ヒャダイン×CASIO「CT-S200」|一生遊べる令和のカシオトーン

私の楽曲を使っていただけると

──ちなみに、この楽器に何か注文ってあります? 「ここがこうなってたらもっと楽しいのにな」とか。

なんでしょう……(しばし考え込む)。CT-S200にはすごくこだわりを感じるんですよね、この最低限に抑えた感じ。液晶窓がカラーじゃないあたりとか、昔のシンセを思い出しますもん。ボタンも少なくて、ベンドとかのホイールもつけず、スピーカーのサイズも極限までそぎ落としたんだろうなと。持ち歩けるようにグリップもついてたり、ボリュームもかなり出るし。いちゃもんのつけようが……。

CT-S200

──遊んで学べるキーボードとしては、ほぼ言うことがない?

1つあるとすれば、内蔵ソングはPD(パブリック・ドメイン)の曲が多いですよね。著作権フリーの。そこに、もしよかったら私の作った楽曲を使っていただけると(笑)。

──あははは(笑)。それなら、ヒャダインさんがカシオトーンをプロデュースするみたいなことがあってもいいんじゃないですか。

すでにできあがってる商品ですからね……。完成度が低ければ付け入る隙もあるんですけど。あ、1個言えるとしたら、ベロシティは欲しいかもしれない。そうするとピアノとかの音に強弱が付けられるので。

──なるほど。ただ、僕みたいに鍵盤を弾けない人間からすると、強弱がついちゃうのは逆に楽しく弾けない要因になりがちなんですよね。

あ、そうか! 確かに、強弱って一番ヘタがバレるし。そう考えると、入門機にベロシティはいらないのかも。その機能を外したのは、英断と言ってもいいのかもしれないですね。

鍵盤にこだわりはないです

──普段の曲作りにもキーボードを使ってらっしゃると思うんですけど、デバイスとしての鍵盤にこだわりはありますか?

正直、こだわりはあまりないんです。2004年ごろからずっと、打ち込み用とかじゃない普通の電子キーボードを使い続けてるんですよ。15年くらい一度も買い換えずに。ピアノと同じように低音の鍵盤ほど重くて高音ほど軽くなっていて、正直打ち込みには向いてないんですけど、まあ慣れちゃってるからそれでいいかなって。あ、でも88鍵ないとダメですね。ピアノ弾きなんで、やっぱり横幅を大きめに使いたくなっちゃう。

──最近はスマホやタブレットで打ち込みをやる人も多いですけど。

多いですよね、びっくりしちゃう。でも、それでできるなら全然ありだと思います。昔のコンピュータよりもiPhoneとかのほうが性能もずっといいわけですし。「画面が小さいから」とか「ほかの用途にも使うから」とかいうのは、まったくバカにする理由にはならないと思いますよ。

──ご自分で使う分には、やはり88鍵のキーボードが一番いい?

そうですね。コンピュータと88鍵キーボードの組み合わせに一番慣れてるんで、現時点でそれを変える気はないです。ワードとかエクセルですら、タブレットでやるのは苦手なんですよ。

──以前、ヒャダインさんがどこかのインタビューで「早く大量に曲を作れる秘訣は?」という質問に「鍵盤が弾けることです」と答えているのを読んだことがあるんですが、どういうことなのか詳しく聞いてもいいでしょうか。

僕、そんなふうに答えていましたか。それはおそらく、MIDIデータを入力するのにキーボードが一番手っ取り早いというだけのことだと思いますね。ステップ入力でチクチク入れていくより、リアルタイムで弾いちゃうほうがはるかに早いので。これがギターだったり弦楽器、管楽器ではそういうわけにいかないですから。

同期として鼻が高いです

──「カシオトーン」ブランドは1980年に生まれて、来年40周年を迎えるそうです。ヒャダインさんと同い年なんですね。

CT-S200とヒャダイン。

僕が生きてきた39年って、デジタル楽器が飛躍的に伸びてきた39年だと思うんですよね。少し前の時代に生まれたテクノという音楽が、80年代にバッと広がって。そんな中で、それまで非常に高価だった電子楽器をお茶の間でも使えるものとして定着させたのがカシオトーンだと思います。それからシンセサイザーが普及して、DTMが行われるようになってきて。

──音楽の作り方が変容していって、結果として音楽そのものも変容していきました。

デジタル楽器が急速に進化して、しかも安くなっていった。そういう時代をけん引してきた象徴的な存在がカシオトーンなんじゃないかなって。1980年生まれの同期として、なかなか鼻が高いですよ。

──同期として(笑)。黄金世代ですよね。

「松坂、ヒロスエ、カシオトーン」の世代ですから。

──あははは。そこは「松坂、ヒャダイン、カシオトーン」でいいと思いますけど。

いやいやいや、「松坂、ツマブキ、カシオトーン」で。