ナタリー PowerPush - BOOM BOOM SATELLITES

15周年で見せたさらなる進化 約3年ぶりシングル「BROKEN MIRROR」

新しいことにチャレンジした楽曲にしなきゃいけない

──今回のシングル「BROKEN MIRROR」 は「機動戦士ガンダムUC」の主題歌ですが、これはタイアップの話があって作り始めた曲なんですか?

中野 ゼロから作ったわけじゃなく、楽曲のモチーフがいくつかあった中から、今回のタイアップを念頭に作り上げていった感じですね。それまでの主題歌の流れが日本のポップス然としたものだったり、ポップス寄りのロックっぽいものだったりしたんで、ここでその流れを断ち切るわけじゃないですけど、本格的にハードなギターサウンドから始めたら面白いんじゃないかって。僕たちに依頼をしたってことは、きっとこれまでとは違うものを求めてたからだと思うんですよ。だったらこのぐらい攻めなきゃって。やっぱりタイアップとはいえ自分たちの曲だし、ファンにとっても久しぶりの新曲になるわけだから、ちゃんと自分たちの中で新しいことにチャレンジした楽曲にしなきゃいけないなって。ただ、この「機動戦士ガンダムUC」が持ってる世界観って、自分たちとそんなにズレがなくて、そこをすり合わせる上で悩むようなことはほとんどなかったですね。

──いろんな先入観を持ってる人はいると思うんですけど、「機動戦士ガンダムUC」って、「ガンダム」の中でも大人向けの作品で、非常に硬質な作品ですよね。

川島道行(Vo, G)

中野 そうですね。基本的にロボットアニメの形を借りたヒューマンドラマで、戦争というシチュエーションの中に置かれている若者の葛藤を描いた作品で。子供のときに観たファーストガンダムの、わかり合いたいけどわかり合えないみたいなテーマにはすごく共感したし、今回「UC」を観て、それがいまだに続いてるんだなって。なぜかと言うと、きっとそれって実社会でもずっと解決できないテーマだからだと思うんですよ。そういう細かい心理描写を誠実にやろうとしている作品なので、曲を付けることには全く違和感なく、むしろすごく光栄でしたね。

川島 僕も「ガンダム」は昔から好きで、ファーストガンダムはもちろん、「逆襲のシャア」やその後のOVAのシリーズも観てるんですよ。数多くあるガンダムシリーズの中では、やっぱりこの「UC」みたいなヒューマンドラマの部分がしっかりしていて、キャラクターの心情が細かく描かれているものが好きですね。

楽曲の価値を少しでも高める努力は必要

──今回、通常盤の特典として、楽曲のリミックスのパーツを収録してるのも新しい試みですよね。

中野 僕らは今、レコーディングのほぼ全ての過程をコンピュータ上で作業していて。もちろん、ほかにもプロとして必要な機材というのは揃えてあって、そこにはそれなりのお金もかかっているわけだけど、基本的にはエンドユーザーと変わらない環境でレコーディングをしてるわけです。要するに、コンピュータ1台あれば、誰でもプロと同じレベルでクリエイティブな世界に入っていける。少しでもそういうクリエイティブな世界を身近に感じてもらえたらということで、ボーカルトラック、ドラムトラック、ギタートラックなどの7トラックに分けたパーツを用意して、それで好きなように遊んでもらおうと。中には、楽曲の種明かしというか、何がどう折り重なってこういうサウンドになってるのかがわかる仕掛けもあったり。それと、BOOM BOOM SATELLITESの楽曲をリミックスしたアーティストって、これまで本当にたくさんいるんだけど、9月にそれをコンパイルしたリミックスアルバムを出そうと思ってるんですよ。で、今回このリミックスの素材をもとに一般リスナーでコンテストをして、最優秀作品はそのリミックス盤に収録しようと思ってるんです。

──リスナーの能動性を刺激したいってことなんでしょうか?

中野 心情的には、制作過程とか、何がどうなってできているかっていうのは、自分にとっての秘め事の部分だから、なるべくそういうのは見せないで表向きはカッコよく振る舞うみたいなのが美学としてはあるんですけど。ただ、音楽を作ることが極端に手軽になったせいで、楽曲1曲の値段を含めた価値とか、生活の中における重要性がどんどん下落してるじゃないですか。それはもう取り返しのつかないところまで進行してると思うけど、ミュージシャンとして、その価値を少しでも高める努力は必要だと思うんです。将来的に音楽がゼロ円になる可能性だってあると思うけど、音楽の制作というのはやっぱり尊いものなので。もし音楽の価値がゼロになったら、そこにはアマチュアもプロもなくなるわけで。でも、同じゼロ円の曲があって、何をダウンロードするかっていうときに、志が高いものを拾っていかないと、自分のコンピュータがゴミだらけになってしまう。自分はただのユーザーなのかそれとも潜在的なクリエイターなのかっていうプロセスを経て、クリエイターに対するいろんな見方が変わっていったらいいなって思うし、クリエイターが増えること自体いいことだと思うんですよね。今回の試みには、そんな思いも込めてます。

ニューシングル「BROKEN MIRROR」 / 2012年6月6日発売 / gr8! records

期間限定盤収録内容
  1. BROKEN MIRROR
  2. BROKEN MIRROR
    -Movie Edit-
  3. BROKEN MIRROR
    -THE LOWBROWS REMIX-
通常盤収録内容
  1. BROKEN MIRROR
  2. BROKEN MIRROR
    -THE LOWBROWS REMIX-
  • CD-EXTRA
    「BROKEN MIRROR」リミックス素材
BOOM BOOM SATELLITES
(ぶんぶんさてらいつ)

中野雅之(Programming, B)、川島道行(Vo, G)によるロックバンド。エレクトロニックサウンドとロックを融合させた独自の音楽性で、類をみないオリジナリティを誇示している。1997年にベルギーのレーベルから初のシングル「JOYRIDE」をリリースし、1998年には初のフルアルバム「OUT LOUD」を発表した。日本国内だけでなく海外でも絶大な人気を集めており、アメリカやヨーロッパでもツアーを開催するほか、著名なフェスティバルにも多数出演している。2004年には映画「APPLESEED」の音楽を手掛け、その後もさまざまな映画やアニメに楽曲を提供。デビュー15周年を迎えた2012年6月、ニューシングル「BROKEN MIRROR」をリリースする。