音楽ナタリー Power Push - 電波少女

被害妄想が生み出した、キャッチーでコアなヒップホップ

勘ぐり合いがモチベーションに

──全体を通して他者との関係性もテーマになっていて、それがリスナーの共感を集めているところもあると思うんですよね。今の中学生、高校生はすごく気を遣いながらコミュニケーションしてると思うし。

ハシシ

ハシシ 勘ぐり合いってことですよね? 俺も一緒なんですよ。いいこと悪いこと含めてネットとかに俺らのことを書き込む人のうち、中高生の比率がけっこう高いのはわかってるんですけど、そういう人に本気で戦いに行ってます。自分の意志が伝わった上で判断されるのはいいけど、誤解されてたり「そういう伝わり方をしているのか?」って思うこともあるので。そこをちゃんと説明したいっていうのもあるし、「何を言えば、こいつらはムカつくのか?」みたいなことを考えたり……。

──すごいですね。疲弊しちゃいそうな気もしますが。

ハシシ そうですよね。毎日寝る前に「こんなことやってても、絶対にラチがあかない」という結論が出るんですけど、次の日になるとまた燃えてるんですよ。それがモチベーションになっているところもあるし、なくなったらつまらないと思うんですよね。ただ今は悪い意味でファンとの距離が近いので……。昨日も考えてたんですよ。このままじゃファンに潰されかねないなって(笑)。

ラップのない「笑えるように」をリード曲にした理由

──楽曲の制作はハシシさんがすべて手がけていますが、nicecreamさんは今回の楽曲に対してどんな印象を持っていますか?

nicecream

nicecream 身内なのでアレですけど、全部いい曲だなと思いました。あと「笑えるように」がリード曲なのは意外でしたね。これをリードにするんだなって。

ハシシ 「笑えるように」をリード曲にするのは怖い部分もあったんですけどね。まったくラップをしてない曲なので……。

──歌ですよね、これは。

ハシシ うん、歌ですね。けど「これで勝負したい」という気持ちもあったんです。自分のラップは基本的にメロディが多いんですよ。だから軟弱っぽく見られてるんだろうなって被害妄想してるんですけど(笑)、だったらそこを逆に突き詰めてやろうと思って。そしたら全部歌になった。こういうことができるラッパーも限られていると思うし、これから活動していく上で「電波少女はラップじゃない曲もある」って思ってもらえるというのはいいんじゃないかな、と。よく「メロディがあって何が悪いんだ?」って思うんですよ。ラップには打楽器に近いよさがあるけど、すべてがそうじゃなくてもいいし。

──しかも「笑えるように」にはポジティブな意志も込められているし、普段ラップを聴かない層にもリーチしそうですよね。

ハシシ でもこの歌詞で言ってる“笑えるように”って、最終的にはあきらめなんですよ。どうしようもなくて、苦し紛れに出る笑いに近い。自分の中では“あきらめて進もう”という感じなんですよね。全部解決しようとすると、そこで止まっちゃうので。ロックバンドって、“絶望を抱えて進む”みたいな曲が多いじゃないですか。自分がそういう曲が好きだったから、影響を受けている部分もあると思います。

──ロックシーン、J-POPのシーンでも名前を知られたいという気持ちもありますか?

ハシシ それはすごくあります。もっと有名になって「ライブ下手だ」って叩かれたい……いや、嘘です。叩かれたくないです。

nicecream 叩かれたくないね(笑)。

ハシシ 今の悩みが解消されたら、また別の悩みが出てくると思うんですよ。でも、それを曲として表現できる職業ですからね。嫌なことやめんどくさいことはたくさんあるけどそれをエネルギーに変えていけたらなって思います。

電波少女
新作CD「パラノイア」 / 2016年5月11日発売 / redrec / sputniklab inc.
ニューアルバム「パラノイア」
初回限定盤 [CD+DVD] / 2484円 / RCSP-0069~70
通常盤 [CD] / 1944円 / RCSP-0071
CD収録曲
  1. 拝啓
  2. COMPLEX
  3. RY feat. Jinmenusagi
  4. オーバードーズ feat. NIHA-C
  5. Mis(ter)understand
  6. 笑えるように
  7. 追伸
DVD収録内容

電波少女 解散&復活ワンマンライブ“茶番” at Shibuya WWW(2016.02.27)

  1. INTRO
  2. INVADER feat. RAq
  3. LIAR GAME Remix (dance showcase)
  4. MO feat. NIHA-C
  5. Earphone feat. Jinmenusagi
  6. Mis(ter)understand

電波少女「パラノイア」発売記念インストアLIVE

2016年5月12日(木)東京都
HMV&BOOKS TOKYO 7Fイベントスペース
START 19:00
2016年5月15日(日)東京都
タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
START 21:00

電波少女 E.P “パラノイア” Release Party

2016年5月22日(日)東京都 clubasia
<出演者> 電波少女 / MINAMI NiNE / ぼくのりりっくのぼうよみ
電波少女(デンパガール)
電波少女

2009年に複数のMCおよびトラックメーカーで結成されたユニット。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在はラップ担当のハシシとDJ&パフォーマンス担当のnicecreamという2人で活動している。2013年7月に1stアルバム「BIOS」を、2015年7月に全曲フィーチャリングゲストを迎えた2ndアルバム「WHO」を発表した。12月にリリースしたiTunes Store限定シングル「COMPLEX REMIX feat. Jinmenusagi, NIHA-C」がiTunes Storeのヒップホップ / ラップのシングルチャートで1位を獲得し、2016年2月に東京・WWWにて開催したワンマンライブ「電波少女 解散&復活ワンマンライブ“茶番”」はソールドアウト。注目度の高まる中、5月に新作CD「パラノイア」をリリースする。