音楽ナタリー Power Push - 飯田瑞規(cinema staff)×渡井翔汰(Halo at 四畳半)×竹縄航太(HOWL BE QUIET)×福島由也(Ivy to Fraudulent Game)

“完成のあとの解体”バンドの新たな挑戦「シネマのキネマ」座談会

ルーツが違うからこそ武器になる

──HOWL BE QUIETもリスナーの立場から見ていると、時期によってかなりモードが違う印象があります。

竹縄 そうかもしれないですね。自分たちとしては、完成した曲に対して “真っ裸の赤ちゃん”というイメージがあって、「それにどんな洋服を着せるか?」って考えるんです。夏服なのか冬服なのか、シックなスタイルなのか、カラフルなデザインなのか。曲のアレンジもMVの表現もそういうテンションで作ってるんですよね。そういう感覚はもちろん、メンバーとも共有してます。

──着せた服によって、ギターロックに聞こえたり、エレクトロに聞こえたりすると。

竹縄 「こういうふうに聞こえてほしい」ということは意識してないですね。まずは自分たちのやりたいことをやって、受け取り方は聴いてくれる人に委ねているので。メンバーの音楽性ということで言えば、もともと4人ともバラバラなんですよ。僕はJ-POPが好きで、ギターの黒木(健志)はUKロックとか。それぞれの根本は変わらないし、好きなものも今のところ変わってないですね。

──なるほど。Ivy to Fraudulent Gameはどうですか?

福島由也(Ivy to Fraudulent Game)

福島 僕はもともとSigur Ros、My Bloody Valentineあたりが好きで洋楽をいろいろ掘っていった感じなんですけど、ほかのメンバーとは趣味が違うし、それぞれの音楽体験はあまり共有していないかもしれないですね。例えばボーカルの寺口(宣明)はバンドの音楽をほとんど聴かないんですよ。彼は単純にボーカリストが好きなんですよね、玉置浩二さんとか、山下達郎さんとか。確かにルーツは違うけど、僕が作った曲を寺口のような “歌、大好き”なヤツが歌ってくれるのが面白いと思うんですよね。それが僕らの武器じゃないかなって。

飯田 前にライブの打ち上げで一緒になったとき「どういう音楽が好きなの?」って、寺口くんに聞いたら「バンドは聴かないんです」って言われて、「ドヒャー!」ってなったことがあって(笑)。

竹縄渡井福島 ハハハハハ!

飯田 俺も玉置浩二さんはめちゃくちゃ好きだけどね。

ライブで知り合ってお互いを尊敬し合う

──打ち上げの席でそういう話をするんですか?

飯田 最近は打ち上げとかで音楽の話をしなくなりましたね(笑)。メンバーとCDを貸し借りすることはあるけど、打ち上げで自分のルーツみたいな話になったら「そんな話やめて、飲もうよ」ってなっちゃう。

渡井 “打ち上げも含めてライブ”みたいな環境で育ってきてるんですけど、僕らも音楽の話はしないですね。マジメに音楽の話をしたのは、初対面のときくらいかなあ。もしくは打ち上げで朝4時くらいなったときに(笑)。

竹縄航太(HOWL BE QUIET)

竹縄 1周回って、また音楽の話に戻るっていうこともあるよね(笑)。

渡井 だいたいはくだらない話をしてます(笑)。

福島 打ち上げは出ますけど、僕はあんまり好きじゃないかな……。

飯田 わかるよ(笑)。

福島 仲のいいバンドもそんなにいないし。

渡井 いやいや、いるでしょ?

竹縄 ウチも仲がいいバンドは少ないかな。打ち上げは出てるけど。

──確かにHOWL BE QUEITはシーンの中にいる印象があまりないですね。

竹縄 あ、それはありがたいです(笑)。Haloに近いところにいるバンドとはわりと仲がいいですけどね。SHE'Sとか、LAMP IN TERRENとか。

渡井 その2組とは日夜、連絡を取り合ってますね。年が経つにつれて解散とか活休するバンドも増えてくるから、がんばってるバンド同士はグッと仲良くなるんですよ。ショックだったのは、HOWLとLAMPとSHE'Sが「1234TOUR」っていうのをやってて……。

竹縄 ハハハハハ(笑)。

渡井 「なんでウチらは呼ばれないんだ!」って納得いかなかったです(笑)。

渡井 でもIvyとは共同ツアーをやったからね。

福島 うん、4本回りました。

──そうは言っても皆さん、それぞれが音楽性でつながってるわけではないんですよね。

福島 はい。音楽性はぜんぜん違いますからね。どういうつながりなんだろう……?

渡井 ライブで知り合ってるから、お互いのことを尊敬し合ってるというか。僕はIvyのことを「いいライブをするバンドだな」って思っているし、Ivyのメンバーもウチらのことをそう思ってくれてたらうれしいなって。

福島 もちろんそう思ってるよ(笑)。

──最後に「シネマのキネマ」に対する意気込みを改めて聞かせてもらえますか?

飯田 今まで何度もやってきた年上のバンドさんとの対バンじゃなくて、今回はみんな年下のバンドなので、それだけでもすごく新鮮なんです。もちろん負けないようなライブをしたいと思ってるし、いいイベントにしたいですね。

左から飯田瑞規(cinema staff)、渡井翔汰(Halo at 四畳半)、竹縄航太(HOWL BE QUIET)、福島由也(Ivy to Fraudulent Game)。

渡井 呼んでいただいたからには「やらんとならん!」という気持ちでやろうと思います。イベントの趣旨だったり、cinema staffの皆さんの思い、来てくれたお客さんの気持ちを汲みながら、自分たちらしいライブをやりたいです。

竹縄 キネマ倶楽部は俺らに合いそうな会場だなと思うし、自分たち以外のバンドを目当てに来たお客さんにも、HOWL BE QUEITの音楽をしっかり伝えられるライブをやりたいですね。異種格闘技戦みたいな感じもあるので、そこでちゃんと自分たちの色を出せたらな、と。

福島 4バンドの中では自分たちが最年少なので、いい意味でかき乱すようなライブをやりたいです。

──オーディエンスにとっても刺激的なイベントになりそうですね。

飯田 そうですね。音楽性が似ているバンドを集めたイベントはよくあると思うんですけど、今回はそうではないので。「バンドの名前は聞いたことあるけど、観る機会がなかった」という人にもぜひ来てもらいたいですね。

cinema staff自主企画「シネマのキネマ」
2016年11月30日(水)東京都 東京キネマ倶楽部
<出演者> cinema staff / Halo at 四畳半 / HOWL BE QUIET / Ivy to Fraudulent Game
cinema staff(シネマスタッフ)
cinema staff

飯田瑞規(Vo, G)、辻友貴(G)、三島想平(B)、久野洋平(Dr)からなる4人組ロックバンド。2003年に飯田、三島、辻が前身バンドを結成し、2006年に久野が加入して現在の編成となる。愛知、岐阜を拠点にしたライブ活動を経て、2008年11月に1stミニアルバム「document」を残響recordからリリース。アグレッシブなギターサウンドを前面に打ち出したバンドアンサンブルと、繊細かつメロディアスなボーカルで着実に人気を高めていく。2012年6月にメジャーデビュー作となるポニーキャニオン移籍第1弾作品「into the green」を、2013年5月にメジャー1stフルアルバム「望郷」を発表した。同年8月、テレビアニメ「進撃の巨人」の後期エンディングテーマに提供した「great escape」がスマッシュヒットを記録。同曲を含むニューアルバム「Drums,Bass,2(to)Guitars」を2014年4月にリリースした。2016年5月にはプロデューサーに江口亮(la la larks)を迎えて制作された5thアルバム「eve」を発表。同年11月には新作音源「Vektor E.P.」をリリースする。

Halo at 四畳半(ハロアットヨジョウハン)

渡井翔汰(Vo, G)、齋木孝平(G, Cho)、白井將人(B)、片山僚(Dr, Cho)からなる4人組のロックバンド。2012年に現在の体制で活動をスタートさせ、同年10月に1stデモシングル「アメイジア」を発表した。2015年7月にはバンドにとって初の全国流通盤となるミニアルバム「APOGEE」をリリース。2016年11月には新作音源「万有信号の法則-EP」を発表する。

HOWL BE QUIET(ハウルビークワイエット)

竹縄航太(Vo, G, Piano)、黒木健志(G)、橋本佳紀(B)、岩野亨(Dr)の4人からなるピアノロックバンド。2010年の結成から渋谷や下北沢を中心に活動を続け、2013年12月に発表した1stアルバム「DECEMBER」が、タワーレコードのスタッフが選ぶ「タワレコメン」に選出された。2016年3月にシングル「MONSTER WORLD」をリリースし、ポニーキャニオンよりメジャーデビューを果たした。同年12月にはアニメ「DAYS」のオープニング主題歌である「Higher Climber」を含むニューシングル「サネカズラ」を発表する。

Ivy to Fraudulent Game(アイヴィトゥーフロウジュレントゲーム)

寺口宣明(G, Vo)、大島知起(G)、カワイリョウタロウ(B)、福島由也(Dr)の4人からなるロックバンド。2010年に結成し、2013年8月に開催された「閃光ライオット2013」のファイナリストとしてライブ審査に出場した。2015年5月に東京・TSUTAYA O-Crestで開催したワンマンライブをソールドアウトさせた。2016年4月には初の全国流通盤としてミニアルバム「行間にて」をリリースした。