ヒャダイン×CASIO「CT-S200」|一生遊べる令和のカシオトーン

カシオ計算機より、軽量・コンパクトな電子キーボード「CT-S200」が発売された。初心者にも扱いやすいシンプルな操作系ながら、手軽に本格的なダンスミュージック演奏を楽しめる機能などを盛り込んだモデルで、かつて親しまれた「カシオトーン / Casiotone」の名を正式に復活させている。

音楽ナタリーでは、このCT-S200をヒャダインに試奏してもらう企画を実施。徹底的なまでの親しみやすさと狂気じみたマニア志向を併せ持つという点で、自身にも通づるであろうアティテュードを持つカシオトーンの最新機種を、彼はどう見たのか。じっくりと話を聞いた。

取材・文 / ナカニシキュウ 撮影 / 須田卓馬

インドでバカ売れするんじゃないかな

──ナタリーでは音楽以外の特集でヒャダインさんにご登場いただく機会が多いんですけど、今回はがっつり音楽です。存分にミュージシャンとしてお話しいただけたらと思います。

助かります(笑)。

CT-S200を試奏するヒャダイン。

──今日はカシオトーンの最新機種「CT-S200」を試奏していただきました。触ってみて率直にいかがですか。

もうね、一生遊んでられると思いました。こんなにボタンが少ないのに、やれることが多すぎて。「これが令和のカシオトーンか」と。昔のカシオトーンってボタンが多かった印象がありますけど、これはすごくすっきりしてる。シーケンスパターンにしても、ちょっと古くさかったりするのがカシオトーンならではの魅力でもあったんですが、この機種にはいろんなパターンのシーケンスやリズムが入っていて。

──現代ならではのプリセットも豊富です。

音色も400種類ぐらい入っていますけど、オーセンティックなカシオトーンの音も健在だったのがうれしかったですね。特徴的なリードの音とか、シンセストリングスの音とか。僕がとくに好きなのはボイスの音です。モーニング娘。の「LOVEマシーン」でイントロに使われている音みたいな感じの。(音色を選びながら)開発陣がすごくEDM好きなんだとわかる音色がちょいちょい混じってますね(笑)。

──クセが強いですよね(笑)。

はい。クセの強いシンセリードの種類がやたら多いです。普通はこんなに入れない(笑)。なぜかインド音楽のループとかもめっちゃ入ってて。

──世界に対応できますね。

インドの人口とかインド人の音楽好き度合いを考えたら、当然の仕様なのかもしれないですね。これ、もしかしたらインドでバカ売れするんじゃないかな。最大音量がどこまで出るか試してもいいですか?

──どうぞ。

(ボリュームをMAXまで上げる)うわ、めっちゃ出る! これならインド人の声量と戦えますよ。僕らの作る音楽って、どうしても日本市場だけを見てしまいがちなんですけど、楽器は世界で戦えるコンテンツですから。カシオさんにはガンガン攻めていってもらいたいですね。

音が鳴るということが楽しかった

──幼少期にカシオトーンをお持ちだったとか。

持っていました。シンセサイザーが家に来るまではカシオトーンばっかりいじっていましたね。1回コードを押さえると自動でリズムと伴奏を鳴らしてくれる機能を使って、それに合わせて右手でメロディを弾くみたいな。それで「コードってこういうものなんだ」と体で覚えていった気がします。最新機種にもその機能はちゃんと受け継がれてますね。

──その頃は、どんなふうに楽器と向き合っていましたか? たとえば「将来ピアニストになりたい」みたいな思いは……。

CT-S200

まったくなかったですね。

──音が鳴らせる遊びの道具みたいな。

そうですね。もちろんピアノは厳しめに習ってはいたんですけど、とにかく音が鳴るということがすごく楽しかった。

──プロになってからは、カシオトーンとの関わりはありましたか?

一度だけあります。たこやきレインボーの「尼崎テクノ」という曲を作ったとき、アレンジャーのCMJKさんに「初っぱなはカシオトーンの音を使ってください」ってお願いしたんです。ポンチャックっぽくしたくて。

──そんなに具体的でピンポイントなオーダーを。

カシオトーン特有の、リッチじゃない音が好きなんですよ。今って、昔のカシオトーンを再現したようなソフトウェア音源もあったりするんです。この独特の音が愛されている証拠だと思います。

DJ養成マシンになるのかも

──試奏の際、プリセットのパターンを組み合わせて簡単に演奏できる「ダンスミュージックモード」を、ものすごく楽しんでおられました。

これヤバくないですか? 「ダンス」っていったら普通はもうちょっとディスコ寄りだったりすると思うんですけど、まあそういうパターンも入ってはいますが、メインは完全にEDMとヒップホップなんですよ。めちゃくちゃ“今”じゃないですか。

CT-S200を試奏するヒャダイン。

──DJプレイのように楽しめるという。

そうですね。ドラム、ベース、シンセのパターンがいろいろ用意されていて。限定されたパターンではあるんですけど、その限定のされ方がDJ的だったりするんですよ。自由度がありすぎないのがいいのかなって。そのリズムパターンと重ねて遊べるように、特定の鍵盤にフィルインとかエフェクトが仕込まれてるんですけど、ちょっとした声ネタがアサインされていたりとか、こだわりがすごい。「なぜここに特化したんだろう?」という変態性が面白いです。

──普通に作ったらそうならないですよね。

完全に意図的だし、恣意的だし。声ネタを入れるとかって、ほとんどサンプリングパッドの感覚じゃないですか。これがきっかけで本物のパッドを買うような子も出てくるかもしれません。DJ養成マシンですよ。