ナタリー PowerPush - BUMP OF CHICKEN

音楽を作る喜びと4人の絆から生まれた傑作アルバム「COSMONAUT」

曲を生もうとしても生まれない、生理現象のように生まれるもの

──藤原さんはいろんな音楽に接してきたと思うんだけど、自分の琴線に触れたすべての音楽を平等に受け止め、活かし続けているんじゃないかな。それを丁寧に昇華して自分たちだけの歌を生んでいるような気がする。

藤原 どうなんですかねえ。

直井 でもね、藤くんを見ていて思うんですけど、彼はいつも新しい音楽に手を伸ばしている感じでもないんですよね。ただひとつ言えることはあって。中学くらいのときに升くんが言っていたんですけど、「藤くんは音楽人間だ」って。ああ、そういえばそうだと思った。道を歩いていてもずっと歌ってますし、ずっとリズムを刻んでるんですよ。何拍子かよくわからないアフリカンビートみたいなやつを(一同笑)。

 それがアフリカンかどうかもわからないんですけど(笑)。

直井 でも、なんか民族的な気持ちになるっていう(笑)。

 何かを模倣しているわけではないんだよね。

直井 そう、だからそのリズムの根源がわからない。で、スタジオにいれば狂ったようにずっとギターを弾いてるんですよ。取材のときもインタビューがない時間はアコースティックギターを持って弾いてるし。

──音や楽器が身体の一部なんでしょうね。音楽と一緒に呼吸しているような人というか。

直井 うん。そんな人に会ったことないんですよね。だから、藤くんが曲を生もうとしても生まれない、生理現象のように曲が生まれるというのをメンバーはすごく理解できるんです。

藤原 なんか恥ずかしくなってきた……! でも、これだけそんなふうに見てくれていてうれしいです。だって、歩きながらずっと歌ってるやつがいたら、気持ちわりいなって離れると思うもん(一同笑)。そう思わずにそばにいてくれているのがうれしいですよね。

 僕たちにとっての藤くんは、昔からそういう人間だったので、改めてこうして言葉で人物像を語っていくとすごく変なんですよね(笑)。

「三ツ星カルテット」は今のBUMP OF CHICKENのことを意識した曲

──アルバムで最後に生まれた曲は、オープニングナンバーの「三ツ星カルテット」なんですよね。アルバムのガイド的な役割を担っていて、さらにBUMP OF CHICKENというバンドの存在そのものが曲のテーマになっているような感触があって。この曲はどんな思いで書いた曲ですか?

藤原 これ、なんで書いたんだろう……。確かに「三ツ星カルテット」はめちゃめちゃ今のBUMP OF CHICKENのことを意識していて。バンドの曲を書こうというわけではなかったんですけど、この曲を書く前にスタジオで、熱っぽく自分たちのことをみんなで話し合うような時間があって。その次の日にポコンと生まれた曲なんです。

──この曲のイントロが鳴った時点で、このアルバムは特別なものだと予感させる何かがある。藤原さんならではの「アルペジオの妙趣」が躍動している。

藤原 ありがとうございます。最初にこのイントロのアルペジオをずっと弾いていて。弾いているうちに曲ができたんですよ。だから、このイントロのアルペジオがそのまま曲のテーマにもなっていて。やっぱり僕は、ギターの奏法の中でもアルペジオがすごく好きなんですね。アルペジオで表現できることは、和音もあるし、メロディもあるし、リズムもある。全部表現できるじゃないですか。それは、ストロークにはないもので。

──イコール、音楽の豊かさを強く感じることができる。

藤原 うん、そうですね。

──ゴスペルの色合いが添えられている「angel fall」は、鎮魂歌と生命讃歌が同時に響いているような感触があります。

藤原 この曲については……ザックリとさせておいてください……。焦点が当てにくい曲なんですよね……(笑)。

──全面的にリスナーの想像に委ねたい?

藤原 そうなんです。音の話はできるんですけどね。僕がハネもの系の曲を書きたいなと思っているときに、プロデューサーから「ゴスペルを書いてくれ」というリクエストをもらって。その両方を再現しようと思って作ったんです。

──「イノセント」は“BUMPと歌とリスナー”の関係を描き切ったなと思いました。

藤原 ふふふふ。なるほど。この曲は、プロデューサーからのリクエストもなく、最初はギターで白玉コードをボローン、ボローンって弾いていて。なんか、音符って楽しいなと思ったんですよね。こういう音1つひとつに意味をつけていくのはミュージシャンであり、リスナーであり。僕はどっちの立場も経験できますけど、音符に意味をつけていくのは音符自身じゃないなと思って。そういう気持ちがそのまま歌になったんです。

ニューアルバム「COSMONAUT」 / 2010年12月15日発売 / 3059円(税込) / TOY'S FACTORY / TFCC-86347

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CD収録曲
  1. 三ツ星カルテット
  2. R.I.P.
  3. ウェザーリポート
  4. 分別奮闘記
  5. モーターサイクル
  6. 透明飛行船
  7. 魔法の料理 ~君から君へ~
  8. HAPPY
  9. 66号線
  10. セントエルモの火
  11. angel fall
  12. 宇宙飛行士への手紙
  13. イノセント
  14. beautiful glider
BUMP OF CHICKEN(ばんぷおぶちきん)

藤原基央(Vo,G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって、1994年に中学3年の文化祭用バンドとして結成。高校入学後に本格的な活動をスタートする。地元・千葉や下北沢を中心にライブを続け、1999 年にインディーズからアルバム「FLAME VEIN」を発表。これが大きな話題を呼び、2000年9月にはシングル「ダイヤモンド」で待望のメジャーデビューを果たす。その後も「jupiter」「ユグドラシル」といったアルバムがロックファンの熱狂的な支持を集め、2007年には映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」主題歌に起用されたシングル「花の名」を含むメジャー3rdフルアルバム「orbital period」をリリース。2008年には全国33カ所41公演、22万人動員の大規模なツアーを成功させている。