BRIAN SHINSEKAI特集 第5回|BRIAN SHINSEKAI×ROLLY 「君の存在は今や希少」先輩が語るBRIANの魅力

ヒーターの効いた車の中でPet Shop Boysを聴いているよう

ROLLY アルバム「Entrée」、聴かせてもらいましたよ。いい意味でだけど、まずこのタイミングで“デビューアルバム”って言っちゃう厚かましさがいいね。

BRIAN 約10年やってますからね(笑)。

左からBRIAN SHINSEKAI、ROLLY。

ROLLY 3度目のデビューでしょ? そうやってルックスや音楽性をどんどん変えていくのも、やっぱりデヴィッド・ボウイ的だよね。アルバムジャケットもいい。松尾清憲がデヴィッド・シルビアンっぽいポーズを取ってる感じと言うか……伝わらないか、この例え(笑)。そう言えば僕、昔松尾清憲さんが大阪のバナナホールでライブをやったときに観に行ったことがあって。メガネのギタリストの人が素晴らしかったから、スタッフの人を捕まえて「おたくのギタリストはすごい。ぜひ会わせてくれ」って言ったんだよ。「何言ってんだ!」って叩き出されたんだけど、不屈の闘志でダストシューターを通って楽屋までたどり着いて、「あなたのギターは最高だ! 僕もあんなふうにギターを弾きたいと思ってる」って自分のデモテープを渡したんだけど、その人がムーンライダーズの白井良明さんだったんだよね。その後、すかんちのデビューアルバムを白井さんにプロデュースしてもらうことになるっていう。

BRIAN そうだったんですね!

ROLLY それはいいとして(笑)、アルバム「Entrée」の音はグラムロック時代とは全然違うよね。すごくオシャレ。

BRIAN 曲を作り始めた頃に戻った感覚もあるんですよ。ピアノで曲を書いて、キーボードでリズムを打ち込むっていうことを1人でずっとやってたので。最初は70年代後半のデヴィッド・ボウイの“ベルリン3部作”(1976~79年にデヴィッド・ボウイとブライアン・イーノが共同制作した3枚のアルバム)みたいな雰囲気の曲を作ってたんですよね。

ROLLY なるほど。このアルバムを聴いていると、冬の情景が思い浮かぶんだよね。外気温はすごく低いんだけど、自分はヒーターの効いた車の中にいて、ドライブしながらPet Shop Boysを聴いているような気持ちになりました。

BRIAN ありがとうございます。確かにPet Shop Boysも意識してましたね。あと、ちょっとテクノが入ってきた頃のSparksだったり。そこに日本の歌謡曲的な要素を加えてポップに表現したのが今回のアルバムですね。

ROLLY その感じは1曲目(「首飾りとアースガルド」)から出てるよね。冒頭に出てくるリフもクセになるし、すごくいいと思う。しかもセルフプロデュースなんでしょ?

BRIAN はい。演奏、ミックスまで全部自分でやってます。

ROLLY 素晴らしい。全体的にちょっと懐かしいし、1980年代の雰囲気もあるよね。80年代の音って、ホントにきてるのかな?

BRIAN SHINSEKAI

BRIAN 今はどうかわからないですけど、個人的には80年代後半のサウンドがしっくり来ていて。

ROLLY 流行って面白いよね。僕は1963年生まれだから、1970年代はばっちり知っていて、パンク、ニューウェイブ、テクノなんかもリアルタイムで体験していて。いろんな流行があったけど、今は繰り返してるからね。ファッションやメイクもそうでしょ。バブルの時代に太眉毛と赤い口紅が流行って、「こんなダサいメイク、二度と来ないだろうな」と思ってたら、最近、ちょっと戻ってきて。

BRIAN そうですね(笑)。

ROLLY 70年代のロンドンブーツもそうだよね。いきなり話が飛ぶけど、「ハイスクール!奇面組」というマンガに事代作吾先生というキャラクターが出てきて、その人はブーツカットのジーンズとロンドンブーツという格好なわけ。つまり80年代において、そういう格好はもっともダサかったんだ。僕が子供の頃、女の人はみんな付けまつ毛だったけど、やっぱり80年代には「70年代はもう二度と流行らない」と思われていて。すかんちはそういう時期にデビューして、バサバサの付けまつ毛とロンドンブーツで登場したんだよ(笑)。

気持ちよく踊れるように作ってあるけど、深い部分も感じ取ってもらえたら

ROLLY BRIAN SHINSEKAIのアルバムは、今の時代にもピッタリだし、すごくいいよね。このアルバムはどういう人に聴いてほしい?

BRIAN 「こういうジャンルが好きな人に聴いてほしい」ということではないんですよね。僕はグラムロックを経由してダンスミュージックにたどり着きましたが、それは自分の内面的なものを外に転じるための方法なんです。だからビート、サウンドはハッピーなんだけど、歌詞には人生に直結するようなことも描いていて。ライトに踊りたいという人は、表面的な部分だけを楽しんでもらえればいいと思うんですよね。気持ちよく踊れるようにも作ってあるので。ただ、深い部分にはもっといろいろなものが込められているので、そこも感じ取ってもらえたらいいなと。

ROLLY 君は本当に映画「ベルベット・ゴールドマイン」のブライアン・スレイドみたいな人だね! ライブについてはどう考えてるの?

BRIAN ライブではフロントマン然としていたいんですよね。DJみたいな感じではなくて、ちゃんとマイクを持って歌いたいし、アグレッシブな雰囲気でやりたいと思っているので。デヴィッド・ボウイ、プリンスもそうですけど、僕が憧れてきたアーティストも、ライブではフロントマンとして存在していましたから。

ROLLY すごくいいと思う。ライブではグラムロック時代の曲は歌わないんだよね?

BRIAN そうですね。

ROLLY そこも潔いね。このタイミングで次の変身を考えてるとしたら、ちょっと怖いけど(笑)。

BRIAN 今は考えてないです(笑)。アーティストとしての世界観、イメージをある程度決めてから制作に入ったのは、今回が初めてなので。

ROLLY

ROLLY 今後もこのスタイルで活動するということだね。ただ、その中にアンニュイでウジウジしたBRIANくんがいると思うと、なんだかゾクゾクしちゃう(笑)。

BRIAN ははははは(笑)。

ROLLY デヴィッド・ボウイもプリンスも内面はかなり複雑だったはずだから、それでいいと思う。ただ、もしかしたら君は対談相手を間違えたかもしれない。もし僕が君のことをまったく知らなかったら、アルバムジャケットのビジュアルを見て「デリケートでカッコいい青年なんだろうな」ということで話を進めたのに……。

BRIAN 大丈夫です(笑)。

ROLLY よかった(笑)。話は戻るけど、BRIAN SHINSEKAIのBRIANって、どこのBRIAN?

BRIAN (笑)。誰か1人ってことはないんですけど、あるとき自分のCDラックを見てたら、「B」の欄がすごく多かったんですよ。ブライアン・フェリー、ブライアン・イーノ、ブライアン・メイ、あとはブライアン・アダムスとか。

ROLLY そうなんだね。ちなみにブライアン・アダムスって、十代のときにグラムロックのバンドをやってたの知ってる? まだ声がキンキンに高くて、それもめちゃくちゃカッコいいよ。

BRIAN そうなんですね! 

ROLLY で、SHINSEKAIのほうは? 僕は関西人だから、どうしても通天閣を思い出しちゃうんだけど。

BRIAN 以前は「ブライアン新世界」名義でしたからね。これは(アントニン・)ドヴォルザークの「新世界より」から来てるところが大きいです。

左からBRIAN SHINSEKAI、ROLLY。

ROLLY あ、そうか。アルバムの曲(「2045(Theme of SHINSEKAI)」)で「新世界より」のメロディが出てくるよね。

BRIAN そうなんですよ。

ROLLY 本当にいいアルバムだと思います。これがすごく売れて、君が世界的なポップスターになってMadison Square Gardenでライブをやるときは、ぜひ楽屋に訪ねていくよ。そのときは僕のデモテープを受け取ってくれ!(笑)

BRIAN SHINSEKAI「Entrée」
BRIAN SHINSEKAI「Entrée」

2018年1月24日発売
Victor Entertainment / AndRec

Amazon.co.jp

iTunes

収録曲
  1. 首飾りとアースガルド
  2. TRUE/GLUE
  3. 東京ラビリンス ft. フルカワユタカ
  4. FAITH
  5. ゴヴィンダ
  6. バルバラ
  7. ルーシー・キャント・ダンス
  8. CICADA
  9. クリミアのリンゴ売り
  10. Loving the Alien
  11. 2045(Theme of SHINSEKAI)
  12. トゥナイト

プレイリスト

BRIAN SHINSEKAI(ブライアンシンセカイ)
BRIAN SHINSEKAI
2009年、17歳のときにブライアン新世界名義で出場した「閃光ライオット」でファイナリストに。2011年に1stミニアルバム「LOW-HIGH-BOOTS」、2012年に2ndミニアルバム「NEW AGE REVOLUTION」を発売した。2013年にはバンドBryan Associates Clubを結成してライブ活動を展開。2016年11月に活動を休止したのち、2017年9月に新プロジェクトとしてBRIAN SHINSEKAIを始動させた。2018年1月にビクターエンタテインメントよりデビューアルバム「Entrée」をリリース。その収録曲をアルバムの発売に先駆けてサブスクリプションサービスで順次先行配信するという試みで話題を集めた。
ROLLY(ローリー)
ROLLY
大阪府高槻市出身のグラムロッカー。バンド・すかんちのフロントマンとして、1990年にメジャーデビュー。希代のビジュアルと、ポップで親しみやすい音楽性で人気を博す。1996年のバンド解散後は、ソロアーティストとしてのキャリアをスタート。音楽活動にとどまらず、ミュージカルやバラエティ番組、CMなどさまざまな分野でその才能を披露している。2008年には佐藤研二、高橋ロジャー和久と共にバンド・The MANJIを結成。2017年7月に約8年ぶりにして通算3枚目のオリジナルアルバム「TRIPLED」を発売した。またROLLYは2月にOrquesta Libre+ROLLYとして、横浜・MOTION BLUE YOKOHAMAでライブを行う。

ROLLY ライブ情報

Orquesta Libre+ROLLY
with Special Guest 武田真治&太田裕美
「Rock Opera Week End」
  • 2018年2月24日(土)神奈川県 MOTION BLUE YOKOHAMA
    [1回目]OPEN 15:45 / START 17:00
    [2回目]OPEN 18:45 / START 20:00
    出演者 Orquesta Libre+ROLLY / 武田真治
  • 2018年2月25日(日)神奈川県 MOTION BLUE YOKOHAMA
    [1回目]OPEN 14:45 / START 16:00
    [2回目]OPEN 17:45 / START 19:00
    出演者 Orquesta Libre+ROLLY / 太田裕美