ちゃんみな|痛みを美しさに変えて、とがり続ける20代の幕開け

今年9月にワーナーミュージック・ジャパンへの移籍を発表し、20歳の誕生日を迎えた10月14日には東京・Zepp DiverCity TOKYOでワンマンライブを行ったちゃんみな。9月には移籍第1弾シングルとして無味乾燥な世の中を風刺したメッセージソング「Doctor」を配信リリースし、11月30日には配信シングル「PAIN IS BEAUTY」を発表した。最新曲「PAIN IS BEAUTY」は20年の人生で培った“ちゃんみなイズム”を表明したエモーショナルなナンバー。20歳を迎えた今、ちゃんみなは何を思うのか。このインタビューでは移籍期間の間に行った自分磨きや2つの新曲に込めた思い、バースデーライブで見せた挑戦や今後の展望など、現在の胸の内を語ってもらった。

取材・文 / 猪又孝 撮影 / 映美

ジョジョ・ゴメスのダンスレッスンを受けにロサンゼルスへ

ちゃんみな

──新しいレーベルに移籍して、心境の変化はありますか?

特に大きな変化はないですね。もっとがんばろうっていうくらい。スタンスを変えようとかは思ってないです。

──作品リリースは1年ほど空きましたが、その間、焦りはなかったですか?

そういうのをあまり感じないようにしようと思って、4月に1カ月間、ロサンゼルスにダンス留学に行ったんです。海外でレッスンを受けるのはこれが初めて。日本でも昔からレッスンは受けてたんですけど、もっとダンスがうまくなりたいなとずっと思っていて。ロサンゼルスにダンス留学に行ってる友達も多かったし、向こうにジョジョ・ゴメスっていう私の好きな先生がいるんです。

──ジョジョ・ゴメスは25歳にしてブリトニー・スピアーズやジャスティン・ビーバー、アリアナ・グランデをはじめとした数多くのアーティストのステージ、ミュージックビデオのコレオグラフを担当している若手注目のダンサー、振付師ですね。今はデミ・ロヴァートのバックダンサーもやっている。

そう。キッズダンサーの頃からずっとレッスンを受けたかった先生で、時間があるんだったら長期間行っちゃおうと。直接、言葉をかけてくれたり、指導してくれるのですごくためになりました。「ダンスはうまいとかヘタじゃないから」とかいちいち深いことを言ってくれるんです。

──今回のダンスレッスンで一番刺激を受けたことは?

私はいつもステージのど真ん中でやってるじゃないですか。

──そりゃそうですよ。主役でソロアーティストなんですから。

でも向こうに行ったらそれは全然関係なくなるんですよ。しかも、最初は自信がなくて後ろのほうの端っこにいたんです。そしたら自分の後ろでレッスンを受けてる人が「あなた、邪魔」って言ってきたり、自分の前に人がいるっていう光景が私にとって新鮮で。ただやっているうちに「ここで端っこで甘んじてるんだったら日本でも端っこだわ!」と思って、「がんばってセンターに行こう!」っていう闘争心が出てきて。しばらくそういうのがなかったんですよね。

──日本にいるとどうしても自分が中心になってくるし、周りに味方が増えてくるし。

それがよくないとずっと思ってたんです。「周りは全部ライバル」みたいなそういう環境はすごく新鮮と言うか、デビューする前のハングリーな感じを思い出しました。スキルはもちろん、メンタル面でも刺激を受けることができて、行ってよかったなって思ってます。

私がバッドガールだったってこと忘れてない?

──移籍第1弾シングルとして9月に配信した「Doctor」はどんな思いから書いた曲なんですか?

最初はダンスチューンを作りたいなと思ってたんです。最近あまりやってなかったから。でもそれだとアンパイな気がしてきちゃって。別に広がりもないだろうし、「ああ、ちゃんみなだね」で終わるんじゃないかと。ロサンゼルスに行って闘争心が沸いてたこともあって、もっととがりたいと思ったんですね。私は最初からとがってる感じで出てきたのに「みんな、私がバッドガールだったってこと忘れてない?」と思っちゃって(笑)。

──そもそもメジャーデビュー曲の「FXXKER」が伏せ字入りのタイトルですからね(笑)。

そうなんですよ。デビュー曲が「FXXKER」なんで、それを思い出してっていう(笑)。だから挑戦的なことをしたいと思って、プロデューサーのJIGGさんと一緒にプリプロに入ったんです。そこでJIGGさんが「遊びで作ってみたんだけど」って聴かせてくれたトラックが「Doctor」のトラックで。「何これ、超面白いじゃん」って、その場であの肩を揺らすMVの振り付けとかも生まれて「コレ、よくない?」ってめっちゃ盛り上がったんです。その日はまだ歌詞も入れてないし、冷静になるために1日置こうという話になったんですけど、1日置いても「Doctor」に気が行っちゃって。スタッフも含めて「Doctor」にすることにしました。歌詞はプリプロの段階から入っていた「No Flavor」っていうワードから「今の世の中って味しない。それって一種のビョーキだよね」というふうに発展させて、私が最近思ってることを書いていきました。

──このリリックを通じて伝えたかったことは?

今はネットやSNSが発達したから情報があふれていて全体的にアイコニックなものが生まれづらい環境なんだなと思ったんです。何に対しても冷めてる人が多いのに、怒る人は昔よりも沸点が低くなってて何かにつけて悪口を言ったりケチを付ける人が多すぎる。そういうのはやめようぜっていう思いがあるんです。あと最近はとにかく似たモノが多いと思うんですよ。

──個性が失われてきているということですか?

と言うより、ちょっととがったことをやる人がいるとみんながすぐ叩きに行くじゃないですか。みんなと一緒にいたほうが、同じことをやっていたほうが安全だと思う人があまりにも多いからつまらないなって。

──ひょっとすると自分もそうなっちゃうかも、という危惧もあるんですか?

そうなんです。なりそうだったんで、コレを書いたんです。自分はそうじゃなくありたいっていう思いで書いた。

──とは言え、この曲で披露しているフロウはちゃんみなとしては新味を感じる手法ですが、今のラップ界ではオントレンドな手法ですよね。短い音節を三連符で続けるとか、間をたっぷり開けるとか。

そう。「ヤーヤーヤー」とか「エイ、エイ」みたいな、ああいうダルそうなラップはあまりやらないので、あえてそういう流行ってるフロウを取り入れてやってるんです。

──やっぱりバッドガールですね。ふてぶてしい(笑)。

あはは! だからちょっとリリックやフロウもナメてる感じなんです。「味がしないんですうー。助けてください。変なんですうー」って(笑)。