コアラモード.が新曲「はるつげどり」をデビュー7周年記念日の2月18日に配信リリースした。
「はるつげどり」は出会いと別れの季節である春をテーマに、そこで生まれる切ない感情と未来に向けた希望を描いた楽曲。約4年ほど前から大切に温めてきた楽曲を改めてブラッシュアップしたとのことで、今のコアラモード.が鳴らすにふさわしい仕上がりの作品となっている。ストリングスアレンジには森俊之、演奏には山口寛雄(B)と佐野康夫(Dr)というコアラモード.が尊敬するミュージシャンが参加し、楽曲に彩りを添えている。
音楽ナタリーでは、配信スタートの2日後に地元・横浜でのワンマンライブも控えるコアラモード.の2人に約1年ぶりにインタビューを行った。
取材・文 / もりひでゆき撮影 / 曽我美芽
僕たちの中ではとっておきの1曲
──音楽ナタリーへの登場は2021年2月リリースのシングル「ネモフィラ」以来になります。あのときのインタビューであんにゅさんはコロナ禍でDTM環境を整えたとおっしゃっていましたが、そこからの1年で機材を使いこなせるようになりました?
あんにゅ(Vo, G) それがですね、去年1年で少しずつまた小幡さんと直接会って制作ができる機会が多くなってきたところがあって。今後また世の中の状況的にどうなるかはわかりませんが、一旦ちょっと機材から離れてます(笑)。
──なるほど。まあでも顔を突き合わせて制作できたほうがコアラモード.としてはいいはずですもんね。
小幡康裕(Key, G, B, Dr, Programming) そうですね。あんにゅのDTM技術が上達してほしかった気持ちも若干ありますが(笑)、直接顔を見ながら肌感覚でやるからこそのいい部分は絶対にありますから。これまでずっとやってきたスタイルで制作できるに越したことはないのかなとは思います。
──昨年は「ユラユラリカ」「ラッタッタラッタ」という2曲の配信がありましたし、制作はコンスタントに続けていたんですね。
小幡 そうですね。新曲ももちろん作っていましたし、デビュー以降に書き溜めたストック曲をもう一度見つめ直してブラッシュアップしていくようなこともやっていました。これまでのキャリアの中で自分たちのコアラモード.像がどんどん変化していたりもするので、今後作ってみたい音楽や2人の音楽性を模索しながら曲作りはずっと続けていましたね。
──過去に作ったストック曲と改めて向き合うことで何か気付きはありました?
小幡 例えば歌詞ひとつとっても、年齢を重ねた今じゃ絶対に書けないものがあったりするんですよ。そういった意味では、その曲を書いたときのフレッシュな気持ちを持って今、演奏したり歌ったりすることはきっとできないと思うんです。そこに気付けたからこそ、じゃあ今のコアラモード.として世の中に放つとしたらどうブラッシュアップすればいいのかをすごく考えるようになったんですよね。その曲が持っている大事な部分、そこに注いだこだわりを残しながら、どう今の形にするかを僕ら2人はもちろん、スタッフさんも含めてたくさん話し合っています。
あんにゅ メジャーデビューした頃の、今から7年くらい前の曲を改めて聴くと、「あー時が経ったな!」ってすごく感じますからね(笑)。サウンド的な部分では今の時代にはちょっと合わないかもなと思うようなものもあって。
小幡 うん。自分たちの心境同様に、音楽シーンの流れも変わりますからね。その変化にちゃんと対応しながら、ストック曲であったとしても、そこに今の自分たちが表現したいものをしっかり乗せた最新曲としてちゃんと世に出すべきだなと。それは今回の「はるつげどり」に関しても同じ気持ちです。
──「はるつげどり」もストック曲だったんですか?
あんにゅ そうなんですよ。最初のデモができたのは2018年の10月くらいかな。
小幡 僕たちの中ではとっておきの1曲で、どこか大事なタイミングで出したいとずっと思っていたんです。思い入れが強い曲だからこそ、これまでに何度も手を加えてブラッシュアップを続けていたんですよね。
あんにゅ 歌詞に関してはお互いにいいと思うフレーズをどんどん出し合って作っていったので、この曲はホントに共作したなっていう感覚が強いです。しかも、いろいろなタイミングでメロディに手を加えたりもしているので、もうどっちがどこを作ったかわからなくなっているような状況で(笑)。
小幡 第1稿ができたあと、時間が経つことで歌いたい内容もどんどん変化していくし、その過程で学んだ音的なギミックを盛り込んでみたくなったりもするわけで。ここに至るまでには本当に微妙な変化をたくさん重ねてきましたね。
あんにゅ うん。それを今回、私たちのデビュー記念日にリリースすることができるのは本当にうれしいよね。
小幡 歌詞に「河津桜」という言葉が出てきますけど、時期的には早咲きの桜のシーズンでもあるので、今のタイミングでリリースするにふさわしい曲になったとも思います。
クレジットを“コアラモード.”表記にすることがしっくりきた
──この曲の作詞・作曲のクレジットは“コアラモード.”名義になっています。それもお互いのアイデアを盛り込みながら時間をかけて共作してきたからですかね?
小幡 はい。これまでのコアラモード.は、お互いに曲を書く独立したコンポーザーのユニットみたいな気持ちで取り組んできたところがあったんですよ。だから、共作であっても“あんにゅ&小幡康裕”というクレジットにしてきたんですけど、この曲はスタッフさんも含めたチームとして作り上げた感覚が特に強いのでクレジットをコアラモード.という表記にしたんですよね。
あんにゅ そういう表記にしたのは初めてだもんね。私たちはこれまで「コアラモード.って何なんだろう?」ってずっと考えてきたところがあったんですけど、この「はるつげどり」でようやくその1つの答えが見えたような気もしたんです。だからこそクレジットをコアラモード.表記にすることがしっくりきたんでしょうね。
──小幡さんは1月にTwitterで、「Mix&Mastering終わった新曲、結構良い気がしている。あんにゅと話してて、『すごくよくない?』なんてお互いに言い合えたの、いつぶりだろう」と発言されていましたよね。これが「はるつげどり」のことだったんですか?
小幡 そうなんです。毎回、新曲が完成すると、次の日にはもう「ここをこうすればよかったかな」って後ろ髪を引かれてしまう部分が必ずあるんですよ。それはネガティブな意味ではないんですけど、世に出すものに対してはストイックに突き詰めてしまうところがあるというか。でもこの曲に関しては作り終えた瞬間、素直に「この曲よくない?」って、あんにゅと言い合えた。それが本当にひさしぶりだったんです。
あんにゅ ひさしぶりっていうか、初めてだと思いますよ。もちろん今までの曲もすべて愛しているし、どれもが絶対大切なんですけど、やっぱり制作してる側としてはさらに欲が出てしまう部分がどうしてもあるわけで。でも今回は純粋に「心からいいものができたな」「これがコアラモード.だな」「早く聴いてもらいたいな」ってストレートに感じることができたんです。ミュージシャンとしてはすごく健康的ですよね(笑)。
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切なくも前向きになれる、春への思い