音楽ナタリー Power Push - CASCADE
ひねくれ続けて20年 新作「XX」が示す独創スタイル
今年11月22日にメジャーデビュー20周年を迎えるCASCADEがニューアルバム「XX」(ニクロス)を完成させた。生々しいバンド感とエレクトロやテクノを融合させたサウンドメイク、カラフルかつポップなメロディ、ナンセンスな言葉遊びとシリアスなメッセージが混在した歌詞などが味わえる本作は、CASCADEの独創的なスタイルを改めて示す作品に仕上がっている。
音楽ナタリーでは今作のリリースに際してTAMA(Vo)、MASASHI(G)、HIROSHI(Dr)の3人にインタビュー。アルバム「XX」の制作裏話、CASCADEの音楽的なスタイルの変遷、そしてメジャーデビュー20周年を目前に控えて感じていることなどを語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 佐藤類
「20周年のアルバムを作ろう」みたいな気合いはない
──前作「Jam-packed Jam」はNATCHIN(SIAM SHADE)さん、黒柳能生(SOPHIA)さん、YUKKE(ムック)さん、白鳥松竹梅(氣志團)さん、人時(黒夢)さんなどゲストベーシスト7名を招いて制作されましたが、今回の「XX」はメンバー3人でガッチリ制作しています。その結果、CASCADEらしさが強調されたアルバムになったと思うのですが、制作前はどんなイメージを持っていたんですか?
MASASHI いつもそうなんですけど、「ライブでこんな曲があったらいいね」っていうイメージですね。新たに作った曲、すでにあった曲をまとめて聴いて、みんなでディスカッションしながら作っていった感じです。
HIROSHI そうだね。
MASASHI そのへんの流れはいつも通りでしたね。前作はサポートしてくれたベーシストのおかげもあって、すごくいいアルバムになって。そこから得たエナジーや勉強になった部分の影響で、今回はザクッとスパッとできたんですよ。作業はすごく早かった。「メジャーデビュー20周年のアルバムを作ろう」みたいな気合いもなかった気がしますね。
──デビュー20周年に対する思いはTAMAさんも同じですか?
TAMA 「あ、もう2時か」みたいに時間が経過しただけというか。特に意識することもなくて、気が付けばこれだけ時間が経っていたっていう。もちろん節目ではあるし、応援してくれる人に対しては「ありがたいな」という気持ちは持ってるんですけど。
HIROSHI うん。それ以外はあまり意識してないですね。
TAMA 5周年ライブのときも、すごく反対した気がするんですよ。「いちいちいいじゃん、そんなの」っていう。1カ月ずつ、1年ずつやってきただけだしなって。まあ、ファンの方たちと楽しめるのは大事なんじゃないかなとは思いますけどね。
──今回のアルバムも、今やりたいことを純粋にやっただけっていう感じですか?
TAMA そうですね。そのときどきで自分たちが盛り上がってる旬のモノがあるし、それをCASCADEというフィルターを通して放出しているつもりなので。
CASCADEの変わらない音楽性
──「XX」の制作前後は、どんなサウンドに興味があったんですか?
MASASHI そうですね……。僕は生のバンドサウンドも好きだし、テクノも好きで。ただそれを同時期に聴くことはあまりなくて、「テクノばっかり」とか「生のバンドものばっかり」っていう時期があるんですよ。で、最近はテクノばっかり聴いてたんですね。だからアルバムを作っていたときは「うわ! うわ!」って感じでしたね。
──「うわ!」っていうのは?
MASASHI 例えばHIROSHIくんのドラムにしても、1つひとつ「うわ、すごい!」っていう驚きがあって。「やっぱり生ドラムっていいな」とか、「バンドって楽しいな」って思いましたね、制作中は。デモを作ったときに想定していたドラムのフレーズがあるんですけど、それを超えるフレーズがいっぱい出てきて、自分としてはそれがすごく面白かったんです。まあ、実際に僕はドラムを叩いている現場にはいなかったんですけどね。歌詞が間に合ってなくて、別の部屋でずっと書いてたので。
HIROSHI 打ち込みの段階でドラムのフレーズは決まってるんですけど、生でやると違ってくるんですよ。音の鳴り方も変わってくるし、とりあえず自分が好きなようにやって、OKテイクが録れたら「親方(MASASHI)呼んで来て!」って確認してもらって。
──そのフレーズがMASASHIさんのイメージを超えるカッコよさだった、と。生のバンドサウンドとテクノ、エレクトロ系の音を融合させるスタイルは、デビュー当初から変わってないですよね。
HIROSHI そうですね。
MASASHI ハウスミュージックやテクノをあえて生のサウンドでやってみることもあるしね。
──そのスタイルはメンバーの皆さんの音楽的なルーツとも重なってるんですか?
MASASHI そうですね。好きですからね、そういうものが。1990年代の初めくらいに立花ハジメさんがテクノサウンドの上にギターを乗せてたりして(1991年リリースのアルバム「BAMBI」)、「おっ!」と思ったり。その頃から、自分もそういうことがやりたいと思ってたんですよね。洋楽ではSigue Sigue Sputnikとか。
──ダンスミュージックとロックを融合させたJesus Jonesが登場したのも同じ時期ですね。
MASASHI そうですね。
HIROSHI 懐かしい。
TAMA あと、Curveとかも好きだった。Jesus Jonesよりもダウナーな感じで。
MASASHI そういうものが根にあるんですよね、自分たちは。1990年代っていろんなジャンルの音楽が入ってきた時期だし、自然といろんな音楽が好きになって。そういう世代ですよね。そこにポップな感じだったり、踊りやすい音も加えていって……。
──それがCASCADEのスタイルにつながっていった、と。
MASASHI そうですね。
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収録曲
- 第三機械時代
- 百花繚乱 Part III
- アルパカライダー
- だるまさんがころんだ
- 失恋のテニスコート
- 引かれ者の小唄
- 童夢
- アマンテ
- Apocalypse XX
- STAR CHILD AIRLINE
- マハラジャラジャ
- 37度1分
CASCADE TOUR 2015 XXU
- 2015年11月13日(金)
大阪府 Music Club JANUS - 2015年11月15日(日)
愛知県 ell.FITS ALL - 2015年11月22日(日)
東京都 ラフォーレミュージアム六本木
CASCADE(カスケード)
TAMA(Vo)、MASASHI(G)、HIROSHI(Dr)の3人からなるバンド。テレビ朝日系で放送されていたオーディション番組「えびす温泉」への出演を機に注目を集め、1995年11月にアルバム「VIVA」でメジャーデビュー。1998年にリリースされたシングル「S.O.S ロマンティック」や「FLOWERS OF ROMANCE」のヒットを機に人気バンドの仲間入りを果たす。個性的なサウンドとカラフルなビジュアルで幅広い層に愛されるも、2002年に解散。その後メンバーは個々に音楽活動を行っていたが、2009年にTAMA、MASASHI、HIROSHIの3人で復活する。同年4月にミニアルバム「VIVO」、2010年5月にフルアルバム「メガラニカ」、2011年に2枚のアルバム「サディスティック・グミ」「マゾヒスティック・ガム」と精力的に新作を発表。2012年4月には過去曲のリメイクを含む新作「ヘタウマカウボーイズ」をリリースし、その後自身初の主催対バンツアーを開催する。メジャーデビュー20周年を迎える2015年に通算16枚目となるアルバム「XX」をリリース。