音楽ナタリー Power Push - バンドじゃないもん!

私たちはゴールを決めたくないもん!

バンドじゃないもん!のニューシングル「夏のOh!バイブス」はORANGE RANGEのNAOTOがプロデュース、HIROKIが作詞に参加したナンバー。この曲は彼女たちにとって初めての本格的なサマーソングであり、どこを切ってもORANGE RANGE節全開のハイテンションなロックチューンに仕上がっている。

彼女たちは1月からスタートしたロングツアー「バンドじゃないもん!全国ツアー2016 ~てっぺん目指そうぜ!武者修行編~」の初日に“再メジャーデビュー”を発表し、5月にリリースした移籍後初のシングル「キメマスター! / 気持ちだけ参加します。」はオリコンウィークリーランキングで自己最高位となる5位を獲得。表題曲「キメマスター!」のミュージックビデオはYouTubeの再生数が75万回(2016年8月現在)を突破し、7月末には日本最大のライブハウスである東京・豊洲PITでのツアーファイナルを成功させている。

一度メジャーレーベルとの契約が解除されインディーズでの活動になりながらも、逆境から這い上がり再びチャンスを手につかんだバンもん!。彼女たちの目指す“てっぺん”とはどこにあるのか、メンバー6人に話を聞いた。

取材・文 / 橋本尚平 撮影 / 笹森健一

新しいもんスターを発見する旅

──まだ追加公演が残っていますが、ひとまず全国ツアーおつかれさまでした。この今までになく長いツアーは、実際に皆さんにとって武者修行になりましたか?

天照大桃子

天照大桃子 超なりました。具体的に言うと、ずっと「White Youth」の落ちサビのリズムがとれなかったんです。そのまま武者修行編が始まったので、初日に「ツアーファイナルでは最高の落ちサビを歌うぞ!」って宣言したんですけど、無事にリズムをキープしたまま落ちサビを歌えるようになってたので、成長したなって実感してます。

七星ぐみ 同じセットリストで何回もライブをしたことが今までなかったので、1曲1曲が日に日に仕上がっていく感じがありました。

望月みゆ 今回のツアーは、コントのパートがあったのが自分の中でかなり大きかったです。公演ごとに担当メンバーが自分で台本を書いて、メンバーに役を振り当てて、セリフを覚えて、それでお客さんを笑わせられるか挑戦するっていう。ダダ滑りすることもあったけど、それでちょっとハートが強くなった気がします(笑)。私はツッコミを担当することが多くて、そういうスキルが少し上がったかもしれない。テンポをつかんだというか(笑)。

天照 確かに! “つっこみゆちぃ”も成長した!

望月 それを修行するつもりはあんまりなかったんだけどね(笑)。でも今後に生かしていけたらいいなと思います。

鈴姫みさこ 楽器の演奏も今回のツアーでは相当やったし、前よりもグルーヴが出るようになったんじゃないかな。特に「White Youth」とか。

望月 ゆずのギターソロね。

甘夏ゆず

甘夏ゆず ツアーが始まったばっかりのとき、ギターソロが弾けなすぎて。でも豊洲PITのツアーファイナルではたぶん弾けてたんじゃないかなって思います(笑)。

恋汐りんご あと、メンバーだけじゃなくてもんスター(バンもん!ファンの総称)も一緒に成長した気がしてます。地方にいっぱい行って、今まで会ったことがないもんスターの方たちにも会えたので、今回のツアーで初めて会った人の総数ってすごく多いんじゃないかなって思うんですよ。「各地を回って新しいもんスターを発見する旅」みたいなことをみんなでやれて、日本全体を巻き込めたんじゃないかなって思ってます。

いろんなことが全部伏線になってる

──豊洲でのツアーファイナル(参照:バンもん!水着姿でクエスト完了、豊洲PITワンマンで「一緒にもっと広い世界を」)を観て、バンもん!が大きな場所でのライブが似合うグループに成長していることを感じました。過去最大規模の会場なのに、決して「身の丈を超えたことを必死でこなしてる」という印象はなく、全員がただただライブを楽しんでいるように見えたので。

恋汐 はわー、うれしい。

甘夏 でもさりげなく、めちゃくちゃ挑戦だった気がします。

鈴姫 集客について言うと、今まで通りがむしゃらでした(笑)。

恋汐りんご

恋汐 ツイキャスの「キャスマーケット」っていうチケット販売サービスを使って、毎日ツイキャスをして集客数を増やしたり、初めてこの6人でワンマンライブをした新宿MARZから豊洲PITまでワンマンをやった会場を巡りながら、みんなで看板を持ってビラを配ったりチケットを手売りする「バンもんGO」っていう企画をやったり、いろいろがんばったね。でも確かに、ライブ自体はホントにハッピーだったなって思います。

七星 豊洲は楽しくできた。

天照 うん、ライブ自体は何も思い残すことなく。

──それ以外の部分に反省点があったんですか?

天照 やっぱりメジャーデビュー後初めてのツアーってことで、関わってくれる方の人数が一気にものすごく増えたし、新しい環境に変わったから「次からこうしたいな」とかみんなそれぞれ思うことがたくさんあったんじゃないかな。今までも自分たちでプロデュースしてライブの中身を決めてきたから、段取りとかが変わると大変な部分もあって。そういう面でも今回は勉強になったので、今から次が楽しみです。「私たちは絶対もっといいツアーができるな」って確信も得られましたし、今度はどんなことをしようかなってすごいわくわくしてます。

七星 “再メジャーデビュー”してから「どうしたらいいんだろう」っていうことがいっぱいあったけど、やっと豊洲で勝手がわかってきたっていうか(笑)。

鈴姫みさこ

鈴姫 バンもん!はメンバーそれぞれの意志を大事にしてるんですけど、今までは衣装を作ってくださる方とかアー写を撮ってくださってる方とかに、私たちがやりたいことを説明してもなかなか伝わらないことがあったりして。でも最近はそのやり方に周りが慣れてきてくれたみたいで、私たちも「ここらへんは自分の要領でやりたい」っていう話がしやすくなってきた気がします。

──フロアを大浴場に例えて、熱く盛り上がりたい人向けの湯、女性客向けの湯など、客層によってエリア分けするというのもメンバーの発案だったんですか?

鈴姫 エリア分けはももの発案です。本当の意味で老若男女に楽しんでもらおうと思って、どういう楽しみ方をしたいかによっていろんな湯に行ける、っていうイメージで。

恋汐 みーちゃんが「いろんなことが全部伏線になってる」って話してたじゃない?

鈴姫 うん、バンもん!ってたまたま言ったキーワードをあとで回収するってことがめちゃくちゃあって。

恋汐 例えば、新宿アルタ前のライブで汐が「ここがアイドル界のパラダイス大浴場だー!」って初めて言ったとき、それがまさか豊洲PITのライブのテーマになるとは思ってなかったし。「てっぺん目指そうぜ!」っていうツアータイトルですけど、よく考えたら日本のてっぺんは富士山だし、豊洲PITは日本のライブハウスの中でてっぺんだと思うので、壁に富士山の絵が描かれた大浴場が豊洲PITに現れるっていうのは、あとで気付いたんですけど全部がつながってるんですよね。

もう今さら何を言われても大丈夫

──最近のアーティストはメジャーデビューというものに対するありがたみが薄くなっているような気がしていて、バンドでもアイドルでも誰でも「メジャーに移ったからといって変わらずに、今まで通りやっていきます」みたいに言う人が多い印象があるんですが、バンもん!は今回の“再メジャーデビュー”を本当に心から喜んでいるように見えます。

鈴姫 ホントにうれしいです。今までできなかった“メジャーっぽいこと”をいっぱいやらせてもらえるようになったのが(笑)。新宿アルタ前のステーションスクエアでライブできたのもメジャーデビューしたからだし。

七星ぐみ

七星 あの場所は絶対ライブできないって言われてたのにね。あと、沖縄でライブしたいねって話してたときも「絶対行けない」って言われたよ。

鈴姫 「旅費とか元が取れないから、遊びに行く気持ちでじゃないと無理」みたいな(笑)。

天照 「夏のOh!バイブス」はORANGE RANGEのNAOTOさんとHIROKIさんが作ってくださったんですけど、私たちみんなインディーズの頃から「ORANGE RANGEさんと一緒にやりたい」って言ってたんですよ。でもずっと「今の状況では難しい」って言われてて。メジャーデビューしたらそれがついに叶ったので、「メジャーってこんなにすごいんだ!」って実感してます。

七星 ごはんもね。大阪公演のケータリングで、551の肉まんが入った機械が置いてあってさ。

甘夏 コンビニとかにあるような蒸し器が楽屋に置いてあったんです。

鈴姫 みんなそれを見て写真を撮るっていう(笑)。

望月 「わっ! メジャーっぽい!」ってね(笑)。

七星 ライブハウス規模で置くのは初めてって言ってたよね。メジャーありがたい。

──そういう待遇をしてもらえるようになったのも、今のバンもん!に勢いがあるからこそなんだと思います。

望月みゆ

望月 「キメマスター!」であの順位(オリコンウィークリーチャート5位)を取れたのはかなり影響してる気がする(笑)。

天照 確かに。結果を出したおかげの551(笑)。

鈴姫 まあホント、こうなれたのももんスターの皆さんのおかげに尽きますね。今後バンもん!をいろんな人に知ってもらえるようになったら、同時に偏見とかでいろんなことを言われるようになるかもしれないけど、一緒に戦ってくれる戦友・もんスターと一緒に、これからも楽しみながら逆境を乗りこなしていけたらなと思う。

天照 みんな強くなったから、もう今さら何を言われても大丈夫っていうか。

望月 今までいろいろあったからね!(笑)

恋汐 それがあるから、1回インディーズになったことはホントに無駄じゃなかったなって思えます。やっとやっとメジャーに戻れて汐たちもうれしいけど、汐たち以上に喜んでくれてる、一緒にがんばってきたみんながいるのがうれしいですね。

七星 “再メジャーデビュー”を発表したときに、メンバーよりももんスターのみんなのほうがめちゃくちゃ喜んでくれて。私それ見て泣きそうになった(笑)。

ニューシングル「夏のOh!バイブス」 / 2016年8月24日発売 / ポニーキャニオン
通常盤 [CD] 1296円 / PCCA-70479
Chou Chou Cream盤 [CD] 1080円 / PCCA-70480
ブルーツインズ盤 [CD] 1080円 / PCCA-70481
コットンラビッツ盤 [CD] 1080円 / PCCA-70482
通常盤 収録曲
  1. 夏のOh!バイブス
    [作詞:NAOTO、HIROKI / 作編曲:NAOTO]
  2. HAPPY TOUR
    [作詞:みさこ、恋汐りんご、望月みゆ / 作曲:奥脇達也 / 編曲:MOSAIC.WAV]
  3. 夏のOh!バイブス~instrumental~
  4. HAPPY TOUR~instrumental~

※初回プレス分のみ下記映像を収録した特典映像データが付属

  • 「夏のOh!バイブス」 Music Video
  • Live Movie@Akasaka Blitz 2016.05.17&18 ダイジェスト映像
Chou Chou Cream盤 収録曲
  1. 夏のOh!バイブス
  2. アイスクリームになりたいの♡
    [作詞・作曲・編曲:PandaBoY]
  3. アイスクリームになりたいの♡~instrumental~
ブルーツインズ盤 収録曲
  1. 夏のOh!バイブス
  2. シンデレラブルース
    [作詞・作曲:松永天馬 / 編曲:アーバンギャルド]
  3. シンデレラブルース~instrumental~
コットンラビッツ盤 収録曲
  1. 夏のOh!バイブス
  2. ヒーローズ
    [作詞:みさこ / 作曲:甘夏ゆず / 編曲:河合英嗣]
  3. ヒーローズ~instrumental~
「バンドじゃないもん!全国ツアー2016 ~てっぺん目指そうぜ!武者修行編~」追加公演
  • 2016年9月19日(月・祝)
    静岡県 HAMAMATSU FORCE
  • 2016年9月30日(金)
    北海道 函館club COCOA
  • 2016年11月12日(土)
    沖縄県 Output
バンドじゃないもん!
バンドじゃないもん!

神聖かまってちゃんのドラマーとしても活躍するみさこ(のちにこのグループにおいてのみ「鈴姫みさこ」に改名)を中心に、ドラム&ボーカルの2人組ユニットとして2011年初頭に結成。ツインドラムでアイドルポップスを歌う独特なスタイルで話題を呼ぶ。2012年10月にワーナーミュージック・ジャパンのunBORDEよりメジャーデビュー。2013年に恋汐りんご、七星ぐみ、望月みゆ、2014年に甘夏ゆず、天照大桃子がそれぞれ加入し、現在の6人体制となる。2014年にメジャーからインディーズに活動の場を移すも、その後2年足らずの活動の中で飛躍的成長を遂げ、2016年1月にポニーキャニオンに移籍し再びメジャーに復帰することを発表。5月にシングル「キメマスター! / 気持ちだけ参加します。」で“再メジャーデビュー”を果たし、7月にはグループ史上最大キャパシティとなる東京・豊洲PITでのワンマンライブを成功させた。同年8月にシングル「夏のOh!バイブス」を発表した。