遊び心を感じさせる「みんなのバス」「損得感情」

──新たに作ったというその2曲がまさに遊び心を感じさせる仕上がりですよね。

あんにゅ　そうですね。「みんなのバス」は実際にバスを利用したときに見えたものをひたすら書いていった感じで。

小幡　歌詞にあまり意味を持たせずに、バスから見えた景色をそのまま羅列していくっていう。

あんにゅ　私たちは曲を作ろうってなるとついつい力を入れすぎてしまって、メッセージ性を大事にしがちなんですよ。でもこの曲はアルバムの中の休憩になるような軽い曲にしたかったんですよね。力の抜き加減が難しかったけど、楽しく作ることができました。あと、普段はほとんど歌わない小幡さんの歌とセリフが入ってるところもポイントですね。特にセリフはなかなか言わなそうなチャラいこと言ってるんで（笑）。

小幡　「なんでこんなことになったんだろう」って思いながら何回か録りました（笑）。

あんにゅ　そこに関しては私がディレクションしてね。歌も含め、なかなかよかったですよ。

小幡　ありがとうございます（笑）。

──「損得感情」は展開がくるくる変わるところが面白かったです。変態的な構成の曲だなと。

あんにゅ　あははは（笑）。急にテンポが速くなったりしますからね。

小幡　拍子が変わったりもするし。この曲もアルバムだからこそできる、遊び心満載の曲になったと思います。

あんにゅ　この曲は2人で「ここはこうしたらもっと面白いんじゃない？」って楽しみながら一緒に作っていったんですよ。ミックスにもこだわったので、完成まではけっこう時間がかかってますね。

小幡　そうだね。最初はもっとロックな雰囲気のミックスだったんですけど、最終的にはちょっと素朴で軽やかに聴けるように調整してもらいました。

それぞれの曲の主人公を演じるように

──そんな楽しい曲がある一方で、「海」というシリアスなバラードも収録されています。

あんにゅ　「海」は私が高校生のときに作った大切な曲で、コアラモード．になる前から弾き語りで歌っていたんですよ。今回は、こういうテイストもコアラモード．のカラーの1つになったらいいなと思って入れさせてもらいました。

小幡　ライブでかなりやってきた曲なので、レコーディングでも歌とピアノを「せーの」で一緒に録りました。そこにあとからチェロを重ねたんですけど、ライブ感のある仕上がりになってると思いますね。

──この曲で聴ける低いトーンの歌声が顕著ですけど、あんにゅさんの歌声は楽曲ごとにさまざまな表情を見せていますよね。それもまたコアラモード．の大きな武器だなと。

あんにゅ　子供っぽく歌う曲があれば、女性の嫉妬をむき出しにしたみたいな歌い方をする曲もあるし、母性を感じさせるような温かい歌い方もする。本当にすべての曲で歌い方が違うなって自分でも思います。私は欲張りなので1つの歌い方に縛られたくないんですよ。だからそれぞれの曲の主人公を演じるような気持ちで歌ってるんですよね。

小幡　あんにゅは演劇部出身なのでそういう歌い方ができるんでしょうね。僕がこのユニットを組もうと思ったのもあんにゅの声に惹かれてのことだったので、そこはやっぱり武器だと思いますね。それを生かすようなアレンジを心がけてもいますし。

アルバムを締めくくる新しい「未来」

──アルバムのラストには「未来」という曲が収録されていますね。ここから未来に向けた新たな決意を感じさせるメッセージがエンディングにふさわしいなと。

小幡　ありがとうございます。この曲はインディーズ時代のシングルにも収録されていたんですよ。

あんにゅ　まさにさっきお話した“トークバック事件”が起きた曲で（笑）。

小幡　リリースして以降、ライブでは最後に演奏することが多かったし、この曲にすごく助けられてきた感覚が自分たちにはあるんですよ。いまだに気持ちが鼓舞されるところもあるし。なので、今回のタイミングでレコーディングし直した新しい「未来」をアルバムに入れることに大きな意味があるんじゃないかなと思ったんですよね。この曲でMVを撮れたこともすごくうれしかったです。

あんにゅ　MVの撮影をしたのが、去年の11月の大雪が降った日だったんですよ。予定外の出来事だったんですけど、せっかくだから雪を利用した内容にしようってことになって。寒かったですけど、そういう意味でも思い出深い作品になりましたね。

小幡　図らずもリリース時期にマッチした映像になったので、曲と一緒に楽しんでいただけたらうれしいです。