コアラモード.「はるつげどり」インタビュー|今あなたに届けたい、とっておきの春の歌 (2/2)

切なくも前向きになれる、春への思い

──春をテーマにした歌詞では、旅立ちのときを迎える2人の物語が紡がれています。

小幡 この曲は、ウグイスのことを表す“はるつげどり”という言葉に着想を得て書き進めていきました。思い合っている2人の門出を歌った曲ですね。コアラモード.にはなぜか春の曲が多いんですけど、春というのは出会いと別れがあり、人と人とのドラマが凝縮された季節だからだと思うんですよ。そこに僕たちの琴線に触れる思いが詰まっているから。

あんにゅ 最初の歌詞には金木犀という言葉が出てきたりしていて、秋の曲だったんですよ。でもそれがいつの間にか自然と春の曲に変わっていきましたね。私は寒い時期を乗り越えた先にやってくる春という季節に対して、どこか切なさを感じたりもするんです。そこに惹かれるのかもしれないですね。

──出会いと別れが共存する季節特有の切なさなのかもしれないですね。

小幡 そうそう。2月末くらいからふっと春の香りがしてくると、過去のさまざまな出会いと別れの記憶が呼び起こされて間違いなく切なくなりますからね。ただ、同時に気持ちを新たにできるポジティブな季節であるとも思うので、そういう部分もしっかり感じてもらえる曲にしたいなとは思っていました。切なくも前向きになれる、そんな僕の春への思いを曲には込めました。

コアラモード.

コアラモード.

──シチュエーションを限定しない描き方がされているので、聴き手は自らの経験を投影しながら曲の世界に浸ることができますよね。

小幡 この曲はメロディが呼び起こす言葉をはめていくことを意識したので、あまり説明的な言葉を使うのは美しくないかなという思いがあって。抽象的な言葉をぽつぽつと並べながら、でもどこか景色が浮かんでくるような、そんなバランスの歌詞を目指しました。

──ラストに出てくる「春はもうすぐそこまで」というフレーズは、コロナ禍の情勢を踏まえるとグッとくるポイントでもあります。

あんにゅ ホントにそうですね、うん。

小幡 ここ2年ほどの世の中はずっと長い冬のような感じですからね。僕らは曲を作る際、聴いてくれた皆さんの心の中にひと筋の光が差し込んでくれたらいいなという思いを常に持っているんです。だからこそこの曲でもちゃんと希望を感じてもらうために、最後にその1行を入れたんだと思います。

──サウンドに関しては、デモからどんなブラッシュアップを試みましたか?

小幡 もともとはドラム、ベース、ギター、ピアノのシンプルな4リズム主体の、いわゆる普遍的なポップスとしてのアレンジで固まってはいたんですよ。ただ、今回リリースするにあたっては、これまでの自分たちになかった新しさを感じてもらえるテイストを盛り込みたい気持ちが強くて。そこで、僕らの大切な曲に新しい風を吹き込ませてもらうために、森俊之さんにストリングスのアレンジをお願いすることにしたんです。

あんにゅ 私が角松敏生さんの楽曲やライブに参加させていただいていたご縁で、角松さんのバンドメンバーでもある森俊之さんと仲よくしていただいていて。以前からいつか楽曲でご一緒させてくださいとお話をしていたんですけど、それが今回ついに実現した形ですね。元のバージョンには弦が入っていなかったんですけど、森さんにお願いすれば間違いなくよりいい仕上がりになるって思えました。

小幡 僕自身、森俊之さんが出演されるライブを観に行ったり、純粋に大ファンだったので、参加していただけることになったのが本当にうれしくて。弦が新たに加わることをイメージして全体的なアレンジを構築し直したところはあったんですけど、でも基本的には僕らが作ったもともとのアレンジを尊重しながら素晴らしい弦を入れていただくことができました。

あんにゅ ホントに素晴らしかったよね。

小幡 うん。想像をはるかに超える春の風を楽曲に注ぎ込んでくださいました。僕たちがこの曲をここまで気に入ったのは森さんの弦の力、さらには尊敬するミュージシャンの方々の演奏が間違いなく大きかったと思います。

小幡康裕(Key, G, B, Dr, Programming)

小幡康裕(Key, G, B, Dr, Programming)

──ベースは山口寛雄さん、ドラムは佐野康夫さんがプレイされていますね。お二方がそろうのは2017年のシングル「大旋風」以来ですか。

小幡 はい。僕にとってのベースヒーローである山口さんはこの曲の器、スケール感をより大きなものにしてくださいましたし、佐野さんは神がかった独特のグルーヴ感で曲に心地よいゆらぎを与えてくれました。尊敬する方々に関わっていただくことで自分たちの曲がここまで輝きを増すのかと、そんなことを味わえたのはまさにミュージシャン冥利に尽きる瞬間でしたね。

あんにゅ 森さんも含め、皆さん楽しそうに参加してくださったのが私たちとしてもすごくうれしかったですしね。

もうちょっと泣きそうな感じで歌ってみて

──渾身の楽曲のうえで響くあんにゅさんの歌声も胸に強く響くものになっていると思います。レコーディングはいかがでしたか?

あんにゅ 私は時期によっても楽曲によっても、いろいろ歌い方が変化しているんですけど、ずいぶん昔に録ったこの曲のデモの音源を聴き返してみたところ、デビュー以前の歌い方をしている印象があったんですよ。

小幡 10代の頃のような歌い方?

あんにゅ そうそう。すごくまっすぐに、芯の通った歌い方をしていたんです。活動を続けてきた中でいろんな表現を身に付けてきていたから、その当時の歌が自分にとってはすごく新鮮だったし、この曲にはそれがマッチしているような気がしたんですよね。なので、数年越しにその歌い方を自分なりに噛み砕き、そこをなぞるような歌い方をしてみたんですけど……それがすごく難しくて、最初は全然歌えなかったんですよ。どこか切なさが足りないような気がしちゃうというか。昔のほうがテクニック的にはうまくはないんだけど、もっと切なさを感じられる歌になっていたんですよね。そのバランスを再現するのがなかなかうまくいかなくって。

コアラモード.

コアラモード.

小幡 あんにゅが「デモを超えられない」と言ってる気持ちは僕もよくわかりました。それはつまり歌が上達して、安定した発声ができるようになってるからこそ、デモの歌にはあった粗削りなままの感情が出せないっていうことだと思うんですよね。僕からすれば、喉は最初からちゃんとあったまっていたし、高音も伸びやかに出ていると感じてはいたんですけど、でも何かひとさじ足りないという気持ちもわかる。そこでディレクションとして「もうちょっと泣きそうな感じで歌ってみて」って言ったんですよ。

あんにゅ うん。2番のサビだよね。

小幡 そう。で、実際泣きそうな感じで歌ってくれたことで、この曲に必要な切なさがちゃんと増幅されたんですよね。

あんにゅ デモのほうがもっと泣いていたとは思うんですけど、小幡さんがそういうディレクションをしてくれたおかげで、今の自分として納得のいく表現ができたような気がします。今の私の歌い方と昔の私の歌い方がちょうどうまく混ざった表現にたどり着き、いろいろ大変な時期を乗り越えて春がやってくるというこの曲のテーマをちゃんと声でも表現できたかなって。やっぱりさすがだなと……。

小幡 ん?

あんにゅ いや、さすが私だなと。

小幡 その“さすが”がどこにかかるのかと思ったらまさかの自分だった(笑)。

──(笑)。でも本当に素敵な歌になっていると思います。本作が配信された2日後には横浜BAYSISでのワンマンライブ「Coalamode. LIVE!! 2022 ~はるつげどり~」も開催されますね。

小幡 地元横浜での有観客ワンマンという時点で気持ちが高ぶってきますね。昨年も2回、有観客ライブをやることができたんですけど、あのときはお客さんの前で演奏するのがひさびさすぎて、ライブの感覚を取り戻すのにけっこう時間がかかったんですよ。

あんにゅ そうだね。2部制だったんですけど、1部と2部でテンションが全然違っていて。1部はものすごく緊張していたから、お客さんたちの手拍子の大きさにびっくりしたりしてた(笑)。

小幡 まあでもそこでライブの勘はちゃんと取り戻すことができたし、改めてライブが僕らにとっての心の栄養になっているんだなということを思い知ったので、今回はよりよいパフォーマンスをお見せしたいですね。2022年のコアラモード.の姿、そして僕たちがここから進んでいきたい未来をしっかり音楽に込めて鳴らしたいと思います。「はるつげどり」のリリースを含め、ここが僕らにとっての新たなる門出になるように。

あんにゅ 楽しみに待っていてくれるみんなの前で、堂々としたコアラモード.の姿を見せたいと思います。今回も2部制ですけど、1部から堂々とやりますので!

コアラモード.

コアラモード.

ライブ情報

Coalamode. LIVE!! 2022 ~はるつげどり~

2022年2月20日(日)神奈川県 横浜BAYSIS

[1回目]OPEN 14:30 / START 15:00
[2回目]OPEN 18:00 / START 18:30

ツイキャス配信チケット発売中

プロフィール

コアラモード.

ボーカルのあんにゅとサウンドクリエイターの小幡康裕からなる神奈川・横浜出身の男女2人組ユニット。2013年の結成以来、横浜を拠点に精力的なライブ活動を行い徐々に話題を集める。2015年2月にフジテレビ・ノイタミナ枠アニメ「四月は君の嘘」後期オープニングテーマ「七色シンフォニー」でメジャーデビュー。2016年3月にリリースした「さくらぼっち」がTikTokで広がり、この曲を使用した動画が8万本以上投稿された。またテレビアニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」「逆転裁判 ~その『真実』、異議あり!~Season 2」「俺だけ入れる隠しダンジョン」など数々のタイアップ曲を担当している。2021年には「ユラユラリカ」と「ラッタッタラッタ」という2作の配信シングルを発表。デビュー7周年を迎えた2022年2月18日に配信シングル「はるつげどり」をリリースした。2月20日に神奈川・横浜BAYSISでワンマンライブ「Coalamode. LIVE!! 2022 ~はるつげどり~」を開催する。