音楽ナタリー Power Push - CASCADE
ひねくれ続けて20年 新作「XX」が示す独創スタイル
ライブを想定しての楽曲作り
──今回のアルバム「XX」にもダンスチューンがたっぷり収録されていますが、最近のEDMとはテイストが違いますよね。
MASASHI そうかもしれないですね。それはなんだろう、ニューウェイブの影響なのかな。作るときはあまり意識してないですけど、例えば打ち込みのキックの音をチョイスするときに「Cocteau Twinsってこんな感じだったよな」って思うこともあるし。今のEDMも好きですけどね。「ただバカ騒ぎするだけの音楽じゃないな」と思える作品もいっぱいあるので。
TAMA あとはライブを想定して作っているところもあると思います。4AD(Cocteau Twins、Bauhaus、Pale Saintsなどを輩出したイギリスのインディーレーベル)系の聴かせる曲とかも入れて、起承転結を作ったり。
MASASHI そこは3人の共通している部分というか、昔、一緒に遊んでるときに聴いてた音楽の影響もありますよね。「4AD系ね、なるほど」ってすぐにわかるというか。
TAMA 昔の話になっちゃいますけど、出会った頃はもっとテンポが遅い曲ばっかりやってたんですよ。
──ダウナーでダークな曲ということですか?
TAMA そう。でも「これだけじゃダメだな。自己満足で終わってしまう」って思って、もっとノリのいい曲もやるようになって。お客さんに喜んでもらうのも大事だし、ライブは楽しいほうがいいですからね。
MASASHI 今思い出したけど、僕らって練習が全然好きじゃなかったんです。スタジオでも「宇宙ってどこまであるんだろうね?」みたいなとりとめのない話ばっかりしてて(笑)。ライブのリハーサルも「めんどくさい。やだねー」とか言ってたんですけど、1回、スタジオでマイブラ(My Bloody Valentine)の曲をセッションしたことがあって。
HIROSHI 同じフレーズを1時間くらいやってたよね。「気持ちいいねー」って。
MASASHI そうそう。
TAMA でも、それだけじゃね(笑)。
──マニアックなバンドになっちゃいますからね。話はアルバムに戻りますが、「XX」は全体的にはポップでアッパーな曲が中心ですよね。
MASASHI 盛り上がる系の曲が多いかもしれないですね。歌詞に関して意識してたのは「ノッていこうよ」っていうだけじゃなくて、「盛り上がる系の曲の中で深いことを言いたい」ということなんです。そこはチャレンジしましたね。
──確かに今回のアルバムに入っている「第三機械時代」「Apocalypse XX」などの歌詞には、現代社会に対する批評性が感じられます。
MASASHI まあ、そんなにディープに語るような感じではないんですけど。世相を切るとかではなくて、ナイーブな部分も出せたらなっていう。そういうエッセンスも織り混ぜたかったんですよね。
歌というのは感情よりも技術
──歌詞に関してMASASHIさんとTAMAさんの間でやり取りはあるんですか?
TAMA ザックリですけどね。歌っているときに「この歌詞、ほかの言葉に変えてもいい?」とか。大幅に変えることはないです。
──歌詞の内容についてディスカッションすることもない?
TAMA 「どういうこと考えて書いてるの?」「この言葉の意味は?」とかですか? そこらへんに関しては……もちろん歌うときは曲に入り込んでますけど、「これ、どういう意味なんだろう?」って深く考えるみたいなことはないんですよ。それよりも楽しく歌えるということのほうがいいかなって。あとね、歌というのは感情よりも技術のほうが大事だと思ってるんです。そっちのほうがちゃんと伝わるかもしれないなって。
──その考え方にも、皆さんのルーツからの影響があるのかもしれないですね。特にイギリスのニューウェイブの曲は感情を排した感じのボーカルが多かったし。
MASASHI あ、そうですね。洋楽をずっと聴いてたこともあって、(歌詞の)意味がわからないほうが好きなんですよ。日本語だと意味がわかるから、そこでさらに熱く歌われるのはちょっと……というのはあるかも。
──「アルパカライダー」の歌詞はどうなんですか? サビで「田中 田中 田中」と連呼するシュールな内容ですが、「これはさすがにどうなの?」みたいな話にはならない?
TAMA ならないです(笑)。「田中さんの歌なんだな。あ、佐藤さんもいるのか」というくらいで。
MASASHI そこはいい感じで意思の疎通ができているのかも。TAMAちゃんが嫌がって、僕が「どうしてもこの歌詞で歌ってほしい。頼む!」みたいなことも一切ないですから。
HIROSHI 20年間、1回もないね。「これはできない」っていうのは。
TAMA まあ、録る前に選曲会をやってるからね(笑)。
「何これ?」のほうがワクワクする
──「XX」というタイトルは、20周年とリンクしてるんですよね?
HIROSHI あ、そうです。さっきも言ったようにレコーディングをやってるときは全然意識してなかったんですけど、スタッフから「今年デビュー20周年じゃない?」という話があって、「“20”に引っ掛けられる言葉ってなんだろう?」って考えて。「X」は数字の10という意味もあるから、それを並べてみたらどうだろうと。最初は読み方も決めてなかったんですけど、そのままだとレコードショップの人とか、インタビューしてくれる人が困るよなって思って、“ニクロス”という読み方にしました。
──タイトルの付け方も、すごくフラットですよね。20周年を意識しないで制作が始まったのに、周りの方から「20周年ですよ」と言われると、それに関連したタイトルを考えるっていう。
MASASHI フラットなのかな? まあ、気負いはまったくないし、コンセプトも決めてないですからね。今回のタイトルにしても、最初は「Xが2つ並ぶって、カッコいい」って言ってただけだし(笑)。
TAMA タイトルっていつも時間がかかるんですよ。
──テーマもコンセプトも決めてないから、当然そうなりますよね。
MASASHI ひねくれてるから、「LOVE」みたい直球のタイトルは恥ずかしいし。「何これ?」っていうほうがワクワクするんですよね。
──ひねくれてると言えば、CASCADEってどこかのシーンに属したことないですよね。いつも少しだけ違う場所にいるイメージもあって。
TAMA CASCADEが好きで独自にマイペースにここまでやってきました。
MASASHI ただ、1つのシーンの中にいて、ほかのバンドとつるんでたことはないですね。対バンツアーとかもあまりやったことないし。そのスタンスは変わってないのかも。
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収録曲
- 第三機械時代
- 百花繚乱 Part III
- アルパカライダー
- だるまさんがころんだ
- 失恋のテニスコート
- 引かれ者の小唄
- 童夢
- アマンテ
- Apocalypse XX
- STAR CHILD AIRLINE
- マハラジャラジャ
- 37度1分
CASCADE TOUR 2015 XXU
- 2015年11月13日(金)
大阪府 Music Club JANUS - 2015年11月15日(日)
愛知県 ell.FITS ALL - 2015年11月22日(日)
東京都 ラフォーレミュージアム六本木
CASCADE(カスケード)
TAMA(Vo)、MASASHI(G)、HIROSHI(Dr)の3人からなるバンド。テレビ朝日系で放送されていたオーディション番組「えびす温泉」への出演を機に注目を集め、1995年11月にアルバム「VIVA」でメジャーデビュー。1998年にリリースされたシングル「S.O.S ロマンティック」や「FLOWERS OF ROMANCE」のヒットを機に人気バンドの仲間入りを果たす。個性的なサウンドとカラフルなビジュアルで幅広い層に愛されるも、2002年に解散。その後メンバーは個々に音楽活動を行っていたが、2009年にTAMA、MASASHI、HIROSHIの3人で復活する。同年4月にミニアルバム「VIVO」、2010年5月にフルアルバム「メガラニカ」、2011年に2枚のアルバム「サディスティック・グミ」「マゾヒスティック・ガム」と精力的に新作を発表。2012年4月には過去曲のリメイクを含む新作「ヘタウマカウボーイズ」をリリースし、その後自身初の主催対バンツアーを開催する。メジャーデビュー20周年を迎える2015年に通算16枚目となるアルバム「XX」をリリース。