バンドじゃないもん！がミニアルバム「ミニバン！」をリリースした。この作品は、各メンバーがさまざまなクリエイターとタッグを組んで制作したソロ曲を軸に構成された企画盤。リーダー・鈴姫みさこのソロ曲「想い出サンセッタ」は彼女自身が作詞を担当し、の子（神聖かまってちゃん）が作曲を手掛けている。

ロックバンド・神聖かまってちゃんとアイドルグループ・バンドじゃないもん！の活動を、どちらに比重を置くでもなく長年両立させてきたみさこ。しかしそんな彼女のアイドル活動について、の子はこれまで公には積極的に語ってこなかったように見える。実際のところ、の子はみさこのアイドル活動をどう考えていたのか。バンもん！が人気グループになった今の状況をどう感じているのか。そしてみさこの作る作品をどう評価しているのか。

音楽ナタリーでは2人の対談を実施し、同じバンドのメンバーでもありながら触れられていなかった部分について、互いに語り合ってもらうことにした。また特集の最後にはみさこを除く5人のメンバーによる自身のソロ曲の楽曲紹介と、各作家からのコメントを掲載している。

取材・文 / 橋本尚平　撮影 / 上山陽介

「こいつ狂ったのか？」って本気で思ってた

──この2人で対談って、なんだか不思議な感じがしますね。

の子　みさこさんとはたぶん、一緒に取材を受けること自体ひさびさだと思う。だいたいインタビューにしろ対談にしろ俺のソロのことが多いし。ナタリーの神聖かまってちゃんのインタビューも、前回はバンもん！が忙しくてみさこさんだけいなかったもんね（参照：神聖かまってちゃん「夕暮れの鳥 / 光の言葉」インタビュー）。

みさこ　確かにひさびさかも。

の子　こういう場で会うの何年ぶりだって感じだもん。いや、2人だけは初めてか？

みさこ　うん、初めてかもしれない。だから私も「今日は楽しみだな」って思いつつ、ちょっと気恥ずかしかった（笑）。別に普段から会ってるんだけど、改まって“対談”ってなると……。

の子　でも今日は俺、ホントに対談モードですよ。あくまで“バンもん！のみさこさん”との対談をしに来た。バンドじゃないもん！を最初に立ち上げたのっていつ？ 何年前？

みさこ　えーっとね、2010年だから7年以上前。

の子　えっ！ 7年？ うそ、そんなにやってんの？ お前サバ読んでるだろ？

みさこ　サバ読んでない（笑）。けっこう経ってる。

の子　俺、初期のバンもん！については……もう、はっきり言うよ？ 俺は「みさこさんがアイドルみたいなことを始めたって？ あっそう」って感じだった。ぶっちゃけ全然興味がなかった（笑）。

みさこ　ははは（笑）。

の子　だから実際に何をやってるかは知らなかった。で、しばらくしてレコーディングかなんかでみさこさんが「パヒパヒパヒパヒー」って歌ってるのを聴いて、「うわ、こいつ正気かよ……何やってんだ……」みたいな。

みさこ　よりによって最初に聴いた曲が「パヒパヒ」だったかー（笑）。

の子　「大丈夫か？ こいつ狂ったのか？」って本気で思ってたんだよ。「こんなこと続けてこの先芽が出るのか？」って。今になって振り返れば、何においても先見性があるの子さんが見事に外してたわけだけど（笑）。完全にナメてたね。参りました。

みさこ　いやいやいや（笑）。

の子　だって今、バンもん！のほうがCD売上枚数とかライブの動員数とかかまってちゃんより上だもん。パーフェクトミュージックへの貢献度は圧倒的にバンもん！が上。そんなグループを、うちのバンドのメンバーでもあるみさこさんが作ったっていうことを、俺はすごく誇りに思う。これはマジで。

みさこ　ときどきライバル視されてるけどね（笑）。

の子　するするする。そりゃ嫉妬はするよ。俺より売れてるものに対しては。でも俺はやっぱ誇りに思ってるよ。

イメージは「平沢進さんが楽曲提供した戸川純さんの曲」

──バンもん！を始めた頃、神聖かまってちゃんのほかのメンバーはどんな反応だったんですか？

の子　俺は興味なかったけど、ちばぎんはけっこう応援してくれてたんじゃないの？

みさこ　そうだね。「ショコラ・ラブ」っていうバンもん！の最初の曲を、深夜の事務所でかっちゃん（金子沙織。バンドじゃないもん！のオリジナルメンバーで2013年9月に脱退）と一緒に作詞してるときに、たまたまちばぎんが居合わせてて、すごい助言とかしてくれて。「ショコラ・ラブ」がちょっと行き過ぎなくらいポップな曲になって、そこから先のバンもん！の方向性が決まったのは、ちばぎんの助言があったからかもしれない。

の子　へー、ちばぎんもちょっと貢献してるんだな。

みさこ　あと、ちばぎんは大事なライブのときはだいたい来てくれるかな。

の子　「の子さんとmonoくんは来てくれないけど」みたいな？（笑）

みさこ　いや、monoくんもちょくちょく来てるよ（笑）。まあ、の子さんはバンもん！に限らず、そもそも人のライブにそんなに行かないもんね。

の子　俺、みさこさんがどんな歌詞を書いてるのかもよくわかってなくて、今回コラボしてようやく「あ、なるほどね」って思った。これ皮肉でもなんでもないけど、俺にはみさこさんみたいな歌詞は書けないから単純に「すげえな」って思ったな。マジで。

みさこ　いつもはもっと、どストレートな言葉で歌詞を書いてるんだけどね。今回はの子さんに作曲をお願いするってこともあって、の子さんの雰囲気を意識したところがある。

の子　ああ、それは感じた。

みさこ　の子さんがこの曲を作るときにイメージしてたのが「平沢進さんが楽曲提供した戸川純さんの曲」で。

の子　そう、俺はみさこさんに曲を作ることになったとき、3曲くらいパッと作ったんですよ。アイドルっぽい曲からそうでないものまで。その中で一番ひねくれた曲をまず初めに投げたら、それが採用されちゃった（笑）。もっとほかにもあったんですよ。普通にキャッチーな曲が。

みさこ　残りの2曲、聴いてないからめっちゃ気になるなあ（笑）。で、もらった曲を聴いて歌詞の方向性を考えたときに、の子さんがイメージしたっていう戸川さんの「赤い戦車」を私もイメージしながら、私が一貫してバンもん！でテーマにしてる「アイドルに対しての美学」を歌詞にしたんです。

の子　なるほどね。でも俺、「赤い戦車」だなんて言ってないからね？（笑）

みさこ　いや、たぶんあの曲なんだろうなと思って（笑）。あと、の子さんからもらったデモに仮の歌詞が付いてたので、そこからヒントを得たところもあります。

の子　俺が入れてたのは適当な言葉の羅列だけどね。

みさこ　例えば、の子さんが「鎮魂歌」みたいに歌ってたところの意味は変えずに「誄の歌」って言い換えたり。もらったメロディがめちゃくちゃきれいだったからそれが際立つように、まず1回歌って録って、パッと聴いて耳に突き刺さりすぎると感じた言葉は言い方を変えるようにしたんです。英語の曲みたいに聞こえたらいいなと。