音楽ナタリー Power Push - 電波少女
被害妄想が生み出した、キャッチーでコアなヒップホップ
「被害妄想だってわかってるから、叩かないで」
──では新作「パラノイア」について聞かせてください。前作の「WHO」は全曲にゲストラッパーが参加した作品でしたが、インタビューでは「次作はできるだけ2人で完結させたい」と言ってましたよね(参照:電波少女「WHO」インタビュー)。
ハシシ はい。今回は実際フィーチャリングをかなり絞りました。さっきのライブの話もそうですけど、電波少女の2人で完結できる曲をもっと増やしたいので。ホントは誰かと一緒にラップしたいんですけど、nicecreamはラップしないので、1人でやるしかないです。
nicecream そこは信頼して任せてます(笑)。
──今作の全体的なテーマはありますか?
ハシシ 全曲、“被害妄想”をリリックのテーマにしています。タイトルも「パラノイア」ですし。歌っている内容はいろいろなんだけど、全部「実は被害妄想でこうなってます」と。
──実際、ハシシさんには被害妄想的な一面があるんですか?
ハシシ そうっすね。悲劇のヒロインというか、「俺、こういう境遇でもがんばってるぞ」って自分を慰めてるっていう。そう思ってないとやっていけない部分もあるし、「被害妄想だってことは自覚してますよ」って予防線を張っているところもあって。
nicecream 「わかってやってますから!」ということだよね。
ハシシ そうそう。「全部被害妄想だって自分でわかってるから、叩かないで」って。イヤですからね、いろいろ言われるのは。結局何しても叩かれますけど。そういうところも含めて、かなり自分の内面的なところが出てると思います。リリック的にも自分っぽさが出せたし、自分が面白がられている部分をちゃんと表現できた気がする。別に飛び抜けて個性的なことをやろうとは思ってないけど、“まっすぐなのに、ちょっとブレてる”みたいなところは意識してたので。
キャッチーでありながらコアなヒップホップを
──率直に自分の気持ちを歌っているのに、どこかヒネくれているっていう。そういうハシシさんのスタンスをnicecreamさんはどう感じてますか?
nicecream 基本的に考え方がワガママだと思うんですよ。今の話で言うと「リスナーから叩かれたくはないけど、叩かれるようなことは言いたい」ということですけど、常にそういう感じなんですよね。楽曲に関しても「キャッチーでポップで聴きやすくしたいけど、ヒップホップらしいところも入れたい」とか。どっちかをあきらめるってことをしないんですよね。それは悪く言えばワガママだし、よく言えば……よく言う言葉が見つからないですけど(笑)。
ハシシ ハハハハハ……。
──「ポップであると同時に、コアなヒップホップとしても成立させる」というのは、今回の「パラノイア」にも強く出てますよね。
ハシシ はい。アルバムを作るたびに「次はポップさを削ろう」って思うんですよ、毎回。もっとコアなことをやろうと思うんだけど、それだと(ヒップホップを)聴かない人がとっつきにくいので。だから今回もギリギリのラインまで攻めました。日々わからなくなってきてる気もするけど、自分の中で「ここが上限」というラインがあって、結果的に悪くない感じになってると思います。と言いながら、最初と最後に入ってる「拝啓」と「追伸」という曲は、バースにメロディを入れてないんですよね。
nicecream そうだよね。
ハシシ そういうことをやるのはひさびさだったから難しさも感じましたが、すごく楽しかったですね。
──「拝啓」「追伸」は確かにエッジの効いたヒップホップですが、やっぱりすごく聴きやすいですよね。それはハシシさんの特徴なんだと思います。
ハシシ 聴きやすいようには意識しました。以前はとにかく言葉を詰め込まないと気が済まなかったし、空白に耐えられなかったんですけど、今はそういうこともなくなってきましたね。リリックの内容に関しては……まあ基本的に性格が悪いので、こういう感じになるんですけど。普段から陰口ばっかり言ってるし。
nicecream そうだね(笑)。
──性格が悪いというか(笑)、確かにエッジは立ってますよね。「拝啓」の「音楽はスポーツじゃなくてアートで 同じフォームで競うな雑魚」、「追伸」の「暇だしエゴサ 叩かれても尚 サーセン 頭下げながらベロ出す」というフレーズもそうだし。
ハシシ 「追伸」はファンサービス以外の何物でもないですけどね。ファン以外の人が聴いてもよくわからないと思うし、オマケです。
次のページ » 勘ぐり合いがモチベーションに
- 新作CD「パラノイア」 / 2016年5月11日発売 / redrec / sputniklab inc.
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 2484円 / RCSP-0069~70
- 通常盤 [CD] / 1944円 / RCSP-0071
CD収録曲
- 拝啓
- COMPLEX
- RY feat. Jinmenusagi
- オーバードーズ feat. NIHA-C
- Mis(ter)understand
- 笑えるように
- 追伸
DVD収録内容
電波少女 解散&復活ワンマンライブ“茶番” at Shibuya WWW(2016.02.27)
- INTRO
- INVADER feat. RAq
- LIAR GAME Remix (dance showcase)
- MO feat. NIHA-C
- Earphone feat. Jinmenusagi
- Mis(ter)understand
電波少女「パラノイア」発売記念インストアLIVE
- 2016年5月12日(木)東京都
HMV&BOOKS TOKYO 7Fイベントスペース - START 19:00
- 2016年5月15日(日)東京都
タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース - START 21:00
電波少女 E.P “パラノイア” Release Party
- 2016年5月22日(日)東京都 clubasia
- <出演者> 電波少女 / MINAMI NiNE / ぼくのりりっくのぼうよみ
電波少女(デンパガール)
2009年に複数のMCおよびトラックメーカーで結成されたユニット。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在はラップ担当のハシシとDJ&パフォーマンス担当のnicecreamという2人で活動している。2013年7月に1stアルバム「BIOS」を、2015年7月に全曲フィーチャリングゲストを迎えた2ndアルバム「WHO」を発表した。12月にリリースしたiTunes Store限定シングル「COMPLEX REMIX feat. Jinmenusagi, NIHA-C」がiTunes Storeのヒップホップ / ラップのシングルチャートで1位を獲得し、2016年2月に東京・WWWにて開催したワンマンライブ「電波少女 解散&復活ワンマンライブ“茶番”」はソールドアウト。注目度の高まる中、5月に新作CD「パラノイア」をリリースする。