ナタリー PowerPush - BOOM BOOM SATELLITES

15周年で見せたさらなる進化 約3年ぶりシングル「BROKEN MIRROR」

今年デビュー15周年を迎えたBOOM BOOM SATELLITESが、約3年ぶりとなるシングル「BROKEN MIRROR」を完成させた。アニメ「機動戦士ガンダムUC」の主題歌であるこの曲は、エレクトリックサウンドを中心に有機的な味わいも加わった、彼らの新しい地平を感じさせる意欲的なナンバーとなっている。

今回のインタビューでは久々の新曲に込められた2人の意思、2012年現在の楽曲制作に関するバンドのモード、待望のニューアルバムの制作過程などについて話を訊いた。

取材・文 / 宇野維正 インタビュー撮影 / 高田梓

「音楽をやるのかやらないのか」から始まった

──新曲の「BROKEN MIRROR」はまるで作り手の息づかいが聞こえてくるような、エレクトリックでハードでラウドなのにオーガニックという、BOOM BOOM SATELLITESの新境地が刻まれた作品になっていて。元々はどういうところから生まれた作品なんですか?

中野雅之(Programming, B)

中野雅之(Programming, B) 何も見えないところから制作を始めて、その中から生まれた曲なんですよ。そもそもその前に、音楽をやるのかやらないのかぐらいのところから始まっていって。

──えっ?

中野 2010年にアルバム「TO THE LOVELESS」を出して、一度そこで「出し尽くしたな」っていうのがあったんです。それで、2011年の頭にライブアルバム(「EXPERIENCED」)を出した後に、そろそろ本格的に制作に集中しようとスタジオを新しく構えたところで、東日本大震災が起きて。自分は音楽を作る人間として、あまりそういう外的要因に引っぱられたくないという思いがあって。そういう大きなことの後、それに対して何かを作るっていうのは、そっちのほうが不誠実なんじゃないかって思うんですよ。でも、それに引っ張られないように、これまでの軸がぶれないようにって意識してる時点で、それに引っぱられてるってことなんですよね。

──なるほど、そうですね。

中野 なので、音楽を作る上で不安定な精神状態がしばらく続いてたんです。この曲に限らず、去年デモを作ってた楽曲っていうのは、少なからずそういう精神状態を反映していて。例えばギターの音色1つでも、「どういう音を鳴らすか」という以前に、自分の音楽に対するモチベーションを探していくような感覚で作り始めていきましたね。「BROKEN MIRROR」は最初ギターのリフから作っていったんですけど、そのギターリフの音色の歪み方にすごくこだわって。この歪みのヒリヒリした感じというのは、そのときの自分や、時代の空気感を反映したものになってると思うんです。そういう音色の持つ根源的なところから、自分の中でとっかかりを作っていった感じですね。

──この曲の大きな特徴は、まるでひとつの生命体のように、途中でテンポが変化していくところですね。

中野 このテンポチェンジは、自分の心と対峙している状態や、ビートが人間の自然な欲求とシンクロするところをずっと探っていく中で生まれたもので。結局は、自分と向き合う作業を、徐々に積み重ねていって出来上がったものなんです。ラウドロックのそれとは、全然違う作り方ですけど(笑)。

川島道行(Vo, G) 最初にデモを聴いたとき、この感覚をどう言葉で言ったらいいのかわからなかった。「面白い」では軽すぎるけど、すごく「面白い」と思ったし、「これ、やりたい!」って素直に思いました。この曲の持つ高揚感や力強さって、テクノでもないし、ロックでもないけど、ここにはバンドとしての意志が込められてるなって。

次にやろうとしているものが明確になってきた

──今回の楽曲に限らず、今、新しいマテリアルの制作を進めている中で、「これからどういうものを作っていこうか?」みたいな話し合いは、2人の中であったんですか?

中野 いや、あんまり話してないんじゃないかな。ただ、去年の震災以降、他のミュージシャンがどんなことをやってるかっていうのは2人とも気にしてきたし。それについての感想だったり意見みたいなものは、別にそんな上から目線じゃないんだけど、同じ仕事をしている人としてどう見るかって話はしましたね。それによって、自分たちの足元を確かめるようなところはあったと思います。ただ、足元は確認できたけど、これからどういう音楽を作っていくかってことに関しては、実のところ、いまだに明解じゃないというか。

──そうなんですか?

中野 うん。アップリフティングな音楽を作っていくのか、それともこれまでより優しい音楽を作っていくのか、そういう全体の方向性がはっきりしないまま、今アルバムの制作をしてる最中です。

──目指しているものが見えないまま、アルバムを作っていくっていう経験は初めてなんじゃないですか?

中野 そうですね。でも、そういう過程がそのまんまアルバムという形になっていくとしたら、それもちょっと興味深くて。楽曲って、作る過程の中で勝手に成長していくこともあったりするし、またそれに対して自分がどういう反応をするかで変わってくるし。そういういろんな紆余曲折を経て、締め切りの日までに出来上がるってものだから。きっと締め切りが10日延びたら、それはまた違う曲になるかもしれないし。そういう意味では、これまでとは変わらないとも言える。

川島 今は本当に1曲1曲に集中しながら、そこで何かをつかもうとしているところですね。自分の中のモードを確かめることが重要なのと同じように、ライブやイベントなどで外に出ていって、具体的にオーディエンスの空気から感じることも重要で。そこから、次にやろうとしているものが徐々に明確になってきてる感じがしてます。

ニューシングル「BROKEN MIRROR」 / 2012年6月6日発売 / gr8! records

期間限定盤収録内容
  1. BROKEN MIRROR
  2. BROKEN MIRROR
    -Movie Edit-
  3. BROKEN MIRROR
    -THE LOWBROWS REMIX-
通常盤収録内容
  1. BROKEN MIRROR
  2. BROKEN MIRROR
    -THE LOWBROWS REMIX-
  • CD-EXTRA
    「BROKEN MIRROR」リミックス素材
BOOM BOOM SATELLITES
(ぶんぶんさてらいつ)

中野雅之(Programming, B)、川島道行(Vo, G)によるロックバンド。エレクトロニックサウンドとロックを融合させた独自の音楽性で、類をみないオリジナリティを誇示している。1997年にベルギーのレーベルから初のシングル「JOYRIDE」をリリースし、1998年には初のフルアルバム「OUT LOUD」を発表した。日本国内だけでなく海外でも絶大な人気を集めており、アメリカやヨーロッパでもツアーを開催するほか、著名なフェスティバルにも多数出演している。2004年には映画「APPLESEED」の音楽を手掛け、その後もさまざまな映画やアニメに楽曲を提供。デビュー15周年を迎えた2012年6月、ニューシングル「BROKEN MIRROR」をリリースする。