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自らをも救う新作「SALVAGE YOU」メンバー全曲解説で迫る制作秘話
今年6月にリリースした1st E.P.「into the green」でメジャーデビューを果たしたcinema staffが、早くも4thミニアルバム「SALVAGE YOU」をリリースした。
この「SALVAGE YOU」は、「into the green」にたどり着くまでのストーリーを全7曲を通してつづると同時に、サウンド面のさらなる進化と深化を示す、連動性の高い作品に仕上がっている。今回のメンバー全員インタビューでは、全曲解説も実施。「SALVAGE YOU」の全貌とcinema staffの現在地に迫った。
取材・文 / 三宅正一(ONBU)
「SALVAGE YOU」と「into the green」は1セット
──前回のインタビューで、三島さんは去年精神状態があまり良くないときに3カ月強で20曲ほどのデモを作ったと言っていて。この「SALVAGE YOU」に収録されている曲もそのときにできたものですか?
三島想平(B) ほぼそうですね。前回のインタビューで、「into the green」は一気に曲を書いていた時期の最後のほうにできたという話をしたと思うんですけど。
──うん。「into the green」ができたことで、混沌としたモードから抜け出すことができたと。
三島 そうです。それで、「SALVAGE YOU」に入っている曲には、ドロドロした状態から抜け出す前に作ったものがほとんどで。
──その楽曲群の中から、このミニアルバムを形成するときにどんな全体像を描いたんですか?
三島 1曲目の「奇跡」を中心に考えたんですけど。ただ、一気に曲を書いていたときは最終的にどういう形態でリリースするのか全く決まってなくて。いつかフルアルバムを1枚リリースするくらいの気持ちでいたんですよね。結果的には「into the green」を先にリリースして、次にこのミニアルバムが続く形になって。なので、僕らとしては「into the green」と「SALVAGE YOU」が1セットになるような連動性を持たせたかったんです。
──実際にこの2作品は地続きなものになっていますよね。
三島 そうですね。「SALVAGE YOU」では「into the green」にたどり着くまでのストーリーを見せたかったんです。
飯田瑞規(Vo,G) 「SALVAGE YOU」の収録曲は「into the green」の前にできたものばかりなんですけど、「into the green」が完成してからバンドの先を見据えて、三島が歌詞を結構書き直したんです。その結果、「into the green」の次に出るのにふさわしい曲の集まりになりました。
自分でも「なんでこんなこと書いたんだろう?」って
──「into the green」が生まれたことで、「SALVAGE YOU」の楽曲群も自ずと変化していきましたか?
三島 うん、変化しましたね。やっぱり僕らにとって「into the green」が大きな転機になっていて。あの曲が書けたからこそ、「SALVAGE YOU」の曲の歌詞も書き直そうと思えた。だから「SALVAGE YOU」の曲の歌詞は、今までで一番じっくり推敲しましたね。すごく時間がかかった。「奇跡」を軸に全体を組み立てようってなった段階で、自分が精神的に一番キツかったときのことを、このミニアルバムで全部吐き出そうと思ったんです。今後、こういう曲はもう書けないと思ったし。自分の最も毒々しい部分や赤裸々な部分を出した上で、「into the green」を踏まえて、いかに今の自分たちが出すべき曲にしていくか。歌詞を書き直すポイントはそこでしたね。
──歌詞を読み返してもあのときの自分の精神状態は普通じゃないと思った?
三島 思いましたね。特に「warszawa」や「さよなら、メルツ」の歌詞は「なんでこんなこと書いたんだろう?」って思います(笑)。もちろん今読んでもダメな歌詞だとは思わないし、これはこれで納得はいってるんですけど、推敲していたときによくこれを書いたなと思って。「すごい気持ちで歌詞を書いてるぞ、この人は」って(笑)。客観的に見れるくらい別人が書いたみたいな感覚があるんです。それはそれですごく面白かったですね。
──その時間は現在地にたどり着くまでに絶対に必要だったし。
三島 完全に必要な時間でしたね。バンドマンとしてもそうだし、一個人としてもそう思います。
ミニアルバム「SALVAGE YOU」/ 2012年9月5日発売 / 1800円 / ポニーキャニオン / PCCA-03652
CD収録曲
- 奇跡
- WARP
- さよなら、メルツ
- her method
- warszawa
- 小説家
- salvage me
cinema staff(しねますたっふ)
飯田瑞規(Vo, G)、辻友貴(G)、三島想平(B)、久野洋平(Dr)からなる4人組ロックバンド。2003年に飯田、三島、辻が前身バンドを結成し、2006年に久野が加入して現在の編成となる。愛知、岐阜を拠点にしたライブ活動を経て、2008年11月に1stミニアルバム「document」を残響recordからリリース。アグレッシブなギターサウンドを前面に打ち出したバンドアンサンブルと、繊細かつメロディアスなボーカルで着実に人気を高めていく。2012年6月にポニーキャニオン移籍第1弾作品の1st E.P.「into the green」をリリースし、同年9月に早くもメジャー第2弾となる4thミニアルバム「SALVAGE YOU」を発表。