早く新曲が聴きたい
──ちょっと細かい話になりますが、コドモメンタルというレーベルの特徴として、とにかくたくさん音源が出る点が挙げられます。
今村 みんなによく言われるんですけど、そうなんですかね。でも当たり前じゃない?って思うんです。だってアーティストの仕事は音源を出すことじゃないですか。
──確かにその通りだと思います。
今村 単純に僕は好きなアーティストの音源を早く聴きたいんです。僕はおそらく世の中の誰よりもコドモメンタルのアーティストが好きだから、少しでも早く新曲を作りたくて仕方ない。ファンの人だって新曲がたくさん聴けてうれしいと思ってくれるわけだし、ウチの場合はアーティストも早く新曲を歌いたがっている。だったら、早く音源を作るのは当たり前じゃないかなと思います。
如月 リリースのペースが速いということもあって、私たちが考えていることをタイムリーで曲にしてくれる感覚があるんです。曲を書いてくれる和樹さんやsyvaさんとも一緒にツアーを回るので、私たちの心の変化を受け取ってすぐに曲にしてくれて、それをすぐにみんなのところに届けられてると思います。
今村 時間をかけてアーティストや聴き手の人生に残る1曲を作る努力も必要だとは思うし、それは常に心がけてるんですけど、サブスクのような音楽配信の形が当たり前のようになりつつある今の時代では、曲を作るスピード感もそれなりに速くなくてはいけないと思うんです。新作を作るのに時間がかかる理由とか、こだわればいくらでも時間がかかってしまう状況もわかるんですけど、僕は早く新曲が聴きたいから作るよってことだけですね。
──リリースが多いことに関連して、リリースイベントやツアーで全国を回るペースも速いですよね。
今村 CDというか音源を作ったら全国を回って音を届けたくなる性分なんですよ。僕は地方出身だからアーティストが街に来てくれたことがすごくうれしくて。そうやって育ってきたから、今度は僕らがそれをやる番だという意識はあるのかもしれないです。まあ確かに交通費とかの経費を計算すると、かかるお金はけっこうバカにならないですね(笑)。
──ただ採算は取れているわけですよね?
今村 あ、それはちょっと違うかもしれないです。おそらく僕以外の人間が経営者だったら絶対こんなにインストアとかツアーで全国を回ってないと思います(笑)。言われますもんけっこういろんな人に(笑)。もちろんCDは売れてほしいんですけどCDを売ることだけを目的として全国を回ってるわけではなくて。要はグループのブランディングだと思います。僕らはグループを大きくしたいし、大きい会場でもライブをさせてあげたい。採算が取れる方法だけを選んでいては叶わないことがあるし、単純に僕らは全国を回りたいと思っているから可能な限りいろんなところでライブをやっているんです。
如月 ライブをする側の人間としては、これだけの機会をいただいてメチャクチャありがたいんですよね。ぜん君。には東京都出身のメンバーが1人もいないんですよ。地方に暮らしていたからこそわかるんですけど、映像や配信じゃなくて実際にアーティストが地方でライブをする機会があるっていうことがメチャクチャありがたいんです。
今村 もちろんライブの本数が多くてしんどいときもあるし、経費はバカ高いんですけど、例えば地方に行ったインストアライブで泣きながらライブを観てくれてる人を見かけると「あ、やっぱ来てよかったな」って思うし、「またここに来よう」と思っちゃうんですよね。そういうのが原動力になってるから、多少無理なことでもやれるならやっちゃう。
個性が強い者同士が認め合うコドモメンタル
──コドモメンタルの2018年の動きを振り返ると、MOP of HEADやété、The Taupeといったバンドの所属が増えた1年でもありました。なぜバンドの所属が増えたんでしょうか?
今村 これは単純にタイミングが合っただけですね。今までバンドをやるのを避けてきたわけでもないし、「今年からバンドを始めよう」みたいな思いがあるわけでもなくて、3組とも偶然一緒に仕事できるタイミングが合っただけ。もともとバンドが所属していなかったわけでもないし、レーベルとしての規模拡大みたいな意味合いも考えてなくて。
──ぜん君。やつれづれといったグループは、今村さんをはじめとした作り手側の表現したい音楽性があって成立しているグループだと思うんです。ただバンドは自分たちで曲が作れるわけで、作り手側の意識が入りにくいアーティストですよね。例えば、今村さんがコドモメンタルとして発信したい表現とのギャップが生まれる、みたいなことはないんでしょうか?
今村 まず前提としてグループだろうが、バンドだろうが、僕が好きなアーティストしかコドモメンタルには所属していません。だから彼女たち、彼らがどんな音楽をやろうと全然平気で、そこに僕らの意図が入ってるかどうかは二の次なんですよね。例えばバンドのメンバーがデモをあげてきたとき、僕がダメ出しすることってほとんどないんですよ。大好きなバンドの新曲なわけだから「すごくいいね!」と思うのが当たり前で。もちろん客観的に見て、打ち出し方とかアピール方法とか、アドバイスしたほうがいいところは口を出しますけど。基本的にはバンドのやりたい方針に任せていますね。愛海はバンドが増えてどう感じてる?
如月 バンドとアイドルで活動しているフィールドは違うけど、バンドの方々が私たちのライブを観て感動してくれたり、認めてくれたりするのがすごくうれしいんです。逆もまた然りです。ぜん君。の一員として相当濃い時間を過ごしてきた自覚はありますが、客観的に見れば私たちって結成してからまだ3年ちょっとしか経っていないグループなんです。そんな私たちをちゃんと認めてくれる懐の深さがある方々がレーベルメイトとして入ってくださって心強い反面、いい意味でのライバル関係というか、「私たちも負けてられないな」っていう思いが強くなりました。
今村 コドモメンタルに所属している人間って、みんなホントに癖が強いヤツらばっかりなんで、グループやバンド同士がどういう関係になるか、僕はちょっと心配してたんですけど、個性が強い連中同士がちゃんとお互いを認め合ってるんですよね。それが僕は個人的にすごくうれしくて笑っちゃった。あとコドモメンタルにおいて、愛海の人柄はすごく重要なんです。
如月 え、私?
今村 うん。愛海がいろんなところに話しかけにいって輪を作る、それでグループ同士が打ち解けるって流れがあるんです。愛海がいなかったらこんな大所帯にはなれなかったと思う(笑)。僕は自分勝手に色々やっちゃうから、それをちゃんと整えてくれる存在なのですごく助かってます。バンドのメンバーや、あのミルクでさえ「愛海に言われたからやらなきゃ」みたいに言うんですよ。実は愛海って最初は武士キャラだったの、覚えてます?
──結成直後の時期ですよね。覚えてます。
今村 「ござる」口調とかをやってたんだけど、それってミルクに対しての口の利き方がメチャクチャ丁寧だったことに由来しているんですよ。
如月 そうでしたね(笑)。
今村 今となっては武士キャラはどこかにいっちゃいましたけど、人間の芯の部分で愛海は全然変わってないんです。礼儀を重んじるし、筋が通ってて間違ったことは言わない。それは一緒に過ごしてれば伝わるし、アーティスト同士ならライブを観てわかることがあるみたいで。折れずにあきらめないで3年間濃い時間を過ごしてきたことで、彼女たちが勝ち取れているものは確かにあると思うんです。
早くZeppのステージに立ちたい
──1月20日には東京・Zepp Tokyoでぜんぶ君のせいだ。のワンマンライブがあります。グループ史上最大規模の会場でのワンマンになりますが、如月さんはこのワンマンライブをどういうものだと捉えていますか?
如月 通過点。通過点でしかないですね。もちろんあとから振り返って「あの日のライブはすごかった」と言われるような、みんなの心に残るようなライブをしなければならないんですけど、これまで私たちがLIQUIDROOMでのライブや、TSUTAYA O-EASTでのライブで最大規模に挑戦してきたのといい意味で同じだと感じています。ただ今までよりもドキドキしてますね(笑)。早くZeppのステージに立ちたくてドキドキしてます。
今村 僕は、結成から4年経たずにZeppに立つのはすごく早いと思ってるんです。こんなに早く大きな箱でライブできるバンドなんてそうそういないじゃないですか。とてつもない短期間でぜん君。は駆け上がっていったなと思ってます。
如月 この間、Zepp Tokyoの会場の下見に行ったんですよ。
──どうでしたか?
如月 確かに広かったんですけど、「これくらいのものなんだ」と思った自分がいました(笑)。ステージに立って「うわ、会場広いな」と思うことはこれまで何度もあって、そういう経験を重ねるうちに「あのときとこれくらいしか変わらないかな」って冷静に考えることができるようになったというか。それに私たちの目標はもっともっと先だから「こんなもんじゃないぞ」と思っちゃうんですよね。Zepp Tokyoでのライブを自分たちのベストな状態で届けて、早く次にいかなきゃいけない。
今村 すごい向上心ですよね、ホントに。愛海がビビってるところを見たことがないんですよ。僕もないか、基本関係ないってよく言うし(笑)。うん、愛海のことはとても尊敬してます。
──ぜん君。のZepp Tokyoでのワンマンから始まるレーベルの2019年はどうなりそうですか?
今村 死ぬほどカオスな1年になると思います(笑)。毎年夏に次の1年の活動のアウトラインを引くんです。で、2019年の僕らはリリース頻度が変わらないのにグループ数が増えちゃったから、もうてんやわんやで。音源出してツアーを回るのに加えて、新しいこともまだまだやりたいからオーディションもやる。すでに来年のスケジュールまで決まりかかっているので、もうずっとカオスな感じだと思います。まあコドモメンタルが発足してから、本質的にやってることは変わってないんですけどね。
如月 ホント、ぜん君。として活動し始めてから時間が経つのがメチャクチャ早いんですよ。3年以上経ってるなんて全然思えなくて。
今村 本当にあっという間だった。それと、ここ数年でいろんなアーティストを抱えるようになったし、ライブの規模も大きくなっているけど「まだまだ負けてるな」って思うことは多いんです。今回はナタリーさんに提案してもらってこういう特集を組んでもらってますけど、「メジャーだから」とか「インディーズだから」って線引きがいまだにされていて僕らではできないこともあるし、これまでの歩みを振り返って全然勝てなかった記憶のほうが多いくらいなんです。ただコドモメンタルを作ってここまでやってきて、僕は自分たちのやり方が大正解ではないけど間違ってはなかったとは思ってて。そもそもこういう時代ですから音楽業界でも「こうじゃなきゃいけない」「こうすべき」みたいな固定観念がなくなりつつあるし、本当はなくならなきゃいけない。そういう意味ではアイドルの流行が終わって過渡期に僕らみたいなのが出てきたのは必然とも言えますし、僕らとしてはむしろタイミングがよかったのかもしれませんね。まだまだやりたい物ややりたいこと、表現してみたいアーティストのアイデアは尽きないです。
ライブ情報
- ぜんぶ君のせいだ。ワンマンライブ「Zepp Tokyo」
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2019年1月20日(日) 東京都 Zepp Tokyo
※特集公開時、本文に誤りがございました。お詫びして訂正します。
- ぜんぶ君のせいだ。
「Natural Born Independent / ロマンスセクト」 - 2019年2月6日発売 / コドモメンタルINC.
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[CD] 1080円
CMI-0050
- 収録曲
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- Natural Born Independent
- ロマンスセクト
- Natural Born Independent(Instrumental)
- ロマンスセクト(Instrumental)
- ぜんぶ君のせいだ。(ゼンブキミノセイダ)
- 如月愛海(きさらぎめぐみ)、ましろ、一十三四(ひとみよつ)、咎憐无(とがれん)の4人からなる「病みかわいい」をコンセプトにしたアイドルユニット。2015年7月に1stシングル「ねおじぇらす✡めろかおす」を発表し、同年10月に愛知・CLUB Zionにて単独公演を開催。初ライブにしてソールドアウトを記録した。2016年には1月に1stアルバム「やみかわIMRAD」を、11月に2ndアルバム「アニマあにむすPRDX」をリリースした。12月に東京・LIQUIDROOMで行われたワンマンライブ「ぜんぶ僕のせいだ。」で新メンバーの咎憐无が加入。2017年1月には新たに未来千代めねがグループに加わり、同年2月には新体制初のシングル「Sophomore Sick Sacrifice」を発表した。9月に行われた全国ツアー「みんなごとTOUR 2017~2018」の初日公演をもって、のどの不調のため活動を休止していた未来千代めねが脱退。2018年5月には東京・TSUTAYA O-EASTにてワンマンライブ「ロマン無頼IZM」を開催した。また7月には4thアルバム「NEORDER NATION」をリリース。7月から8月にかけては平日限定のフリーライブツアー「MOB MORATORIUM TOUR」を、9月には東名阪ツアー「おぼろばんからからーTOUR」を実施した。2019年1月には東京・Zepp Tokyoにてグループ史上最大規模の会場でのワンマンライブを開催する。また同年2月にニューシングル「Natural Born Independent / ロマンスセクト」をリリースする。
2020年6月15日更新