音楽ナタリー Power Push - CASCADE

ひねくれ続けて20年 新作「XX」が示す独創スタイル

音楽をなかなか辞められない

──では、この20年で変わったことと言えば?

HIROSHI(Dr)

HIROSHI なんでしょうね? ……あまり変わってないんじゃないかな。変わったところが思い付かないから。

MASASHI 自然な欲求でやりたいことをやってるだけだからね。

──機材が進化したくらいですかね?

TAMA うん、ホントにそういうことでしょうね。そのことによって自分たちがどう変わったかはわからないけど。

HIROSHI 最初の頃はMTRでレコーディングしてましたからね。

TAMA ヨンパチ(アナログのマルチトラックレコーダー「SONY PCM-3348」)ね。

MASASHI 1個1個の作業にすごく時間がかかってましたね。

──CASCADEの場合は打ち込みの音も多かったから、余計に手間がかかったでしょうね。

TAMA 当時のマニピュレーターの人に「このシンセ、どうやって入れてるんですか?」って聞かれて「それ、ギターでやってるんです」って言ったり。

MASASHI あったねー。ギターで作ったほうが早かったんですよ。ギターシンセじゃなくて、エフェクターを使ってシンセっぽい音にしてたんですけど(笑)。90年代はスタジオでいろいろ試すことが多かったけど、今は自宅で作業できますからね。音もすぐに作れるし、それをメンバーに送って、確認してもらって。90年代のやり方じゃないとできないこともあったと思うけど、アイデアをすぐに形にできるという意味では、制作はやりやすくなってますね。

HIROSHI そうだね。

MASASHI 今って機材の普及と進化で宅録をやる人が増えて、アマチュアとプロとの境目がなくなってるじゃないですか。それもワクワクするんですよね、個人的には。「うわ、こんなヤツがいるんだ?」ってことも増えてるし。

──そこは肯定的に捉えていると。

MASASHI(G)

MASASHI はい。以前、Blurと対談したことがあるんですけど、「ローランドって日本のメーカーでしょ? なのにYMO以降すごいバンドが出てこないのはどうして?」って言われて。そのときは「電気グルーヴさんもいるけどな……」って思ったんですけど。これからは、そういう状況も変わってくるんじゃないですかね。それはすごい楽しみ。

──新しいアーティストから刺激を受けることも増えるだろうし、そうなるとCASCADEの音楽もさらに発展しそうですね。

MASASHI うん、そうですね。音楽を作ってるときも聴いているときも新しい発見があるし……なかなか辞められないですね(笑)。作品ができればライブをやるたくなるし、「自分はこの曲すごく好きなんだけど、ライブでどんな反応が返ってくるかな?」って想像しながら作るのも楽しいし。

TAMA ……めったに僕はこういうことは言わないんですけど、MASASHIの話を聞いてワクワクしてきました(笑)。

トラブルが起きたときも楽しい

──ライブに臨むときのモチベーションについてはどうですか?

TAMA やっぱりいまだに緊張はしますよ。でも、終わったあとは「ライブは楽しいな」って思うんですよね。よくなかったライブでも、何がダメだったか考えることで新たな発見があるし。

HIROSHI ライブ中にトラブルが起きたときも楽しいですね、僕は。

TAMA いやあ、俺はイヤだな(笑)。

HIROSHI 例えばMASASHIくんのギターの弦が切れたり、ピックを落としたりしても、すぐに対処してくれるってわかってるじゃないですか。だから、こっちは勝手に盛り上がっちゃうんですよ。自分がダメだったときは、もちろん反省しますけど。

MASASHI 「いつもより緊張してるな」とか「普段と違う」みたいなこともすぐわかりますからね。

HIROSHI そういうときは必ずメンバーに言われますね。「何か違ってたでしょ?」って。

──その関係性は20年の間に培われたものですよね。11月13日からは「XX」のツアーも始まりますが、そこでもまた新しい発見があるだろうし。

CASCADE

TAMA 早くも緊張してるんですけどね(笑)。同時に「アレをやろう、コレをやっておこう」というところに意識が向かってる。

HIROSHI 今は個々で準備に入る時期ですからね。僕の場合はまずレコーディングのデータをライブ用に変えるところから。セットリストが決まったら、練習を始めて。

TAMA 俺も歌詞を頭に入れられるシステムが欲しい(笑)。そこだけはアナログというか、原始的ですからね。ギターの弦を替えるみたいに喉を取り換えることもできないし。

MASASHI そうだね(笑)。

──歌詞を覚えて、体調を整えてっていうライブの準備って、この先も活動していく上では続きますからね。

TAMA そこは乗り切るしかないですからね。今はいろいろ考えている時期ですけど、それこそがライブを楽しめる秘訣というか……。

MASASHI うん。早くライブをやりたいです。そう思えることが、一番いいことかな。

ニューアルバム「XX」 / 2015年9月9日発売 / 2916円 / アミューズソフトエンタテインメント / ASCU-6103
ニューアルバム「XX」
収録曲
  1. 第三機械時代
  2. 百花繚乱 Part III
  3. アルパカライダー
  4. だるまさんがころんだ
  5. 失恋のテニスコート
  6. 引かれ者の小唄
  7. 童夢
  8. アマンテ
  9. Apocalypse XX
  10. STAR CHILD AIRLINE
  11. マハラジャラジャ
  12. 37度1分
CASCADE TOUR 2015 XXU
2015年11月13日(金)
大阪府 Music Club JANUS
2015年11月15日(日)
愛知県 ell.FITS ALL
2015年11月22日(日)
東京都 ラフォーレミュージアム六本木
CASCADE(カスケード)

CASCADE

TAMA(Vo)、MASASHI(G)、HIROSHI(Dr)の3人からなるバンド。テレビ朝日系で放送されていたオーディション番組「えびす温泉」への出演を機に注目を集め、1995年11月にアルバム「VIVA」でメジャーデビュー。1998年にリリースされたシングル「S.O.S ロマンティック」や「FLOWERS OF ROMANCE」のヒットを機に人気バンドの仲間入りを果たす。個性的なサウンドとカラフルなビジュアルで幅広い層に愛されるも、2002年に解散。その後メンバーは個々に音楽活動を行っていたが、2009年にTAMA、MASASHI、HIROSHIの3人で復活する。同年4月にミニアルバム「VIVO」、2010年5月にフルアルバム「メガラニカ」、2011年に2枚のアルバム「サディスティック・グミ」「マゾヒスティック・ガム」と精力的に新作を発表。2012年4月には過去曲のリメイクを含む新作「ヘタウマカウボーイズ」をリリースし、その後自身初の主催対バンツアーを開催する。メジャーデビュー20周年を迎える2015年に通算16枚目となるアルバム「XX」をリリース。