求められるスピードにすぐ追いつけなくなった

──今のバンもん！は完全にアイドルグループですが、結成当時は“アイドル風ユニット”を自称してましたよね。

アーティスト的な部分は残しておきたかったんです。あと自分で自分を「アイドル」って言うの、自信なくて（笑）。あとでアイドルって名乗るようになったのも、私たちが決めたわけじゃなくて、メジャーデビューのタイミングでワーナーの担当さんが「わかりやすくアイドルって言っちゃおう」ってことにしたからなんです。でも今となってはそのときにきっかけを作ってくれてよかったなって思ってます。

──結成後すぐにメジャーデビューも決まって、当時のメンバーだったかっちゃんとのツインドラム時代はわりと順風満帆にやっているように見えました。

でも自分たちには「これは実力じゃない」っていう思いがけっこうあって……。「いろんな力に助けられすぎてる」って感じてたんです。バンもん！って、そういうことがやりたくなくて始めた活動でもあったから。

──周りからの手助けを受けないでやりたかった、ということ？

言葉にするのは難しいんですけど……、あの頃ロールケーキがブームになりましたよね。ロールケーキって昔からメチャクチャ定番のお菓子だし、好きな人は流行る前から好きだったのに、なんで急にフィーチャーされ始めたんだろうって思ってた。同じように、神聖かまってちゃんは昔から活動してたのに「なぜか急に売れ始めた」っていう感覚だったんです。そのときは周りの人たちがものすごく協力してくれたから、私たちの力で売れたのか、それともそうじゃないのかがまったく実感できなかった。それはすごくありがたいことだったんですけど、もっと自分たちの力で売れたっていう実感が欲しかったからバンもん！を始めたんです。でも……。

──そうはならなかったと。

ですね。初ライブなのに、しかもまだ持ち曲が3曲しかないのにイベントのトリをやることになって、「ヤバい、どうしよう」ってことになったり（笑）。

──なるほど。でも周りからすれば「かまってちゃんのみさこの新ユニット」ってことで、そりゃ注目しますよね。

あと、「ドラムを叩きながら歌う」「女の子が2人いる」っていうコンセプトが面白いなと思って始めたけど、実際にやってみたら1曲仕上げるのにすごく時間がかかって、すぐに周りから求められるスピードに追いつけなくなったんです。メジャーデビューしてからも、やっぱり身の丈に合ってないなと思って。力を貸してくれる人たちの思いにきちんと応えられないっていう、申し訳ない気持ちが強かったですね。

人生を大事にしてほしいなと思ったんです

──みさこさんと同じような気持ちは、当時かっちゃんにもあったんでしょうか？

かっちゃんはもともと女優志望だったんで、本当はきっちり女優業をやりたいのにバンもん！に取られる時間が多すぎるのが辛かったと思います。私もその状況がわかっていたので、メジャーデビューしても本腰を入れられる感じではなかったというか。

──みさこさんもかまってちゃんと両立して活動していたわけで。同じように忙しさや辛さは感じていたのでは？

いやいや、私はないです（笑）。まあ「バンドを掛け持ちしてる人はいっぱいいるから大丈夫だろう」って気持ちでいたら思った以上に大変でしたけど、音楽だけだから私は全然マシです。かっちゃんの場合、女優と音楽の両立だったので。私はかっちゃんに対して、そのバランスをうまくとってあげられないのが申し訳ないなって思ってました。でも今がんばんないとホントにいろんなことに追いつけなくなるっていう焦りもあって。たぶんワーナーさんもそういう空気に気付いてたから、何かを変えようとして新メンバーを入れたんだと思います。

──なるほど。それで恋汐りんごさん、水玉らむねさん、七星ぐみさんが加入したんですね。みさこさんとかっちゃんには知らされないまま、Ustreamの配信中にサプライズで新メンバー追加が発表されたわけですが、そのときどう思いました？

よくわからないうちに人数が倍以上になりましたからね。何も考えられないほどのテンパリ具合でした（笑）。

──ははは（笑）。それまでとは別物のようなユニットに突然変わってしまったわけで、当時は不安もあったのでは？

なんか私って昔から、イレギュラーな問題が起こったときに特に落ち込んだりしなくて、「じゃあどうすればいいかな」って冷静に考えられる人なんです。だからメンバーが増えたことについて思い悩むことはなく、すぐに「この人数だったらどうやってライブすればいいかな」って考えてました。

──新しい編成にはすぐ慣れました？

うん、新メンバーとはホントにすぐ仲よくなって。ただ、3人が入ってきてくれたことによりライブが増えて、バンもん！がさらに忙しくなったんです。それでかっちゃんに改めて、今後もバンもん！に付いて来てくれるかどうか考えてもらうことにしたんです。

──その話はみさこさんから切り出したんですか。

そうですね。かっちゃんってたぶん、自分で辞めるとか言い出すタイプじゃないから。でも将来のことを考えて、続けないほうがかっちゃんのためになるんじゃないかなと思って「辞めたあとのことは全然心配しないでいいから、1回考えてみて」って。そのときはかっちゃんがリーダーだったし、辞めたらツインドラムじゃなくなるし、実際はいろいろ問題あったんですけどね（笑）。それより何より、かっちゃんに自分の人生を大事にしてほしいなと思ったんです。