ナタリー PowerPush - Cornelius

次作につながるマストアイテム 最新リミックス集「CM4」/span>

「SENSUOUS」以降の音楽性の変遷が出ている

──ここ最近のCorneliusの音楽はクールというか、熱いものも冷却してしまうようなところがありますよね。それはスタジオも含めた環境の影響も大きい?

うん、そうですよね。今作の音源は一番古いアート・リンゼイ(2005年録音)以外は全て「SENSUOUS」以降の録音だけど、「SENSUOUS」以降の音楽性の変遷みたいなものは出てると思う。

──「SENSUOUS」以降はYMOなど、他アーティストへの客演も増えましたね。

うん、それも自分の音楽性の変化に関係していると思う。「CM3」とか聴くと、どこまで音をそぎ落とせるか、シンプルで無駄のない方向っていうのにとらわれてて。「POINT」からそういうのは始まってて、それを極限まで押し進めたかったんだろうね。だから「CM3」は簡素であっさりした印象があったけど、その後はもう少し幅が出てきたというか、わりとどんな音楽でもうまく入っていける感じというか自由な感じがある。昔と比べるとそういう傾向はあると思いますね。そういうのは客演が多くなった影響かもしれない。

──音を削ぎ落とす方向が「SENSUOUS」「CM3」で極限までいって、その後、その揺り戻しがきて、もう少しナチュラルな方向に。

うんうん、そういう感じはあると思う。でもそうは言っても、それ以前に戻ったというわけでなくて。「CM2」の華やかな感じともまた少し違うよね。

──そうですね。今作を聴いて、より自然に楽曲に寄り添っている印象を持ちました。原曲に音を過剰に付け加えるでもなく、必要以上に削ぎ落とすでもなく、自然に原曲の良さを引き出してCornelius流にアレンジしている。

そうだね。そういうところはあるかな。

Cornelius

──MGMTのやつとか、それがすごくよく出てますね。正直、原曲よりもずっと良いと思いました。

これはね、ちょうどsalyu × salyuと同時進行でやってたんですよ。salyu × salyuで「ただのともだち」って曲があるんだけど、そのコード進行を流用して。ピアノでループを作っていくみたいなやり方も同じ。だからすごく似ていると思いますよ。音は違うけど、アイデアは近い。

──salyu × salyuはすごくポップなんだけどアバンギャルドなところもある、実に微妙なセンを突いてきた音でしたけど、MGMTのもそういう傾向ですよね。

うん、そうだね。だってそういうバンドだからね。オリジナルを聴いて、自分だったらこうするのに、と思うことを実際にやってみる。僕がやるリミックスって、基本的に全てそうだから。

3人の声が乗れば絶対BEASTIE BOYSになる

──BEASTIE BOYSも、ビースティらしさとCorneliusらしさがうまく融合しています。

ちょうど「SENSUOUS」のツアーのときにフランスでビースティの前座やったことがあって。そのちょっとあとに頼まれたのね。ライブをすごく褒めてくれたので、多分その流れで頼んでくれたんだと思う。去年「Hot Sauce Committee」って彼らのアルバムが出たけど、あれはそもそも2009年に出す予定が延期になったもので、多分その2009年のタイミングでリミックスも出す予定で、だいぶ前に音は出来上がってたんですよ。でもMCAの病気で発売が遅れて。その頃はMCAの病状がそこまで深刻とは思わなかったんだけどね。

──こういう個性の強い人たちのリミックスって難しくないですか。

いや、そんなこともないよ。あの3人の声が乗れば絶対BEASTIE BOYSになるから。逆に何やってもOKっていう(笑)。

──アート・リンゼイはリミックスではなく、顔を合わせてセッションしたものですね。

そうそう。IF BY YESもスタジオでのセッションだし。ヨーコ(YOKO ONO)さんはニューヨークのスタジオで一緒に作ったの。

──アートは中目黒のスタジオに来たってことですか?

うん、ギター持ってふらっと来て。曲があるからってブースで歌い出して。それでワイワイやりながら作ったの。

──アートのボーカルスタイルってちょっとあなたに似てるよね。

あ、そう?

──ちょっと鼻歌っぽい感じが。

ああ、そうだね。頼りない感じが。えへへへ(笑)。

ニューアルバム「CM4」 / 2012年9月5日発売 / 2520円 / Warner Music Japan / WPCL-11113

CD収録曲(アーティスト / 曲名)
  1. 布袋寅泰 / Battle Without Honor Or Humanity
  2. YOKO ONO PLASTIC ONO BAND / The Sun Is Down!
  3. MGMT / Brian Eno
  4. 相対性理論 / QKMAC
  5. LALI PUNA / Hostile To Me
  6. BEASTIE BOYS / Make Some Noise
  7. マイア・ヒラサワ / It Doesn't Stop
  8. アート・リンゼイ / The Rare
  9. IF BY YES / Still Breathing
  10. 野宮真貴 / マジック・カーペット・ライド
  11. 三波春夫 / 赤とんぼ
Cornelius(こーねりあす)

小山田圭吾によるソロユニット。1991年のFlipper's Guitar解散後、1993年からCornelius名義で音楽活動を開始する。アルバム「THE FIRST QUESTION AWARD」「69/96」は大ヒットを記録し、当時の渋谷系ムーブメントをリードする存在に。1997年の3rdアルバム「FANTASMA」、続く4thアルバム「POINT」は世界21カ国でリリースされ、バンド「The Cornelius Group」を率いてワールドツアーを行うなどグローバルな活動を展開。2006年のアルバム「SENSUOUS」発売に伴う映像作品集「Sensurround + B-sides」は米国「第51回グラミー賞」最優秀サラウンド・サウンド・アルバム賞にノミネートされた。現在、自身の活動以外にも国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広いフィールドで活動を続けている。