音楽ナタリー Power Push - 大森靖子×福岡晃子(チャットモンチー)対談

一つの故郷、二つの女心

大森靖子が両A面シングル「マジックミラー / さっちゃんのセクシーカレー」を明日7月15日にリリースする。本作には4月の東京・中野サンプラザホール公演で初披露された「マジックミラー」をはじめ、個性豊かな3曲が収められている。シングルのリリースを記念して音楽ナタリーでは大森とチャットモンチー・福岡晃子の対談を実施。四国出身の女性アーティスト同士で、お互いに音楽的関心を持っていたという2人に東京への思い、創作に向ける姿勢などを語り合ってもらった。

取材 / 大山卓也 文 / 鵜飼亮次 撮影 / 北村勇祐

好きです。

──福岡さんはどういう経緯で大森さんのことを知ったんですか?

福岡晃子(チャットモンチー)

福岡 時期は覚えてないんですけど、大森靖子&THEピンクトカレフの音源を聴いたのがきっかけです。それで大森さん単体のアルバムも「絶対少女」発売のタイミングで買って、すごくいいなあと思って。好きです。

大森 なんて奇特な……。あまりミュージシャンから「好き」って言われることないんで。

福岡 あははは(笑)。あとアルバムを買うにあたってネットサーフィンしていろいろ動画も観てたんですよ。そこで道重(さゆみ)さんが好きなんだなってことも知って。ハロプロ好きなんですよね? うちのボーカル(橋本絵莉子)もモーニング娘。のことがすごく好きで。

大森 そうなんですか?

福岡 はい。それに大森さんのインタビューを読んで「なるほどな」と思うこともすごくありました。「めっちゃがんばって演奏しても最後のほうに変わったことやるとそればっかり取り上げられる」って話とか「あるよねー」って(笑)。

──大森さんはチャットモンチーについてどんな気持ちを抱いていますか?

大森 「ハナノユメ」が入ってるミニアルバム(2005年発表の「chatmonchy has come」)から聴いてるんですけど、一番好きなのは2人になったときのアルバム(2012年発表の「変身」)。メロディがいいですよね。しかもその中になんか「ん?」って感じる変な瞬間がある。

大森靖子

──それは、メロディがただきれいなだけじゃないっていうこと?

大森 はい。なんか、いい違和感があるんですよね。それがなければ単純にスーッて聴けてしまうのにそうさせないところがあって。中でも私が好きな2枚は特にそう思える内容でしたね。

──チャットモンチーの楽曲に関連した思い出で覚えていることはありますか?

大森 カラオケで「染まるよ」を歌ってる女の子を見ながら「チャットモンチーを歌うとかわいいんだなあ」って思ったことがありました(笑)。

言いたいことをわかりやすいように伝える音楽性

──お互いについての共通点やシンパシーを感じる部分はありますか?

大森 私と? いやないでしょ(笑)。

福岡 女であるっていう最大の共通点がありますよね(笑)。歌詞の内容は違うけれど根幹にあるものは一緒だなと思うところがすごくある。「私のバンドではこれ言われへんけど大森さんは言えていいな」って思うときもあります(笑)。それにただ思ってることを言ってるようでいて、ちゃんと作品にしてるのがすごい。言いたいことをわかりやすいように伝える音楽性っていうか。ただ並べただけでは伝わりにくいものを、自分の得意なメロディに当てはめることができてるなって感じていて、そこはちょっとえっちゃん(橋本絵莉子)に似てるかなって。

大森 わあ、かたじけない感じです。私はただの乙女心オタクというか「こういうこと思ってる子はかわいいなあ」みたいな感じで書いちゃうんで。

左から大森靖子、福岡晃子(チャットモンチー)。

──歌詞を書いてて、「自分は女子だな」って感じることはあります?

大森 一切ないです(笑)。

福岡 女子だな……っていうか、自分が女だからこそ面白いものが書けたなって思うことはありますね。よく「歌詞が怖い」とか言われるんですけど「まあ怖いでしょうよ」みたいな、女っぽいっていうより女の人が書いてるんでこうなるよっていうものを書いてます。

──最新アルバム「共鳴」に収録されている「隣の女」や「毒の花」は特にそうでしたが、福岡さんは女子特有の毒とかエグさみたいなものを、ちょいちょい出しますよね。でもそれを作風にしているというか、コンセプチュアルに書いているわけではないと。

福岡 そうなんですよ。それが自分の売りだとは思ってなくて。ただモテようと思ってないことは確かです。

大森 私は毒を盛りながら「早くこの“かわいい”を許容しろ!」と思って書いてます。キツいことを書くときほどそう。こんなこと考える女絶対にイヤだろうなってことを、めちゃめちゃかわいい言葉遣いで書くようにしていて。それを聴いた人に許容してもらうことで、私の好きなタイプの女の子が世界に許容されろと思ってます。

福岡 うん、すごくかわいいと思います。ギュッてしたくなる感じがする(笑)。そういう意味では私たちは真逆かもしれないですね。

大森 ふふふふ(笑)。

大森靖子 ニューシングル「マジックミラー / さっちゃんのセクシーカレー」2015年7月15日発売 / avex trax
CD+DVD 3780円 / AVCD-83266/B
CD 1080円 / AVCD-83267
CD収録曲
  1. マジックミラー
  2. さっちゃんのセクシーカレー
  3. 私は悪くない
DVD収録内容
  • 大森靖子全国ツアー「♥爆裂!ナナちゃんとイくラブラブ洗脳ツアー♥」全会場ライブ映像集
  • 「マジックミラー」Music Video
  • 「マジックミラー」Music Video(大森靖子新宿降臨ソロバージョン)
チャットモンチー アルバム「共鳴」2015年5月13日発売 / Ki/oon Music
「共鳴」
初回限定盤 [CD+DVD] 3672円 / KSCL-2610~1
通常盤 [CD] 3132円 / KSCL-2612
大森靖子(オオモリセイコ)
大森靖子

愛媛生まれのシンガーソングライター。弾き語りスタイルでの激情的な歌が耳の早い音楽ファンの間で話題を集め、2013年3月に1stフルアルバム「魔法が使えないなら死にたい」発表後、同年5月に東京・渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブを実施。レーベルや事務所に所属しないままチケットをソールドアウトさせ大成功に収める。その後12月に2ndフルアルバム「絶対少女」をリリース。このツアーの最終公演を東京・LIQUIDROOMにて実施した。2014年9月にエイベックスからメジャーデビューし、同年12月にメジャー1stアルバム「洗脳」をリリース。2015年には大森靖子&THEピンクトカレフ名義でアルバム「トカレフ」をリリースし、同バンドを5月に解散させる。7月にはメジャー2ndシングル「マジックミラー / さっちゃんのセクシーカレー」を発表する。

チャットモンチー
チャットモンチー

2000年4月、橋本絵莉子を中心に徳島で結成。2002年3月、橋本の高校の同級生だった福岡晃子が、翌2004年4月に福岡の大学でサークルの先輩だった高橋久美子が加入し、以降はこの3人体制で地元徳島を中心に活動する。2005年11月、ミニアルバム「chatmonchy has come」でメジャーデビュー。2006年1月には初のフルアルバム「耳鳴り」をリリースした。2008年春、初の日本武道館ワンマンライブを2日間にわたって開催。その後も精力的な活動を繰り広げるが、2011年9月の徳島でのライブを最後に高橋が脱退。その後は橋本と福岡の2人体制で活動を継続する。そして2012年2月には初のベストアルバム「チャットモンチー BEST ~2005-2011~」を、同年10月にはフルアルバム「変身」をリリース。2015年5月にはニューアルバム「共鳴」を発表した。10月にライブハウスツアー「男女6人6ヶ所巡り」、11月11日のデビュー10周年記念日に東京・日本武道館公演「チャットモンチーのすごい10周年 in 日本武道館!!!!」を開催予定。2016年2月には地元徳島にて2DAYSイベント「チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2016~みな、おいでなしてよ!~」を実施する。