お互い、仕事脳すぎるところがあると思うの

の子　じゃあ、仕事関係は抜きにして、みさこさんってこの先の人生で何をしたい？

みさこ　できればいつかは家族を持ちたいな。ただ、形は問わないって言うか……子供を育てたいんだけど、自分の血のつながった子じゃなくてもよくて。例えば養子縁組とか里親とか。

の子　ほうほう。

みさこ　でも調べてみたら、同じことを考えてる人は世の中にたくさんいるみたいで大人気なんだよね。里親になりたい人よりも子供のほうが少ないくらい。

の子　まさかそういう返答がくるとは思わなかった（笑）。

みさこ　子供を産むとかお母さんになるとか、そういう体験をしてみたい。そしたら自分の中から新しい音楽性が生まれるかもしれないし（笑）。

の子　そうそうそう、それは俺も思う。子供が欲しいとはまだ思えないんだけど、もし俺に子供ができたら、俺の音楽の表現はかなり変わるんじゃないかと思う。

──の子さんの場合は特に、私生活をそのまま反映させて曲にする人ですからね。

の子　だから俺、最近歌詞が書けないんだよ。人生経験を積めてないから。

みさこ　私も自分で経験したことがダイレクトに歌詞に反映されるタイプ。

の子　そうなんだ。みさこさんは今までに何曲ぐらい歌詞を書いてきたの？

みさこ　いくつだろ？ かなり書いてる。

の子　たくさん書いてくるとさ、「もう十分書いたなー」って気分になってこない？ 自分の人生を全部出し切った感と言うか。俺の場合、自分の中に溜まってた「死にたい」って気持ちが曲になってかなり出てしまった。

みさこ　ああ、そうだね。最近はそういう曲は少ないもんね。

の子　初期のかまってちゃんは、十代の頃から積もりに積もってた負の感情がバァーって出てたんだけど、だんだんそれがなくなってきて、仕事をしながらその経験を歌詞にするようになって。そして三十代に入った今、俺は何を歌えばいいのかなという（笑）。

みさこ　たぶんお互い、仕事脳すぎるところがあると思うの。

の子　仕事脳？

みさこ　例えばの子さんって、「プライベートを充実させるのは新しい歌詞書くため」に見える。単純に遊びたいわけじゃないんだろうなあっていう。私もそういう面があるからわかる。

の子　そうかも。リアルな自分が曲になってないと意味ないからね。もし結果的に昔と比べて内容が薄い曲を書いてしまったとしても、それが自分のリアルだからそれでいいと思ってる。自分を出すという生き方をずっと貫きたい。それはみさこさんもわかるでしょ？

みさこ　確かにそうだね。思ってもないことは書こうとしても一生書けないだろうし（笑）。

の子　当然だよ。だから、俺だって「ミュージックステーション」に出たいとか、両国国技館とか日本武道館とかさいたまスーパーアリーナでライブやりたいとは思うけど、それ以上に「あくまで自分の生き方の延長線上でそこに行きたい」って気持ちのほうが強い。

みさこ　いやホント、それはそうね。

リーダーになったおかげで、の子さんの苦しみがわかったかもしれない

──音楽ナタリーでは今年5月に、みさこさん以外の男性メンバー3人にインタビューをしまして（参照：神聖かまってちゃん「夕暮れの鳥 / 光の言葉」インタビュー）、そのときに「メンバーそれぞれ、昔と比べて変わったと感じるところはありますか？」という話をしたんですよ。お二人はお互いについて、昔と変わったと感じるところはありますか？

の子　前のインタビューでも言ったかもしれないけど、俺は昔より自分がずる賢くなったのを感じる。傍目には「あ、の子さんが本気だ！」って見えてるけど、実は陰で力を抜いてる、みたいな（笑）。でも、そうしないと狂うだけなんですよ。みんなは狂ったの子さんを見たいんだろうけど、その手には乗らねえぞって（笑）。それで言うと、あんたはたまに本当に狂うじゃん？

みさこ　うそ！ マジ？ どういうこと？（笑）

の子　いや、お前はひどいんだよ。スケジュールが詰まってて忙しいと、頭がいっぱいいっぱいになって大爆発するの。

みさこ　ははは（笑）。まだ悟りを開けてないなー。

の子　いや、わかるよ。そういうときは俺にだって今でもあるし。アーティストとして本気ゆえのことなんだと自分で思ってる。

みさこ　そう！ ホントそう！

の子　そうなる人ってだいたい「俺には今しかない。このチャンスを逃したらもう死ぬだけ」みたいな気持ちで何かに打ち込んでるもん。そのあたりが、みさこさんが昔と比べて変わったところだと思う。昔のみさこさんはそんな感じじゃなかった。今はやっぱバンもん！のリーダーやってるから、責任とかすげえ抱え込んでるんだろうな。みさこさんって、もともとはマジでド天然な人じゃん？ それなのにリーダーとしてしっかりしようとするから、頭グチャグチャになって狂っちまうんだよ（笑）。

みさこ　うん、そもそもリーダーには向いてない人だと思う（笑）。周りからも「みさこに重要なことを任せるのはやめとこ」って、避けられながら生きてきたし。だからパンクすることもあるけど、おかげでの子さんの苦しみとかがわかったのかもしれないなと思う。

──今日の対談を通して、2人は似てる部分が多いなと感じました。

みさこ　通じ合ってるところがまったくなかったら10年続いてないですよ（笑）。

の子　でも俺も、みさこさんと俺は近いと思う。飢餓感と言うか、「今やんないと、いつ死ぬかわからない。どんどんどんどん歳を取るし」みたいな焦りが。

みさこ　うん、私が死ぬのが怖い理由の1つはそれ。リミットがどんどん近付いている中で、どんだけ仕事を残せるかみたいな。

の子　めちゃくちゃ速いよね、人生。

──「23才の夏休み」で「そして33才さ」と歌っていたの子さんが、あと半年くらいで実際に33歳になるわけですからね。

の子　うん。あっという間に40歳、50歳になるだろうし、そうなる前に死ぬかもわからないし。だから1日1日を本気でやりたいよね。まあそう言いつつ、俺は自堕落に生きてる日が多いんだけど（笑）。

恥ずかしんだよ！

──みさこさんとの子さんは、仕事以外で会うことはあるんですか？

の子　そもそも俺、普段メンバーとコンタクト取って遊ぶとか一切ないっすよ。

みさこ　そうだね。かまってちゃんのメンバーは、もともとそんなに人と遊ばない。私はバンもん！のメンバーとは遊びに行ったりするんだけどね。休みの日がみんな同時に来るから、なんかしなきゃみたいな気持ちになるので（笑）。

の子　かまってちゃんのメンバーってみんなコミュ障だから、自分から誘ったりもしないし。

みさこ　確かに。でも急に私から「の子さん、遊ぼうよ！」って言われても謎な感じでしょ？（笑）

の子　別に「遊ぼう」って言われたら遊ぶし、「酒飲もう」って言われたら飲むよ（笑）。

みさこ　私は「メンバーと打ち上げしたい」ってよく言ってるけどね。

の子　そうなの？

みさこ　言ってる言ってる。の子さんに届いてなかった（笑）。前までは、の子さんがライブが終わったら一目散に帰りたがってたから打ち上げができなかったのもあるけど。

の子　無理なんだよライブのあとは。なんかすげえピリピリしてて、誰とも話したくねえんだよ。何もない日だったら全然大丈夫。

みさこ　じゃあ、遊びましょ。配信抜きでカラオケとか行きましょ（笑）。

の子　……それは、俺だけじゃなくて、まあ……うーん（笑）。

──なんではぐらかすんですか（笑）。

の子　恥ずかしんだよ！（笑） 配信絡めないで遊ぶって、俺すげえ恥ずかしいの！

みさこ　かまってちゃんのメンバー同士だと、どこに行くにしても「じゃあ配信しようか」ってなるもんね。

の子　まあね、1回くらいはそういうことやってもいいかもね。

みさこ　Instagramにだけアップしようよ（笑）。

の子　そうだね。メンバー同士がプライベートで仲良くしてる、ファンがニヤニヤするような写真を上げようか（笑）。