みさこさんの歌声は悲壮感があって好きなんだ

──作曲の段階で戸川純さんのイメージがあったと聞いて納得しました。この曲のみさこさんの歌声を聴いて「戸川純っぽい」と思ったので。

の子　俺ね、みさこさんの歌声は好きなんだ。悲壮感があって。

みさこ　別に出してないんだけど、なんか出ちゃうんだよね、悲壮感（笑）。

の子　本人にとっては不本意なのかわかんないけど、みさこさんの声はほかのアイドルとは明らかに違うんで、それっていいことだと思うんですよ。切ない歌い方するよな、お前。なんなのあれは？ 体力がないからなの？

みさこ　体力がないのかな（笑）。狙ってるわけではないです。

──そもそもお二人が知り合ったきっかけが、みさこさんがバンドメンバー募集に「戸川純が好き」と書いていたのを見て、の子さんが連絡したことだったという話を、この曲を聴いて思い出しました。

の子　そうなんです。俺も戸川純さんとか平沢さん、筋少とか……あとなんだっけ？

みさこ　植松伸夫さんとか。

の子　そうだね。好きなゲームミュージックとかをネットの掲示板にバーって書いてて、それでお互いに連絡を取るようになって。それが2007年とかになるのかな？ もう10年前ですね。

──「想い出サンセッタ」という曲名は、神聖かまってちゃんの楽曲「夕暮れメモライザ」のタイトルを言い換えたものですが、やはりこの曲には特別な思い入れがあるんでしょうか？

みさこ　そうですね。私は「夕暮れメモライザ」の「僕はきっともっと寂しい自分が何してもいるよ」って歌詞が好きで、「それな！」ってなるんですよ。

の子　俺その歌詞覚えてない（笑）。

みさこ　の子さんはいつもこの部分の歌詞を間違えるよね（笑）。アイドルって一見すごく輝いていてみんなから羨まれる存在だけど、どれだけ有名になっても、どれだけ応援してくれる人が増えても、自分にしかわからないさみしさを抱えていて、それを隠しながら活動している人が多いと思ってて。そういうテーマで曲を書こうと思ったときに、「夕暮れメモライザ」と通じるところがある気がしたのでオマージュしたんです。

の子　なるほどね。

──冒頭の「黒く錆ついて軋む公園の焼けた赤のブランコと同じ 溢れて殺した想い出にしか成れないとしても」という歌詞は、神聖かまってちゃんの「友だちを殺してまで。」のジャケットをイメージして書いていますよね？

みさこ　そうですね。最初に「赤い戦車」っていうキーワードを自分なりに変換したとき、私の中で赤と言えば「友殺」のジャケットだったから。子供の頃にいつも遊んでた遊具を最近思い出すことがないのと同じように、今好きでいてくれる人たちに忘れ去られる存在になったとしても……みたいな意味で書きました。

「ダダッダッダッダッ」は神聖かまってちゃんの絆だから

──ちなみに、の子さんは作曲以外の部分は完全にノータッチなんですか？

の子　そうですね。歌詞にしろ歌い方にしろ、全部みさこさんの好きにしてもらって。だから仮ミックスで初めて聴かせてもらったとき、「あ、こういう感じか」って思った。神聖かまってちゃんのライブの前なのにテンション上がっちゃったから「これ今聴いたらダメだ、ライブ終わったらまた聴こう」って（笑）。

みさこ　逆に作曲に関しては、の子さんがオファーを受けてくれるならどんな曲調でも任せようと思ってた。

の子　そうそうそう。「なんでもOK」って言われたからすごいやりやすかった。

みさこ　ただしアレンジは任せてほしいっていう話をしたんです。で、もらったデモを聴きながらアレンジの方向性を考えて、ストリングスがしっかり作られてるほうがメロディが引き立つかなと思って木村篤史さんに編曲をお願いしました。でも、曲の頭とかサビ前に出てくる「ダダッダッダッダッ」っていうドラムはそのまま残してもらうようにお願いしました。「このフレーズは神聖かまってちゃんの絆だから」って（笑）。

の子　それ、俺が20年前から使ってるリズムマシーンに入ってるリズムパターンじゃねえか。ほかのパターンに変えるのがめんどくせえから、全曲のイントロで同じのを使ってるっていう（笑）。

みさこ　うん、だから私も最初の頃はかまってちゃんでドラムを叩くとき「変えないとどの曲も似ちゃうかな」って心配してたんだけど、今となってはこれがかまってちゃんならではのフレーズになってると思う。あのドラムが聞こえたら「かまってちゃんの曲だ！」ってわかるもん。でもそこ以外はアレンジ変えてます。の子さんがくれたデモはけっこうキメが多かったけど、ストリングス主体にしたからなるべく流れるように聴けたらいいなと思って、キメはあんまり強くしすぎないようにしました。

の子　けっこう細かいとこまで指示したんだ。

みさこ　うん、1回バトった（笑）。アレンジャーさん、サウンドプロデューサーさん、私の3人でやり取りすることが多かったんだけど、サウンドプロデューサーさんがいっぱいいっぱいになってて、私の説明が伝わってないことがあって、珍しく怒ったの。そしたら海鮮丼を奢ってくれた（笑）。

の子　なんでちゃっかり奢らせてんだよ（笑）。まあでも大切なことだよね。みさこさんがそこで怒るのはアーティストとして正しいと思う。

みさこさん、マジで「かわいくなったなあ」って思う

の子　俺、昔からバンもん！に曲提供してえなってずっと思ってたんだよ。

みさこ　私も「してもらいたいな」ってずっと言ってたよ。前回のソロ曲（シングル「NaMiDa」に収録された「スピードリオン」）はもともとの子さんに作曲してもらおうと思ってたんだけど、なんかふわっとナシになって（笑）。

の子　俺のイメージが悪いんじゃないの？ バンもん！に悪い印象を付けたくない、みたいな。

みさこ　そんなことないです！ だったら今回通らないでしょ（笑）。

の子　まあ実際のとこはわかんないけど、「バンもん！は別物だからかまってちゃんのイメージとは分けたい」って話なら俺もわかるよ。

みさこ　「イメージを分けたい」っていうのとはちょっと違うけど、やっぱ最初は私も「かまってちゃんの名前にぶら下がってお客さんを呼んだりはしたくないな」って思ってたから、あえてたくさん話したりはしなかった。でも今は逆に、バンもん！で堂々とかまってちゃんの話をしたいんだよね。バンもん！はバンもん！で楽しんでもらえる自信が付いたから。

の子　みさこさんってさ、やっぱアイドルやって垢抜けたよね。なんか、アイドルになった。

みさこ　あら！ ホントに？（笑）

の子　わかんないけど（笑）。でもマジで、素直に言うと、なんか「かわいくなったなあ」って思う。俺も「の子さん、若い若い！」ってたまに言われるけど、やっぱ人に見られるってすげえ大切なことなんだよな。みさこさんもステージに立って見られることを意識してるうちに磨かれてるんだと思うし。だから、これからもアイドルは続けていったほうがいいんじゃないかな。

みさこ　うん。もしバンもん！が華々しく解散したら、直後にめちゃくちゃ老けてく可能性もある（笑）。まだまだバンもん！は続けるよ。ビヨンセと対バンするところまでいきたいから。

の子　……ビ、ビ、ビヨンセ？ ビヨンセと対バンしたいんだ？

みさこ　したい！

の子　へえー……バカじゃない？

みさこ　えー（笑）。

の子　いや、今のは誉め言葉（笑）。バカでいいんだよ。でもまずは「ミュージックステーション」出演だね、ビヨンセより前にとりあえず。

みさこ　Mステ出たい！ 去年くらいから七夕に「Mステ、紅白、武道館、両国国技館」って短冊に願いごとを書いてるんですよ。

の子　そうそう、バンもん！でMステに出て「神聖かまってちゃんのみさこです！」って自己紹介してくれ。俺いねえけど。

みさこ　違うよ！ もちろんかまってちゃんも出るんだよ（笑）。かまってちゃんとバンもん！がダブルでMステに出て、バンもん！は日本武道館でライブをやって、かまってちゃんは両国国技館のリベンジ（参照：神聖かまってちゃん両国国技館ワンマンライブ開催見送りに）をするのが今の自分の目標なの。