをゲストとして招集していて……。そこは解消していきたいです。

──2人でライブについて話し合ったりしますか?

ハシシ 2人ではライブのやり方よりも、メンタル的なことを話すことが多いんですよ。「今日のライブ、大丈夫だろうか?」「怖いね」とか。

nicecream 「緊張するね」みたいな。

ハシシ 基本的にマイナスに考えちゃうんですよね。イベントに出させてもらうときもいつもアウェイというか、「誰も自分たちのことを知らない」という意識でやってるし。「知ってくれてる」という体でやるとだいたいスベるので……。まあ、それもどうなんだ?って話ですけど。ワンマンだったり、自分たちのホームみたいな雰囲気だったら調子に乗ったことも言えるけど、アウェイだとほとんどしゃべらないんですよ。内弁慶なんですよね、ホントに。心が折れそうになるというか、途中で歌うのやめようかなって思ったり……。

nicecream ハハハハハ(笑)。ダメだ。

ハシシ ずっとホームみたいな状態が続けばいいなと思うんだけど、それだけでは成長につながらないですからね。まずは誰も自分たちを知らない場所でもちゃんとカマせるようにならないとダメだなって。あとね、もっとお客さんを煽れる人になりたいんですよ。2人で前に出て、もっと盛り上げたいので。MCを一切しないという手段もあるけど、自分がライブを観ていて楽しいなと思うのは、やっぱり煽りまくってるようなライブなので。

──ハシシさん、ライブではあまり煽らないですよね?

ハシシ そうなんです。

nicecream 煽れないよね。

ハシシ 友達のラッパーはそういうのがうまいんですよね。自分もそうなりたいけど、変に冷めて見ちゃってるときもあるんですよね。「俺がいきなり『盛り上がってるかー!?』とか言ったらウケるな(笑)」とか。もっとバカにならないといけないんだけど、なりきれない自分もいるっていう。

2ちゃんを見て「いいなあ」って思ってる

──電波少女のライブを観てると、オーディエンスにもハシシさんと似たタイプの人が多いような気がします。パーティ的に盛り上がるよりも、じっくりラップを聴いているというか。

ハシシ

ハシシ あ、なるほど。確かにそういう人は多いと思います。2月にWWWでワンマンライブをやらせてもらったとき、それがモロに出ちゃったんですよ。去年のMilkywayでのライブは密集率が高かったから盛り上がってる感じだったんですけど、WWWくらいの規模は初めてだったし、お客さんも動揺してたというか、どうやってノッたらいいかわからなかったみたいで。じっくり聴いてもらうのもいいんですけど、本当はもっとハシャいでほしんですよね。「みんな、曲聴いてないっしょ?」ってくらいに(笑)。だからロックバンドがうらやましいんです。モッシュとか楽しそうじゃないですか。

──最近はそれを嫌がるロックバンドも増えてますけどね。「盛り上がるだけじゃなくて、ちゃんと音楽を聴いてほしい」っていう。

ハシシ ないものねだりですね。だって腕組んで聴かれたらイヤでしょ?

nicecream そうだね(笑)。

ハシシ 俺、2ちゃんねるをよく見るんですけど、「最近のロックバンドの客はガキばっかり。あいつら曲を聴いてねえだろ」みたいなことが書いてあるんですよ。それを見て「いいなあ」って思ってるっていう(笑)。ヒップホップにはモッシュやダイブといった文化があまりないですからね。ワーッと騒ぐようなライブをやれている人もいるけど、俺らはまだまだなので。

──意識して盛り上がりやすい曲を作ることもありますか? 

ハシシ 意識して作り始めることはあるけど、結局そうならないことが多いですね。うまいこと盛り上げやすい要素を絡めていければいいんだけど、そうすると曲自体が微妙になりそうで。まずは曲をよくすることを優先して、ライブのことはあとで考えるほうがいいみたいです。考えなくちゃいけないことはたくさんありますね……。

新作CD「パラノイア」 / 2016年5月11日発売 / redrec / sputniklab inc.
ニューアルバム「パラノイア」
初回限定盤 [CD+DVD] / 2484円 / RCSP-0069~70
通常盤 [CD] / 1944円 / RCSP-0071
CD収録曲
  1. 拝啓
  2. COMPLEX
  3. RY feat. Jinmenusagi
  4. オーバードーズ feat. NIHA-C
  5. Mis(ter)understand
  6. 笑えるように
  7. 追伸
DVD収録内容

電波少女 解散&復活ワンマンライブ“茶番” at Shibuya WWW(2016.02.27)

  1. INTRO
  2. INVADER feat. RAq
  3. LIAR GAME Remix (dance showcase)
  4. MO feat. NIHA-C
  5. Earphone feat. Jinmenusagi
  6. Mis(ter)understand

電波少女「パラノイア」発売記念インストアLIVE

2016年5月12日(木)東京都
HMV&BOOKS TOKYO 7Fイベントスペース
START 19:00
2016年5月15日(日)東京都
タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
START 21:00

電波少女 E.P “パラノイア” Release Party

2016年5月22日(日)東京都 clubasia
<出演者> 電波少女 / MINAMI NiNE / ぼくのりりっくのぼうよみ
電波少女(デンパガール)
電波少女

2009年に複数のMCおよびトラックメーカーで結成されたユニット。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在はラップ担当のハシシとDJ&パフォーマンス担当のnicecreamという2人で活動している。2013年7月に1stアルバム「BIOS」を、2015年7月に全曲フィーチャリングゲストを迎えた2ndアルバム「WHO」を発表した。12月にリリースしたiTunes Store限定シングル「COMPLEX REMIX feat. Jinmenusagi, NIHA-C」がiTunes Storeのヒップホップ / ラップのシングルチャートで1位を獲得し、2016年2月に東京・WWWにて開催したワンマンライブ「電波少女 解散&復活ワンマンライブ“茶番”」はソールドアウト。注目度の高まる中、5月に新作CD「パラノイア」をリリースする。