ナタリー PowerPush - DEEN
サマーリゾートを彩る 洋楽カバーアルバム
DEEN インタビュー
「Summer Resort Live」から生まれた洋楽カバー集
──6月11日リリースのニューアルバム「君がいる夏 -Everlasting Summer-」は、21年になるDEENのキャリアでも初めての洋楽カバー集ですね。全9曲、どれも夏らしいさわやかなアレンジに仕上がりつつ、どこかノスタルジックな風合いも感じさせて……。80年代に青春を過ごしたリスナーの1人としては、新鮮さと懐かしさを同時に感じました。なぜ今、このような企画盤を出そうと思ったのですか?
池森秀一(Vo) 直接のきっかけはライブなんです。2009年の夏から、僕ら「DEEN Summer Resort Live」という新しいスタイルのツアーを展開してまして。湘南、軽井沢、沖縄などリゾート地を回って、リラックスした雰囲気の中でDEENならではの“夏歌”を楽しんでもらってるんですね。サウンドの面でも、従来のホールライブとは作りが違って。パワフルなロックやポップス系というより、むしろアコースティックな響きを重視した“僕たち3人が考えるサーフロック”というイメージ。で、実際やってみると、これが予想以上にうまくハマりまして(笑)。
──自分たち自身でも、新たな一面に気付けたと。
池森 ええ。DEENにしかできない夏のBGMってものがあるよねと。楽しみながら演奏する中で、新鮮な発見があったんです。それで翌年には、完全サーフロック的なアプローチに寄せた「クロール」というアルバムをリリースして。「Summer Resort Live」のツアーも、少しずつ趣向を変えながら継続してきました。で、このシリーズを楽しみにしてくれているお客さんに次は何を届けようかなと考えたとき、誰もが知ってる洋楽のカバー集というアイデアが自然に浮かんできたんです。夏の匂いがする名曲を選りすぐって演奏すれば、ライブも盛り上がるし。それをCDの形で届ければ、より多くの人に喜んでもらえるんじゃないかなと。
──オーディエンスにとっては最高のサマーギフトですね。この夏にも軽井沢、神戸、横浜で「Summer Resort Live」ツアーが予定されてますが、やはりホールライブとは違った面白さがありますか?
山根公路(Key) すごくありますね。お客さんとの距離感が近くて、1人ひとりの温度感もリアルに伝わってくるし。ステージと客席が一緒になって1つのライブを作り上げていく親密さは、大規模なホールライブにはなかった感覚なので。
田川伸治(G) 活動が20年を超えて、最近ではDEENというバンドがいろんな顔を持てるようになったというか。いい意味で手札が増えた気がするんですよ。それこそ武道館クラスのホールでライブを行う一方で、ここ数年は「Billboard Live TOKYO」みたいな大人向けのクラブで「DEEN AOR NIGHT」というイベントをやらせてもらってますし。アコースティック主体の「Summer Resort Live」も、回数を重ねるほど奥深さが見えてきた。今回の洋楽カバーアルバムには、いわばその3つ目の表情をパックできたんじゃないかなと。
イメージは女の子を口説くために作ったドライブ用のカセット
──しっとりした情感漂う名曲「アメリカン・モーニング」に始まり、ポップなサマーソングの代表格ともいうべき「California Girls」、陽気なロックナンバー「The Loco-Motion」など選曲も絶妙でした。収録曲はどのように選んだのでしょう?
池森 これはとってもシンプル。まずメンバーとスタッフが思い入れの強い洋楽ヒットのリストを持ち寄って。そこから夏のリゾートだったりドライブにぴったりの楽曲を、相談しながら選んでいきました。みんなでカフェに集まって、「ああでもない、こうでもない」と数時間話し合ってね(笑)。
田川 あれは楽しかった(笑)。ちなみに「Summer Resort Live」のバンド編成って、基本はアコギとストリングス、後はメンバー3人のコーラスワークが重要で。ホールライブや「AOR NIGHT」と違って、ベースやドラムなどのリズム隊はわりと控え目なんですよ。要は、歌と楽器の響きを、なるべくリアルに届けたい。なので楽曲を選ぶ際にも、そういうアコースティック編成で映えることが大きな条件でした。あと個人的には、池森が歌ったらどんな化学反応が起こるかなっていう好奇心も、大きなポイントでしたね。
池森 今回、アメリカ西海岸系のお洒落なAORはあえて省いたので、その分、サザンロックやシンガーソングライター系の楽曲がメインになってるのも特徴かな。さわやかな夏っぽさの中に、ちょっとアーシーでヒューマンな温かみの宿った……つまり、都会のナイトライフより輝く太陽が似合う曲たち(笑)。そこは自分でも気に入っています。
──ある種の80年代テイストというか、3人共通の世代感みたいなものも伝わってきますね。
山根 ですね。その意味では、実はオーソドックスな選曲というか。僕らが多感だった10代の頃、テレビやラジオでしょっちゅう耳にしていた名曲ばかりです。
田川 そうそう。ヒットチャートに入ってた曲もあれば、洋画の主題歌もあるし、CMでいつの間にか耳に馴染んでいたメロディもあって。当時はちょうどMTV文化が入ってきた頃だったから、PVのイメージも鮮烈なんだよね。デイヴィッド・リー・ロスがカバーした「California Girls」なんて、セクシーな金髪のお姉ちゃんがたくさん出てきて(笑)。これがオトナの世界かって、感心した記憶がある。
山根 時代の空気も大きいんでしょうが、80年代の洋楽ヒットって、独特のキラキラした感があるんですよ。そういうエバーグリーンな曲をまとめてカバーできるチャンスなんてそうはないし。実際、カバーする過程で学んだこともたくさんありました。ミュージシャンとして得がたい経験になりました。
──そういうキラキラ感みたいなものは、今回のアルバムからもすごく伝わってきた気がします。
池森 だとしたらうれしいですね。確かにリーダー(山根)の言う通り、かつて僕らの同世代が洋楽に対して抱いてた憧れの感情を、今のDEENの音楽としてきちんと再現したい──。その気持ちは、今回のアルバム制作を通じてすごく大事なテーマでしたから。例えば80年代の男の子って、夏になると女の子を口説くために、とっておきの洋楽ナンバーを集めてドライブ用のカセットを作ったりしたじゃない(笑)。出したかったのは、あの感じ。
田川 恋人たちのBGMですよね。まあ具体的なエピソードについては、地方出身の池森と僕より東京で生まれたリーダーのほうがずっと豊富だと思うけど(笑)。
山根 え、なに!? そんなことないよ(笑)。
池森 ははは(笑)。でも、ちょっと胸がザワッとするような感覚を出したいという思いは、3人共通だったよね。ボーカルにも曲のアレンジにも、それはストレートに表れてると思うし。そもそも「君がいる夏」という現在形のアルバムタイトルも、男女がビーチでくつろいでるジャケット写真も、すべてそこにつながっているので。
- 洋楽カバーアルバム「君がいる夏 -Everlasting Summer-」 / 2014年6月11日発売 / EPICレコードジャパン
- 初回限定盤 [CD+DVD] 4968円 / ESCL-4215~16
- 通常盤 [CD] 3146円 / ESCL-4217
CD収録曲
- Just When I Needed You Most
- So Much In Love featuring Kasarinchu
- California Girls
- How Deep Is Your Love
- Reality
- The Loco-Motion
- Don't Worry, Be Happy
- Lucky
- Hitomi Sorasanaide -English Version-
初回限定盤DVD収録内容
- DEEN LIVE JOY-Break18~CIRCLE 20→21~ Final 2014/3/9 中野サンプラザ
DEEN Summer Resort Live ~4th wave~
- 2014年7月5日(土)
- 長野県 軽井沢大賀ホール
- 2014年7月6日(日)
- 長野県 軽井沢大賀ホール
- 2014年7月18日(金)
- 兵庫県 神戸新聞 松方ホール
- 2014年7月19日(土)
- 兵庫県 神戸新聞 松方ホール
- 2014年7月31日(木)
- 神奈川県 大さん橋ホール
- 2014年8月1日(金)
- 神奈川県 大さん橋ホール
DEEN LIVE JOY Special 日本武道館 2014
- 2014年10月12日(日)
- 東京都 日本武道館
DEEN(ディーン)
メンバーは池森秀一(Vo)、山根公路(Key)、田川伸治(G)の3人。1993年上杉昇(ex.WANDS)作詞、織田哲郎作曲による「このまま君だけを奪い去りたい」でメジャーデビューを果たす。同曲はCMタイアップもあり、新人にもかかわらずミリオンヒットを記録。翌年1994年にも「瞳そらさないで」がミリオンを達成し、1stアルバム「DEEN」は150万枚を超える売り上げを記録。2013年3月にデビュー20周年記念ベストアルバム「DEENAGE MEMORY」を発表し、10月には日本武道館2DAYS公演を成功させた。2014年6月11日、初の洋楽カバーアルバム「君がいる夏 -Everlasting Summer-」をリリース。7月から8月にかけて3都市を巡るリゾートライブ、10月12日には日本武道館公演を開催する。