BAND-MAIDが4thアルバム「Unseen World」をリリースした。
「Unseen World」は日本クラウンからポニーキャニオンへの移籍後初となるリリース作品。“原点回帰”に加えて“現点進化”という造語をテーマにしたアルバムとなっており、BAND-MAID流ハードロックを2つのテーマで提示するという新たな試みが表現されている。
音楽ナタリーでは新作の発売を記念して、メンバーにインタビュー。コロナ禍の影響で国内外でのお給仕(ライブ)が思うようにできなかった2020年を振り返ってもらいつつ、オンラインライブの可能性、楽曲制作における変化、メンバーのメンタルや関係性などについて話を聞いた。
取材・文 / 阿刀“DA”大志 撮影 / 森好弘
世界66カ国からアクセスのあったオンラインお給仕
──先月、3度目にして初めてのフル尺でのオンラインライブ「BAND-MAID ONLINE OKYU-JI」が開催されましたが、いかがでしたか?
小鳩ミク(Vo, G) ひさびさ感がありましたっぽ!
SAIKI(Vo) 昨年2月のLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)ぶりのフル尺ライブだったので、「これこれ!」という感覚があって楽しかったですね。楽しみすぎてふざけすぎちゃったかな、みたいな(笑)。
小鳩 最初から飛ばしすぎた感はあったかもしれないっぽね。これまでの2回のオンラインお給仕が1時間の短いセットで体がそこに慣れてたから、ペース配分がわかってなかったですっぽ。だから、最後のほうは……。
SAIKI ヤケクソ。
小鳩 ヤケクソっていうのは言葉が悪いですけど(笑)、「やるしかないっぽ!」みたいに思い切りやれたのでよかったですっぽ。
──MISAさんはどうでしたか?
MISA(B) 自分のテンションが上がっていくと体とベースがなじむゾーンに入っていけるんですけど、そこに早く切り替えなきゃと思って無理やり切り替えたら、タイミングが早すぎて飛ばしすぎました(笑)。
──オンラインライブという新しい形のライブはどうですか?
小鳩 3回目にしてちょっと慣れた感はありますけど、無観客だといつもと違う緊張感がありますっぽね。
SAIKI 無観客だと、大きく動くことよりも正確さを意識しますね。カメラに抜かれるときにどういう表情をしようか考えるし、楽器隊は「今、手元撮られてる!」みたいに思うから、人の視線よりもカメラの圧を感じます。
AKANE(Dr) 目の前にカメラが来るので、「今、カメラがいる!」という意識になっちゃいます。いつもはないものだからずっと目で追っちゃって。
──今後は有観客とオンラインを両立する形になっていくんでしょうか?
小鳩 まだどうなるかわからないというのが現状なので、両方うまくやっていけたらなと思いますっぽ。配信だと海外のご主人様・お嬢様もお給仕を楽しめるので、世界征服を目指している立場としては大事にしていきたいですっぽ。
──どの国から観られているかわかるんですか?
小鳩 わかりますっぽ! 第3回は66カ国から観られてましたっぽ!
──それはすごい!
小鳩 自分たちでもびっくりしましたっぽ!
AKANE 前回よりも増えたし!
SAIKI 人数的には日本とアメリカが多いんですけど、カナダの人数が増えて、あとはブラジル、オーストラリア、南アフリカからも観られていました。
小鳩 トリニダード・トバゴとかまだ行ったことのない国もたくさんあって、すごくうれしい気持ちになりましたっぽ。
──世界規模で活動しているバンドにとって、オンラインライブは決して悪いものではないんですね。
小鳩 そうですっぽね。とてもいいことだと思いますっぽ。
──今後、海外ツアーの組み方の参考にもなりそう。
小鳩 なりますっぽ。「この国、けっこう観られてるから行きたいっぽねえ」とか。カナダはそういう国の1つですっぽ。
SAIKI カナダは前から行きたかったんですけど、「でも、どうなんだろう? ご主人さまお嬢さまがいるのか謎だな」って。でも、観てくれてる人がいることが数字でわかったので、「行けるね」って。
──そういう形でも夢を広げることができるんですね。
小鳩 そうですっぽね。そうやって前向きに考えられることのほうが多かったですっぽ。
コロナ禍のネガティブをポジティブに変える
──心理的な部分において、コロナ禍はBAND-MAIDにとってネガティブとポジティブのどちらに働きましたか?
小鳩 両方ですっぽね。
SAIKI でも、メンバーみんなネガティブをポジティブに変えるバネが強めなので(笑)。最初は、毎日のように会ってたメンバーに会えなかったり、音を出したくても出せない、直接音を届けられないという現実が悲しくて落ち込んだこともありました。だけどご主人様・お嬢様に向けて自分たちが何かをやらないとダメになると思って、自分たちに今できることをそれぞれが考えて、ファンクラブのコンテンツを充実させたり、SNSを活用したり、オンラインでトーク配信をしたり、今まで発想すらしなかったようなことをたくさんやりました。
小鳩 この時期だからこそ新しくできたことが大きかったですっぽ。あと、SAIKIが言ったように、毎日のように会っていたメンバーとぱったり会えなくなってしまったことにみんなが我慢できなくなって、しょっちゅうZoomミーティングをしたり、LINEをずっとつないだりしてましたっぽ(笑)。
SAIKI 「コミュニケーションを取りたい!」みたいな(笑)。
小鳩 直接会えない時間でもそうやって元気を出してましたっぽね。
SAIKI この時代でよかった。
小鳩 いやあ、よかったですっぽ。インターネットがなかったらキツかったっぽねえ。みんな、ドヨーンとして。
空いた時間にBAND-MAIDが取った行動
──これまで休みなく突っ走ってきたBAND-MAIDが自粛期間に突入した結果、「休めてよかった」と感じたのか、急に空いた時間をどう過ごしていいのかわからなくなったのか、どちらでしたか?
小鳩 両方ともちょっと違ってて。私たちは「何もしない」ということができない人たちで、「これは走り続けたほうがいい!」というのがわかってたので、日々ミーティングをして、何かできないか常に模索したり、普段できないような基礎練をしたり、制作をしたりしていたので、なんやかんやそんなに休んだという感じではなかったですっぽね。家にいる時間はいつも以上に長かったですけど、暇ではまったくなかったですっぽ。
AKANE 自分の時間を取れたという感覚がすごく大きくて。今まではツアーに出ると自分の練習よりもバンドの練習が中心になってたんですけど、丸1日、何週間も基礎練に充てられたという意味ではすごく大事な時間だったと思います。
SAIKI けっこう有意義だったよね。
小鳩 私とKANAMIちゃんは制作をずっとやってたので、「いっぱい作らなきゃっぽ!」みたいな感じでいつも通り忙しくて。
KANAMI(G) 週に1回曲を提出するようにレコード会社のディレクターから言われていたので、休んだ記憶がないですね(笑)。
──でも、SAIKIさんは家では歌いづらいですよね。
SAIKI そうですね。6割ぐらいの声量で歌ってました。
小鳩 6割だったら出してるほうだっぽね(笑)。
SAIKI あとは体作りばかりやってましたね。筋トレして、ストレッチして、いざ歌うとなったときにこれまで以上に歌えるようになろうと思って。
KANAMI あのときムッキムキだったもんね。体型がマネキンみたいになってて。
SAIKI ああ、なってたね。
KANAMI すごかった。「美」っていう感じ。
小鳩 お母さんから「やりすぎ!」って怒られてたっぽね(笑)。
SAIKI 「お尻が上がりすぎて気持ち悪い」と言われました。
──BAND-MAIDはさすがですね。これまでの忙しさが尋常ではなかったので、「休みを満喫しました!」というパターンもあるかなとちょっと思ってはいたんですけど。
小鳩 なかったですっぽ。
AKANE 家でやることっていうと音楽になっちゃう。
小鳩 でもこんなに家にいることがなかったので、そういう意味ではいつもと違う感じですごせたというのはありますっぽ。
SAIKI 制作にすごく時間をかけられたからね。
KANAMI 前作の「CONQUEROR」は曲ができたそばからメンバーに渡していってたけど、今回はメンバー1人ひとりに「どういう曲がやりたい?」と意見を聞いて、そこから曲を作ることができたし、それぞれが自分の機材を整えてくれたのでデモの質がすごく上がりました。
小鳩 自宅でレコーディングができるわけではないけど、デモの段階でいつも以上に詰めたものができましたっぽ。いいパソコンを買ったり、機材を買ったりしてましたっぽね。
KANAMI インターフェースを1台変えるだけでも音質がすごく変わるので、ミックスがとてもしやすくなって、本当によかったです。
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落ち込んだ気分を一掃するヘビーなサウンド