ハシシ(電波少女) × 鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)|どこかひねくれている2人が歌うリアル

電波少女が6月から3カ月連続で「ME」「FOOTPRINTZ」「NO NAME.」という3作のシングルを配信リリースした。9月27日にはメジャーデビューアルバム「HEALTH」の発売も控える。今回音楽ナタリーではハシシの憧れのアーティストであるゴールデンボンバーの鬼龍院翔との対談をセッティング。この日が初対面となった2人に、互いの音楽の共通点や、2組が活動初期によく利用していたニコニコ動画についてなど、多岐にわたるテーマをじっくりと語り合ってもらった。

取材・文 / 小林千絵 撮影 / 小原啓樹

ヒップホップってこんなに聴きやすいもんだったっけな

──今回は、ハシシさんがゴールデンボンバーの大ファンで、鬼龍院さんと話をしてみたいということで対談が実現しました。

ハシシ もともとV系っていうものに全然縁がなくて、勝手に食わず嫌いしてた部分もあったんです。けどニコニコ動画に上がってるゴールデンボンバーの動画が面白くて。それで自然と曲も聴くようになっていったんですけど、自分の気持ちと重なる部分が多かったんですよね。で、楽曲がすごいなっていうところでどんどん好きになっていきました。

鬼龍院翔 ありがたいです。

左からハシシ(電波少女)、鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)。

ハシシ 電波少女はよく「伝え方としてはストレートなんだけど、どこかひねくれてる」ということを言われるんですけど、これは確実に鬼龍院さんの影響が大きいです。特に「レッツゴーKY」って曲の歌詞がすごく好きで。一時期バイト先でいじめられてて行きたくなかったんですけど、この曲聴きながらなんとか毎日行ってました。

鬼龍院 ゴールデンボンバーではだいぶマイナーな曲ですね。この曲を挙げてくださるとは。ありがたいです。

──鬼龍院さんは電波少女にどのような印象を抱きました?

鬼龍院 申し訳ないんですけど、電波少女さんのことは今回の対談の話をいただくまで知らなくて。でもヒップホップ好きの友達に話をしたら「全然知ってる」って言ってました。

ハシシ 僕らなんて無名中の無名なので……。

鬼龍院 いやいや。でも今回対談をさせていただくのでいろいろ調べさせていただきました。まずは送っていただいたCDを聴かせていただいて、インタビューとかも読ませていただいて。マネージャーからヒップホップの方って聞いてたんですけど、曲を聴いてみるとだいぶポップス寄りでありまして……「あれ? ヒップホップってこんなに聴きやすいもんだったっけな」って。ヒップホップって全然聴いてこなかったんですけど、そんな僕でもスッと聴けるなと。あと僕のイメージでヒップホップって、自信満々で歌詞や言葉を発していくスタイルの人ばかりだと思っていたんですが、ハシシさんは病んでることも隠してないし、ネガティブなワードもどんどん言う。それでいて「強くなりたい」ってことでもなく、「俺は俺だからこれでしょうがねえ」ってあきらめてる。僕はそこに強さを感じました。今、おいくつでしたっけ?

ハシシ(電波少女)

ハシシ 30です。

鬼龍院 もしかしたら前まではちょっと違ったのかもしれないけど、今は「そんなひねくれた自分自身でやっていくしかない」っていう覚悟みたいなものができたんじゃないかなと思いました。「悩んでるんだけど、これが俺だし」って。

ハシシ すごく開き直ってる部分はありますね。分析してもらえてめちゃくちゃうれしいです。ありがとうございます。

鬼龍院 合ってるのかわかんないですけどね。ただ……僕、英語苦手なんで、英語の部分は全部読み飛ばして、日本語の部分だけかいつまんで読んじゃったんですけど(笑)。

ハシシ 自分も英語はほとんど意味わかってないんで全然大丈夫です(笑)。

自分の曲がひねくれてるんだかわかんなくなった

──先ほどハシシさんが、「ストレートだけどどこかひねくれてるのはゴールデンボンバーの影響だ」とおっしゃっていましたが、その点についてはどうですか?

鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)

鬼龍院 ずっと曲を作り続けてきて、自分の曲がひねくれてるんだかなんなんだか、もうわかんなくなっちゃった。僕がハタチでまだ童貞だったときに作った「幸せな歌」って曲があって「セックスの歌とか歌いたいけれど僕はした事がない」って歌ってるんですけど、これってストレートじゃないですか。だからひねくれてるんだかよくわかんなくなってきちゃって。

ハシシ ストレートに伝わるんですけど、言ってることがストレートじゃないんですよね。いい意味ですごく斜め上の発想と言うか、目の付けどころが面白いなって毎回思います。

鬼龍院 もしかしたら、それは普通、ポップスで歌詞にするようなことじゃないってことなのかもしれないですね。本来だったら「もっと愛を知った歌を歌いたい。でも僕は経験がない」とかそういう言い回しにしたりとかするのを、あえてカッコつかない言葉で表現してしまうストレートさが、ポップスで言うとひねくれているっていうことなのかもしれないですね。

ずるい考えでアンチをかわす

ハシシ(電波少女)

ハシシ 自分たちは現場でアウェーな場面が多かったりして。ヒップホップと言うにはロック調やポップス寄りの曲があったり。ゴールデンボンバーさんはエアバンドだし、認知される前はそういう風当たりが強かったんじゃないですか? そこで戦ってきたのは本当にすごいなって思うし、自分だったらメンタルが持たないだろうなあと。それでここまで多くの人に認めさせたのはすごいなとリスペクトの気持ちがあります。

鬼龍院 風当たりは強い部分ももちろんあったんですけども、僕はきっと脳みそがずるいんですよね。「こんな僕らを叩いたほうが、恥ずかしい」って思うように仕向けるんです。だからMCとかブログとかホームページとかでも、「俺たちがロックなんだ」とか余計なことは絶対に言わない。「弾いてないけど俺たちはバンドと思ってやってるんです」とかそのへんで熱くならない(笑)。だから「バンドじゃない」って言われたら「ですよね」って(笑)。例えばファンの子が、対バンのお客さんから「ゴールデンボンバーはバンドじゃない」って言われたとしても「そういうもんだよ。しゃーねーよ。だってバンドじゃねーよ」って言うようにする。そうすると、こんな僕らを叩いてもしょうがないって思えるようになるんで。

ハシシ ふふふ(笑)。

鬼龍院 僕はこのスタイルでいけると思っていたから、「楽器を演奏しない人はライブハウスに来ちゃいけない」と思ってる人には「すみません」って言っておくだけ。実際に同意も増えていった……と言うかみんなが理解してくれていった。結局わかり合えない人とはしゃべる時間が無駄ですから、関わらないようにしてきました。その結果、あんまりバッシングとか風当たりは感じなかったです。そういうずるさって大事ですよね。メンタル折れて活動をやめたら終わりなんで。

ハシシ 自分は気にしいなんで、世間の声とかわりと聞いちゃうんですよね。それでやってる音楽を変えようとは思わないんですけど、気にしますね。

鬼龍院 それは音楽ジャンルとかアンサンブルとかそういうことについて言われるんですか? ヒップホップじゃないとか?

ハシシ そうですね。

鬼龍院 じゃあ僕が聴いて「ポップだな」と感じたことが、バッシングの対象になっちゃうこともあるんですね。

ハシシ けっこう多いです。で、自分はそういうアンチとケンカしちゃうんで、見習わないとなと思いました。

鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)

鬼龍院 なんだって自分の信じているものを揺るがされると怒る人がいるんですよ。ヒップホップが好きで、心の拠りどころにしてる人が思うヒップホップからずれた人が現れると牙をむくもんで。ゴールデンボンバーの場合は、バンド界の中でもヴィジュアル系という界隈で、「ヴィジュアル系はこんなんじゃない」っていうのは確かにあったかもしれないですね。演奏してないということよりも「ヴィジュアル系なのにずっとふざけてる」っていう。でも僕は面白けりゃ何やってもいいと思ってるんですよ。面白けりゃ最悪ステージで歌わなくてもいいと思ってるぐらい。殺人以外は何やってもいいと。

ハシシ なるほど。

鬼龍院 あと音楽とお笑いを比べたときに、結局ライブハウスとかそういう小屋だと、笑いが勝ることがかなり多いんですよね。ドライブ中とかは音楽が勝るんですけどね。

ハシシ ショーとして観たときに。

鬼龍院 そう。エンタテインメントとして見ると。音楽番組の「うたばん」とか「HEY!HEY!HEY!(MUSIC CHAMP)」とかでもトークのほうが長かったのってそういうことだと思うんですよ。結局ユーモアと音楽、そのバランスですよね。バランスを見るためにも、アンチの人の意見にも耳を傾けるべきだとは思うけど。

ハシシ ためになります。

電波少女「ME」
2017年6月12日発売 / アリオラジャパン
電波少女「ME」
収録曲
  1. ME
電波少女「FOOTPRINTZ」
2017年7月10日発売 / アリオラジャパン
電波少女「FOOTPRINTZ」
収録曲
  1. FOOTPRINTZ
電波少女「NO NAME.」
2017年8月1日発売 / アリオラジャパン
電波少女「NO NAME.」
収録曲
  1. NO NAME.
ゴールデンボンバー「やんややんやNight ~踊ろよ※※~」(※※に各都道府県名)
2017年11月発売(発売日は後日発表) / Zany Zap
ゴールデンボンバー「やんややんやNight ~踊ろよ※※~」(※※に各都道府県名)

各都道府県限定
47種シングル

収録曲
  1. やんややんやNight ~踊ろよ※※~
  2. #CDが売れないこんな世の中じゃ(偽)
  3. やんややんやNight ~踊ろよ※※~(オリジナル・カラオケ)
  4. #CDが売れないこんな世の中じゃ(偽)(オリジナル・カラオケ)
電波少女「ショートムービー上映&全国ライブツアー『デリヘル』」
  • 2017年8月5日(土)北海道 Spiritual Lounge
    OPEN 15:30 / START 16:00
  • 2017年8月6日(日)宮城県 SENDAI BIRDLAND
    OPEN 15:30 / START 16:00
  • 2017年8月11日(金・祝)大阪府 北堀江club vijon
    OPEN 15:30 / START 16:00
  • 2017年8月12日(土)広島県 BACK BEAT
    OPEN 15:30 / START 16:00
  • 2017年8月13日(日)愛知県 CLUB 3Star IMAIKE
    OPEN 15:30 / START 16:00
  • 2017年8月20日(日)東京都 KOENJI HIGH
    [第1回]OPEN 14:30 / START 15:00
    [第2回]OPEN 18:30 / START 19:00
  • 2017年9月1日(金)香川県 sound space RIZIN'
    OPEN 18:30 / START 19:00
  • 2017年9月2日(土)福岡県 graf
    OPEN 15:30 / START 16:00
  • 2017年9月3日(日)宮崎県 floor R
    OPEN 15:30 / START 16:00開演
ゴールデンボンバー全国ツアー2018
  • 2018年3月17日(土)千葉県 市原市市民会館
  • 2018年3月21日(水・祝)栃木県 宇都宮市文化会館
  • 2018年3月23日(金)青森県 青森市文化会館 リンクステーションホール青森
  • 2018年3月25日(日)福島県 郡山市民文化センター 大ホール
  • 2018年3月31日(土)富山県 オーバード・ホール
  • 2018年4月1日(日)石川県 金沢歌劇座
  • 2018年4月7日(土)静岡県 静岡市民文化会館 大ホール
  • 2018年4月8日(日)三重県 三重県文化会館 大ホール
  • 2018年4月12日(木)熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
  • 2018年4月13日(金)鹿児島県 鹿児島市民文化ホール 第一
  • 2018年4月19日(木)滋賀県 滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 大ホール
  • 2018年4月20日(金)和歌山県 和歌山県民文化会館 大ホール
  • 2018年4月28日(土)鳥取県 米子コンベンションセンター BiG SHiP
  • 2018年4月30日(月・祝)愛媛県 ひめぎんホール メインホール
  • 2018年5月3日(木・祝)新潟県 新潟県民会館 大ホール
  • 2018年5月6日(日)岡山県 倉敷市民会館
  • 2018年5月8日(火)京都府 ロームシアター京都 メインホール
  • 2018年5月11日(金)山梨県 コラニー文化ホール(山梨県立県民文化ホール)
  • 2018年5月18日(金)北海道 旭川市民文化会館
  • 2018年5月20日(日)北海道 帯広市民文化ホール
  • 2018年5月26日(土)沖縄県 沖縄コンベンションセンター
  • 2018年5月27日(日)沖縄県 沖縄コンベンションセンター
  • 2018年6月7日(木)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2018年6月8日(金)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2018年6月12日(火)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2018年6月13日(水)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2018年6月17日(日)北海道 ニトリ文化ホール
  • 2018年6月18日(月)北海道 ニトリ文化ホール
  • 2018年6月23日(土)福岡県 福岡国際センター
  • 2018年6月24日(日)福岡県 福岡国際センター
  • 2018年7月7日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2018年7月8日(日)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2018年7月 大阪府 大阪城ホール(2DAYS)
  • 2018年7月 埼玉県 さいたまスーパーアリーナ(2DAYS)
電波少女(デンパガール)
電波少女
2009年に複数のMCおよびトラックメーカーで結成されたユニット。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在はラップ担当のハシシとDJ&パフォーマンス担当のnicecreamという2人で活動している。2013年7月に1stアルバム「BIOS」を、2015年7月に全曲フィーチャリングゲストを迎えた2ndアルバム「WHO」を発表した。12月にリリースしたiTunes Store限定シングル「COMPLEX REMIX feat. Jinmenusagi, NIHA-C」がiTunes Storeのヒップホップ / ラップのシングルチャートで1位を獲得する。2016年5月に7曲入りCD「パラノイア」をリリースし、11月よりヒッチハイク企画「“電波少女的ヒッチハイクの旅”47都道府県ストリートライブTOUR」を実施。2017年1月にヒッチハイクの旅を完遂し、夏にメジャーデビューを果たすことが決定した。メジャーデビューに先駆け6月より3カ月連続で配信シングルをリリース。9月27日にメジャーデビューアルバム「HEALTH」をアリオラジャパンからリリースする。
ゴールデンボンバー
ゴールデンボンバー
鬼龍院翔(Vo-karu)、喜矢武豊(Gita-)、歌広場淳(Be-su)、樽美酒研二(Doramu)からなるヴィジュアル系エアーバンド。2004年に鬼龍院翔と喜矢武豊を中心に結成される。ライブでは鬼龍院翔以外は楽器を弾かず、踊ったり寸劇を演じたりするなど、さまざまなパフォーマンスを行うのが定番となっている。エアーバンドというコンセプトや、麗しいビジュアルと笑撃的な歌詞のギャップで注目を集め、カラオケの連続首位獲得週数歴代1位を獲得した大ヒット曲「女々しくて」や、シングル・アルバム共にオリコン初登場1位を獲得するなどインディーズ史上初の記録も持つ。「NHK紅白歌合戦」にも4度出場。2014年8月には“音楽だけを売ること”に特化し、特典なし、1形態、真っ白いジャケット、税込み500円というシングル「ローラの傷だらけ」を発表した。2015年6月に約3年半ぶりのアルバム「ノーミュージック・ノーウエポン」をリリース。その後も「水商売をやめてくれないか」「#CDが売れないこんな世の中じゃ」といったシングル発売を重ね、2017年11月には47都道府県それぞれで異なるバージョンが用意されたシングル「やんややんやNight ~踊ろよ※※~」(※※に各都道府県名)を発表する。