ナタリー PowerPush - チャットモンチー
バンドの進化を示す傑作が完成 3rdアルバム「告白」を語る
かっこいいって思われたい
──昔の曲の歌詞は、現在の心境と違ってきたりしませんか?
高橋 どうしても、これはちゃうやろ、今はこれはあかんってなるものは出しません。この間出した「Last Love Letter」のカップリングで、「Good luck my sister!!」っていう曲があるんですけど、あれはもともと全然違う歌詞で。メロディはめっちゃいいんやけど、歌詞が恥ずかしいけん出せんってなって、全部まるごと書き換えたりしましたね。年相応じゃない気がして。私たちが今これを声を高らかにして歌うべき歌詞なのかってことを考えました。
──前にお話したときに、自分たちはちょっと若く見られがちだから、年相応に、例えば同年代の女性にも共感してほしい、みたいなことをおっしゃってましたね。子供っぽいイメージが今まであったからって。それと関係してるんですか?
高橋 それも関係していると思います。今25、6歳の人が音を出していて、それが同年代に届かないのはやっぱり寂しいって思いますよね。それに、今の気持ちとまったく違うっていう曲もあるじゃないですか。今となっては恥ずかしいというか。甘すぎるとか女の子っぽすぎるとか。そういうのは出したくないなって思って。
──あなた方ぐらいの年代って一番変わる時期だから、恥ずかしいと思う気持ちも出てくるでしょうね。
高橋 そうなんですよね。
──自分たちの何が一番成長したと思います? この5年間で。
高橋 ええー。どこでしょうね。一番変わったところはプロになったってこと。目の前にお客さんが広がっていることを想定して作品を作るようになったことだと思います。お客さんにどう思ってほしいとか、お客さんに何かを与えることができるだなんて、そういうことはまだ思えてないんですよ、私は。思えてないんやけど、でもやっぱりバンドとしてどう見られたいか、自分たちが表現者としてどういう風に見られたいかっていうのは考えるようになって。やっぱりかっこいいなって思われたいですね。曲もかっこいい、ライブもかっこいい。うん。かっこいいなって思われたい。
──「チャットモンチー見てバンド始めました」みたいな女子がいたりしたら嬉しい?
高橋 そうですね。すっごい嬉しいです。
テレビにはリード曲でしか出られない
──それは要するに、自分のことを表現するのに精一杯だったってところから、少しまた変わってきたっていうこと?
高橋 そうです。自分の感情を垂れ流しにする時期もあったと思うんですね、過去には。でも、そこよりかはもうひとつ上のステージに行ってるんじゃないかなって。
──デビュー前に比べると、すごくたくさんのお客さんを相手にやるようになったっていうのが関係しているんでしょうね。
高橋 それはあると思います。テレビとか、メディアに出るようになったっていうのもすごく大きいと思うんですよね。テレビってやっぱり、ほぼリード曲でしか出られない。アルバム曲で出ることなんてあまりないから。「シャングリラ」から出たっていうのもあるけど、自分たちのポップな部分がフィーチャーされて見られるようになって。そこで変わったところはありましたね。
──ああ、だから「ライブに来てください」ってことを言うわけだ。
高橋 それも言うようになったし、シングル曲で「染まるよ」みたいな曲を出そう、「Last Love letter」みたいな曲を出そうっていうのを、スタッフさんと意見をかわせるようになったし、自分たちが経験して、このままの見られ方じゃ私たちも満足できないなって思って、変えていこうと思ったわけですから。
──変わってきたと思います? 周りの見方。
高橋 思います。うん、思います。
──同年代の人たちに共感してもらいたいっていう思いは伝わってると思います?
高橋 思います。手応えが違います。
ちゃんと「ありがとう」が言えるようになった
──福岡さんはこの5年間で自分の中の何が変わったと思いますか?
福岡 うーん。そうですね……ありがとうって、ライブで言うんですけど、そのありがとうの質が変わってきたかな、と思います。なんかデビュー当時はすごい突き放してた部分があって、口では「ありがとう」と言ってるけど、お客さんとの間には一線を引いてるみたいな。私たちはお客さんの気持ちにはなりません、私たちは私たちの世界観でやってごめんなさい、みたいな“ありがとう”。そんな感覚があって。アマチュア時代からそうだったんだけど、やっぱり女性ということで甘く見られたくなかったから。でもこの5年間、まあデビューして3年ですけど、チャットやってきて、その“ありがとう”が、すごい変わってきたなって思って。武道館のときに一番思ったんですけど、“ありがとう”って、相手の愛情が理解できて初めてちゃんと返せる言葉なんやなっていうことがわかって、うん。ちゃんとありがとうって言えるようになったから。相手の目が見れるようになったみたいなもんですよね、ちゃんと。前は目も合わせられなくて、一方的だったから。
──なんか口先だけで言ってるみたいな。
福岡 うん、なんかそういう感じだったんですけど、ちゃんとわかってるしこっちも愛を持って曲を作ってるっていう自信が出てきて、“ありがとう”ってほんまに思えるようになったし、音楽を生む体制として攻撃的ではなくなったというか。曲として攻めたいっていう思いはずっとあって、そういう背中を見てファンの人たちだったりリスナーの人たちは、かっこいいと思うと思うんですよね。ずっと攻めてる人だったり、走り続けている人はすごくかっこいいから、いちいち自分が振り返らなくても付いてきてくれると思うんですよ。そういう人にちゃんと“ありがとう”って言えるようになったんが、一番武道館のときに感じたことで。まじめに良いって思ったもんを出し続けますって言えるようになってきた。それは今までの流れがあったからこういう風に思えるのであって。
──お客さんに支えられてるっていう実感?
福岡 お客さんに限らずですね。いろんな人に支えてもらった。もちろん自分たちの本意でないこともあったけど、それもすごくいい時期にちゃんと修正できる機会をいつももらえて、そのままだったらどうなっていたかわからないときも、ちゃんと考える余裕ももらえてたし。なんかそういう意味ではチャットモンチーを好きであってくれた人にすごく感謝してるし、この2人にもすごく感謝していますね。
CD収録曲
- 8cmのピンヒール
- ヒラヒラヒラク秘密ノ扉(Album Mix)
- 海から出た魚
- 染まるよ
- CAT WALK
- 余談
- ハイビスカスは冬に咲く
- あいまいな感情
- 長い目で見て
- LOVE is SOUP
- 風吹けば恋
- Last Love Letter(Album ver.)
- やさしさ
チャットモンチー
橋本絵莉子(G&Vo)、福岡晃子(B&Cho)、高橋久美子(Dr&Cho)の3人による徳島出身のロックバンド。デビュー前から“未完の大器”として音専誌で大々的に紹介され、2005年11月にミニアルバム「chatmonchy has come」で即ブレイク。J-POP/洋楽ギターロックの良質な部分を、ガーリーかつ豊かな感性で表現する世界観が幅広いリスナーを魅了し続けている。