ナタリー PowerPush - Cornelius

モジュール設計で構築した音楽「デザインあ」サウンドトラック

どこにも着地せず展開し続ける楽曲

──子供感があるといえば、「あな」も好きです。短いですが“骨組みジェームス・ブラウン”みたいですごくかわいい。

うん。

Cornelius

──「ない世界」もいいですね。ミヒャエル・マイヤーに聴かせてKOMPAKTから12インチが出ていてもいい感じのクリーンミニマルというか。

……うん。

──反応薄くないですか?

ごめん、単にどの曲か覚えてなくて……。

──(笑)。やっぱりこれだけあると。

歌ものは覚えてるんだけど、さすがに短いのは覚えてない。(「ない世界」を聴いて)あ、これか。この曲は永遠にコードが展開していって、どこにも着地しないままどんどん展開していくってコンセプトで作った曲だね。ずっと巡ってるばかりで、どこに向かっているのかわからなくなるでしょ?

──目的地が“ない”と。

そう。この曲はタイトルがいいよね。ゆらゆら帝国みたいで。ゆらゆら帝国といえば坂本(慎太郎)くんは「デッサンあ」のコーナーに出てたね。確か車椅子を描いてた。

──その「デッサンあ」はボサノバ的なコード進行とフラメンコギターのつんのめるアルペジオが面白い曲で。

後半に向けてだんだんと音が積み重なっていく手法は、同時期にやっていたフィリップ・グラスのリミックス(「Opening From Glassworks」 / 「Rework : Philip Glass Remixed」に収録)に近いんだよね。あっちはピアノ、こっちはギター。どちらも自分なりの手クセが出た曲だと思う。

聴覚と視覚でどれだけ表現できるのか

──特に苦労した曲というのはありますか?

やっぱり歌ものかな。「まるとしかく」とか「カラーマジック」は最初に歌詞があったので、それをどう音に置き換えていくのかという作業になったし。既にある言葉と向き合いながら音楽を作るという経験は今まであまりなかったから、少し時間がかかったかもしれない。例えば「まる」は「まあーる」って曲線っぽい発語にしたり、「しかく」とか「区切る」は「し、か、くっ」「く、ぎ、るっ」みたいにスタッカートさせることで、その柔らかさであったり硬さを感じてもらえるようにして。「カラーマジック」にしても、赤と青が重なったら紫になる、みたいな歌詞と映像だから、重なる、イコール、多重コーラスで、それならSalyuに歌ってもらおう、みたいな発想から始まっていて。

──「カラーマジック」に使われているハープの音は、まさに玉虫色で、そこで全ての色が混ざっているようにも聞こえますね。

そうそう。そうやって、ずっと聴覚と視覚の関係性を考えながら、じっくり作業を進めてて。言葉で説明しちゃうんじゃなく、聴覚と視覚でどれだけ表現できるのか。それが「デザインあ」のコンセプトだと思うし。

──そんな中、「おととおんがく」は、もっともCornelius的というか、シングル的な位置づけの曲で。「Fit Song」の続編としても楽しめる曲ですよね。

Cornelius

これは「音楽と歌詞と映像を全てシンクロさせてほしい」というテーマを僕なりに消化した曲で、歌詞も僕が書いてる。「みじかい」という言葉には本当に短い音が鳴って、「かさなる」なら音が重なってっていうふうに、音が出る順番や構造が、どの角度から見てもぴったりリンクするようにしなくちゃいけなかったから、どうしてもメロディと歌詞を一緒に作っていくしかなかったんだよね。

──「うるさい」にはブラストビートをあてて。

NAPALM DEATHばりのね(笑)。

──でも、子供ってこのぐらいやっても全然びっくりしてくれなかったりしますよね。

そうなんだよ(笑)。あっさり流されたりする。絶対に大人が考えるようにはいかないし、そこが面白いところでもあるんだけど。

──ブラストビートが明けた瞬間の、犬の遠吠えも素晴らしい。今度は一気に静けさが襲ってきます。

犬の遠吠えは好きな音で、「Point」の「Brazil」の最後にも使ってる。野良犬がいた頃の昭和というか、町から人がいなくなった夕暮れ……「(天才)バカボン」の風景というかね。

結果、それが美しいものになる

──そこに限らず、Corneliusの音楽には、いろんな感情を、小さな音に置き換える / アイコン化するという作業が頻繁に登場しますよね。

自分が得意とする部分なんだろうね。もちろん「デザインあ」にもそういうフックは入ってると思うし。

──そうですね。今回のアルバムも、そういうキラッとした閃きの集合体、という感じはすごくします。

実際にやってることだったり、録音の環境だったりは自分のアルバムと変わらないし、僕の音楽のクセを理解した上で頼んでくれているというのはあると思うから、そこはのびのび作業できたと思う。ただ、やっぱり一番の違いは、「番組」というハッキリとした目的があることで、番組全体のトーンを決めるために、あえて使う音色を絞ったりもしてるのね。ドラムはすべてCR-78っていうRolandの古いリズムボックスを使うとか、できる限り「あ」という音声を散りばめていくとか。そういう絞り込みの作業で、全体のテイストを決めていく。だから、あらかじめやることを自分自身で決めてかかっている部分も多くて……。

──ファクトリー的な厳密さと、職人ならではの遊びのバランス。それがこの機能美につながっている。

それは音楽に限らず、優れたデザインにも言えることだよね。機能を絞ったり、無駄な部分を削っていくと、結果、それが美しいものになる。今回は自分の音楽もそういうふうに作りたいというのはあったし、その上で、キラッとしたものを感じてもらえるのだとしたら、このアルバムは成功なのかな。

Cornelius
サウンドトラックアルバム「デザインあ」 / 2013年1月23日発売 / 2000円 / Warner Music Japan / WPCL-11286
CD収録曲
  1. デザインあのテーマ(うた:ショコラ)
  2. デザインの観察
  3. デザインかぞえうた
  4. ロングクラッチA
  5. 解散!
  6. デッサンあ
  7. まるとしかく(うた:嶺川貴子)
  8. かたちの式
  9. はせる
  10. Sound of Composition
  11. ない世界
  12. やじるしソング(うた:やくしまるえつこ)
  13. からだのカタチ
  14. 1DAY
  15. デザインの人
  16. ロングクラッチB
  17. おととおんがく(うた:大野由美子)
  18. あな
  19. 解散!(リバース)
  20. モノ目線
  21. ぶぶん
  22. 思ってたんとちがう
  23. カラーマジック(うた:salyu×salyu)
  24. ロングクラッチC
  25. エンディングテーマ

企画展「デザインあ展」

会期
2013年2月8日(金)~2013年6月2日(日)
休館日
火曜日(4月30日は開館)
開館時間
11:00~20:00(入場は19:30まで)
入場料
一般1000円、大学生800円、中高生500円、小学生以下無料
会場
21_21 DESIGN SIGHT(東京ミッドタウン・ガーデン内)
展覧会ディレクター
佐藤卓、中村勇吾、小山田圭吾
Cornelius(こーねりあす)

小山田圭吾によるソロユニット。1991年のFlipper's Guitar解散後、1993年からCornelius名義で音楽活動を開始する。アルバム「THE FIRST QUESTION AWARD」「69/96」は大ヒットを記録し、当時の渋谷系ムーブメントをリードする存在に。1997年の3rdアルバム「FANTASMA」、続く4thアルバム「POINT」は世界21カ国でリリースされ、バンド「The Cornelius Group」を率いてワールドツアーを行うなどグローバルな活動を展開。2006年のアルバム「SENSUOUS」発売に伴う映像作品集「Sensurround + B-sides」は米国「第51回グラミー賞」最優秀サラウンド・サウンド・アルバム賞にノミネートされた。現在、自身の活動以外にも国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広いフィールドで活動を続けている。