BiSが「スモーキン・ビリー」「赤いタンバリン」など邦ロックの名曲を歌う!“いろんなBiS”詰まったカバーアルバム

BiSがグループ初のカバーアルバム「BiS DiVE into ROCKS」をリリースした。今作にはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTやBLANKEY JET CITY、NUMBER GIRLなどのロックバンドが1990年代から2000年代前半に発表した楽曲のカバーを全11曲収録。BiSは時代を彩った珠玉の楽曲群を独自のスタイルに落とし込み、生まれ変わらせた。

カバーアルバムをリリースするにあたって、研究員と呼ばれるBiSファンや、ロックミュージックのファン、そしてアイドルがロックバンドの楽曲をカバーすることに抵抗を感じる音楽ファンにもこの作品が届くよう、オリジナルアーティストを研究しつつレコーディングを行ったというBiSの4人に話を聞いた。

取材・文 / 田中和宏撮影 / 中野修也

「BiS DiVE into ROCKS」収録曲 / アーティスト

  • スモーキン・ビリー / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
  • MAGIC / HAWAIIAN6
  • 赤いタンバリン / BLANKEY JET CITY
  • PMA(Positive Mental Attitude)/ KEMURI
  • NUM-AMI-DABUTZ / NUMBER GIRL
  • BASIS / BRAHMAN
  • GOOD GIRL / THE MAD CAPSULE MARKETS
  • 浮き雲 / eastern youth
  • Fantasista / Dragon Ash
  • Eric. W / the band apart
  • IMAGINE? / BEAT CRUSADERS

中野サンプラザ単独公演を終えて

──BiSは現在の第3期が始動して約2年が経ち、最近では10月に東京・中野サンプラザホールでのワンマンライブ「BiS STiLL STONE AGE」を定員いっぱいにして開催しました(参照:BiS、2000人の研究員集めた中野サンプラザ単独公演で改めて宣言「BiSは絶対、武道館に立ちます」)。ライブを終えたあと、どんな気持ちでした?

チャントモンキー ライブ後、4人とも最初に口から出てきた言葉は「もっとできた」でした。

トギー 会場の規模に圧倒された感じはあります。BiSでは会場の空気を作れなくて、研究員(BiSファンの呼称)と、演出を含めて準備してくれたスタッフさんに助けられた。いいと思ってもらえたのなら、それはそっちの力が大きいと思います。正直なところ、自分たちにとって一番いいと思えるライブではなかったです。

イトー・ムセンシティ部 もっと大きい会場で歌えるようになったとき、このままじゃ絶対ダメです。でも、規模を拡大していきたいと思う中で、ステージをもっと自由に使うことに集中していたら、私なら歌やダンスがブレるかもしれない。つまり、いろいろと不足していたということです。

BiS

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トギー ライブ後にそんな話をしていたら「BiSHも最初はできてなかったよ」と渡辺(淳之介 / WACK代表)さんから言われたんです。でも今回、私たちは大きなステージに立つのが初めてじゃなかったから。悔しかったけど、がんばろうと思いました。

チャント 中野サンプラザでいろいろ気付きがあったので、それ以降のライブが今のところ右肩上がりになってはいます。その感覚は4人とも持ってます。

トギー ね。何より、満員のお客さんを見られたのがLIQUIDROOM(2020年2月開催の全国ツアー「“LIVE DAM Ai” presents STAND BY BiS」最終公演)以来だったので、うれしかったです。

──これまでの経験が自信につながっている?

トギー 気持ちだけは。だからと言って、「自分たちはすごいんだぞ」と思うことはまったくないですね。

イトー うん。でも「BiSがいいから、BiSとして生きていく」という気持ちは、今のこの4人が自信を持って言えることです。

チャント 今のBiSのいいところは、ライブが熱いところです。実力で勝負してこなかったというのが正直なところで、ここまで気持ちだけでやってきました。ただ、気持ちをいかにパフォーマンスに込めるかで言ったら、誰にも負けないぞ!と。そういう自信はある。

トギー 自分たちに対する自信はある。でも実力もそうだし、売れてるかを考えると、まだまだだなって。

BiS

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──BiSにとって大切なのは、本質的には先ほどの「気持ちをいかにパフォーマンスに込めるか」に集約されてると思います。「ライブが熱い」の部分については、がんばりすぎても暑苦しいというか、お客さんがついてこない状況になってしまうのかなと。そのバランスが難しい中、BiSはいろいろ修正しながら成長しているような。

トギー 確かに暑苦しい時期もありました(笑)。自分たちだけ熱くなりすぎて、お客さんを巻き込めなかったライブをしたのが、3月のWACKツアーの東京公演(Zepp Tokyoで行われた「TO BE CONTiNUED WACK TOUR」のセミファイナル)あたりです。

──「BiSHをぶっ殺します」と言った日のライブですね。

トギー そうです。そのときに空回りました(参照:WACKツアー東京1日目で4組が白熱競演、BiSは楽屋で闘志メラメラ「BiSHをぶっ殺します」)。

ネオ・トゥリーズ あのときはお客さんのことを考えるライブというよりも、「いいライブをしてやるぞ」という気持ちが強すぎて一方的なものになってしまった。熱さで言えばもちろん熱かったと思うし、気合いが入ってるのは伝わったと思うけど、あのときはそれだけになっていたのがよくなかった。

イトー ライブを終えたあと、手応えが正直なかったし、「なんか違ったかも」って。そんなタイミングで渡辺さんからその点を指摘していただいたので、違和感の正体がわかりました。過去にも同じことをしていた可能性があるけど、気付けてよかった。違和感に気付かなかったら、また同じことを繰り返すだろうから。

BiS

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──プレッシャーとの向き合い方が変わったという感じもします。

ネオ 以前はプレッシャーをマイナスに捉えていたことは確かにありました。でも、なんでもやってみてできないことはないし、やり続けている限り、可能性は無限大です。

イトー 今年最初のツアー(1、2月に開催された「KiLLING IDOLS TOUR」)の頃と比べたら変わったかな。ドキュメンタリー(5月発売のシングル「TOUCH ME / LOVE」の初回限定盤Blu-rayに収録)でも触れてますけど、あのときはまだ全然努力が足りてなかった。でもあのツアー中のメンバーやスタッフさんとのやり取りを経て、それまで以上に苦手としていることに向き合えるようになりました。ネオが言ったとおり、体力にしても歌にしても努力したらなんでも高められると思えたし、努力はすればするだけいいと思えるようになって、向上心が前より出てきました。自信満々にはなれない性格ですけど、上を目指していく中でできないことがあっても、もう昔みたいには落ち込まない。

チャント 振り付けを考えてるのが私で、前までそれがすごくプレッシャーになってたんですけど、1人で抱え込むことが減りました。最近は8割くらいのところでメンバーに共有して、客観的な意見を大切にできるようになってきて。自分がいいと思ってるものと、客観的な意見を合わせたらよりよいものが作れるはずだし、完成形が一番自信のあるものになればいい。あと、ネオとティ部のさっきの話からも、みんなが前より前向きになれていることが伝わってきてました。そんな言葉を今、聞けてうれしかった(笑)。

ネオ ははは。

イトー ありがとう。

BiS

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──トギーさんはどうですか?

トギー 私は体力のことで悩んでいたんです。体力はつけないほうが何かに挑戦したときに限界突破できるんじゃないかって(笑)。例えば100kmマラソン対決があったとしたら、勝つために準備するのは大事。でもめちゃくちゃがんばって限界を突破していく姿を見せれるのは、準備しないほうだと思って。私は「限界は突破したいけど、限界突破できなくてうまくいかないところを見せたくない」という考え方なので、体力作りをがんばっちゃって、準備しちゃうんです。「thousand crickets」の曲中にスクワット対決があるときもそうだし、「101回目のカーテンコール」(楽曲「CURTAiN CALL」を101回踊り続けるという動画)のときもそう。100回連続で踊ることが決まってから、50回連続で練習してた。「体力がすごい」と思われるんですけど、準備をしただけなんです。気合いだけでやったほうが限界突破できると思うから、今も迷ってます。力を全部出し切りたい、でもいつも準備しちゃうから本気でやっても出し切れないときがあって。

イトー 死ぬ気でやってるのに死ねないみたいな。でも200回踊るって言われてたら100回練習していたわけでしょう?

トギー たぶんそうなる(笑)。いまだにどっちがいいかは葛藤してるんですけど、体力作りをがんばってます(笑)。

──腹筋とかもしてるんですか?

トギー お腹はぽよぽよです(笑)。

BiS

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90年代に青春を過ごしたロックファンに贈る

──今回、BiS初のロックカバーアルバムを作ることになった経緯として、バンド編成で出演予定だった「ARABAKI ROCK FEST」や、夏に行ったバンド編成の東北ツアー「ARABAKI×BiS GIP! -GREAT iDOL PURiTANS-」の流れがあると思います。ライブのバンドメンバーはヒダカトオル(G / THE STARBEMS)、津田紀昭(B / KEMURI、THE REDEMPTION)、RONZI(Dr / BRAHMAN、OAU)という豪華な布陣で、今作にもBEAT CRUSADERS、KEMURI、BRAHMAN楽曲のカバー音源が収録されています。ロックのカバーアルバムを出す意味を皆さんはどう捉えていますか?

トギー カバーすることで、それらのバンドを好きな層方々にも気にかけてもらえる可能性があるのは、すごく意味のあることですね。もちろん私たちのカバーを受け入れてくれる人もいれば、否定的な人もいると思いますが、まずは聴いてもらいたいです。

イトー ロック好きの方からしたら「誰?」って思うはずですし、「リアルタイムを知らないでしょ?」とも思われるでしょうね。でもそういう人たちにとっての青春ソングを改めて楽しんでもらいたいです。オリジナルはもちろん、私たちのカバーも。