落ち込んだ気分を一掃するヘビーなサウンド
──今作「Unseen World」はこれまでで一番じっくり取り組めた作品だと言えそうです。
KANAMI そうですね。
──メロディアスでキャッチーな楽曲もありつつ、全体的にはかなりヘビーなサウンドに仕上がりました。これは意図していたんですか?
小鳩 こういうアルバムにしようという話はしてなくて、曲先で作っていったらこんな感じになったので、途中から「テーマを決めよう」ということになりましたっぽ。
──KANAMIさんはどういうテンションで今回の曲作りに臨んだんですか?
KANAMI そのときそのときの感情が入ってると思います。私はメンバーの中で一番メンタルがキテたので、そういう気持ちを曲にしようと思ったり、「本当ならこの時期は夏フェスに出てたから、夏っぽい曲を作ろうっ!」と思ったり。
──それにしても、重戦車みたいに重たい曲ばかりですね。
小鳩 そうなんですっぽ。落ち込んだ気分が「ブチ切れる」という方向に変換された感じですっぽ。
KANAMI あと、「お前はリフ製造マシーンになるんだ!」という勢いでリフを作りまくっていて、今回採用されたのはそこから選び抜かれた子たちです。
新作レコーディングで変わったこと、変わらないこと
──KANAMIさんが作った曲に演奏も引っ張られていった感じですか?
AKANE めちゃめちゃ引っ張られてると思います。ドラムはデモからそこまで変えてないんですけど、攻撃的な曲ではテクニカルというよりもアタック重視で16分連打してみたり。
──AKANEさんは前回のインタビューで次はブラストビートに挑戦すると話してましたよね。
AKANE まあ、近付いてはいますね(笑)。
KANAMI あーちゃん(AKANE)のためにブラスト入れようと思ったんですけど、曲にちょっと合わなくてやめちゃったんですよ。
──MISAさんはどういう意識で臨みましたか?
MISA 私は自分の色を入れるというより、曲と向き合って、今までやったことないフレーズや雰囲気を入れてみました。曲を意識してベースラインを面白くしたり、難しくしたり。ほとんどの曲でそういうことを意識して作りました。
──今回のサウンドはこれまでと何か変えてますか?レコーディング方法、レコーディングスタジオ、エンジニア、ミックスなどの面で。
AKANE 叩き方はかなり変えました! レコーディングでしっかり倍音を出せるようになったし、音の伸び感を意識しました。自粛期間中に詰めて練習した結果を出せたんだと思います。
KANAMI 私はストラトをいっぱい使いました。
小鳩 あとはいつも通りですっぽね。たぶん、曲を詰める時間が長かったから雰囲気を変えられたのと、いつも以上にやりたいことを事前にしっかり考えられましたっぽ。
SAIKI 完成のイメージがしっかりできあがってたんです。いつもは録りながら「これは違うかも」みたいにその場で変えてたんですけど、こんなにしっかり下準備をして録るのは初めてで、ゴールが見えてた分、より音にこだわれました。あと、自粛期間中に音のことを勉強して詳しくなったので、エンジニアさんにやりたいことを伝えやすくなったのも大きかったと思います。
──参考音源を渡すとか?
SAIKI そう。あと、Logic Proで作ったものを聴いてもらうこともありました。
KANAMI そうそう、エフェクトをかけたものを渡して、「こういうのをやりたい」って言ったりね。
小鳩 ミックスのときにパソコンを持って行って、その場で「これにしてください」って言ってましたっぽ。
KANAMI 自分でDTMを使うとオーダーしやすくなるよね。こういうエフェクトを使ったらこうなるっていうイメージがよりはっきりするから。
──じゃあ、皆さんがずっと狙っていた空気感に仕上げられたと。
小鳩 うーん。今回はこんな感じでしたっぽ。
SAIKI 「ここまでやってもいいんだな」ということが発見できたので、今後はこういうのがいいなと思いました。
──重厚感に加えて、音の“ワルさ”が半端ないですよね。
SAIKI そうですね。お給仕でやってるワルさが出てる感じはあります。
“原点回帰”と“現点進化”
──小鳩さんの歌詞も曲に引っ張られてますか?
小鳩 そうですっぽね。コロナ禍ということもあって、いつもと違うテイストにしようと思って書いたものもあるんですけど、KANAMIちゃんが作ってくれたものを聴いた時点で「ワルいな!」と思ったものが多かったんで、歌詞も思いっきりワルくしてやろうと思って書きましたっぽ。あと、今回の完全生産限定盤は「原点回帰盤」と「現点進化盤」の2枚組になっているんですけど、「原点回帰盤」はBAND-MAIDの初期の楽曲を好きな人たちに「おっ!」と感じてもらえたらいいなと思った楽曲たちで、「初期のBAND-MAIDを今の私たちがやったらどうなるっぽ?」というイメージで作りましたっぽ。
SAIKI 初期の頃、ベテランの作家さんに作っていただいてた曲を自分たちが作ったらこうなるだろう、みたいな。
──原点回帰とは言いつつ、大きく進化しすぎてますよ。
SAIKI 確かに原点回帰ではない(笑)。
小鳩 原点回帰をイメージした進化、みたいな(笑)。あの頃の私たちと今の私たち、音楽面でも知識面でも全然違いますっぽね。私はあの頃まったくギターが弾けなかったから。
──小鳩さんがメインボーカルをとる「原点回帰盤」収録の「サヨナキドリ」は、ラスサビのメロディが拷問のような高さですもんね。
小鳩 本当にその言葉通りだと思いますっぽ! すごく大変ですっぽ! 最初はもっとシンプルに終わる感じだったんで、「もうちょっと違う感じで終わりたいな」とKANAMIちゃんに相談したらすごい展開を出してきて(笑)。これまでの小鳩ソロで一番大変だったけど、いい曲になったと思いますっぽ。
KANAMI これはギターソロも小鳩が弾きますんで!
──SAIKIさんにとって、一番気持ちを乗せやすい曲はどういうものなんですか?
SAIKI リズムがハマるものですかね。ベースとドラムが一緒とか、楽器とのつながりが明確に見えるところが気持ちを乗せやすいですね。
──曲の雰囲気とか歌詞からはさほど影響は受けないんですか?
SAIKI そんなに。リズムに乗っているほうが楽しく歌えるので、そっち重視ですね。今回だと「Warning!」「H-G-K」「Why Why Why」はそういうポイントが多いです。
小鳩 「BLACK HOLE」、大変そうっぽ……。
AKANE リズム、ハマらないからね。
SAIKI 「BLACK HOLE」は……論外。
一同 (笑)。
SAIKI あの曲は大変とかそういうことじゃなくて、「これはこういうもん、考えない考えない!」みたいな感じで(笑)、とにかくハキハキ歌おうと。あと、難しいなと思ったのは「NO GOD」ですね。私はハネたリズムが苦手で、この曲はずっとハネてるから大変でした。
──演奏の話に戻りますが、僕は「本懐」でギターとベースが同じフレーズを弾いてるところがカッコよくて特に好きです。
KANAMI ありがとうございます!
──KANAMIさんはこれだけありとあらゆるフレーズを弾いていると混乱しますよね。今回、フレーズの幅がすごく広がってないですか?
KANAMI 自粛期間中、いろんな音楽のジャンルを分析する時間があって、ハードロックに限らず、アメリカやイギリスの音楽を聴きまくっていて、自分でも「ちょっとは広がったかしら?」と思っていたのでうれしいです。
──アイデアが本当に豊富になったと感じました。特別に意識していたんですか?
KANAMI そうしようとは思ってなかったと思います。自然と「こういうふうにしたい」と浮かんできたものを入れたという感じで、特定の曲からというわけではないんですけど、インプットしたことでどんどん影響を受けたんだと思います。
──確かに、特定のアーティストからの影響は感じさせないですよね。
KANAMI 昔はあったけど、だんだんなくなってきました。
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多彩に広がるBAND-MAIDサウンド