back numberが12月20日に17枚目のシングル「瞬き」をリリースする。彼らがシングルを発表するのは2016年11月発売の「ハッピーエンド」以来、約13カ月ぶり。表題曲は、佐藤健と土屋太鳳がダブル主演を務める映画「8年越しの花嫁 奇跡の実話」主題歌で、ドラマチックなバンドサウンドと「幸せとは」という歌い出しが印象的なバラードナンバーだ。カップリングには「ゆめなのであれば」と「ARTIST」の2曲が収録される。
音楽ナタリーではメンバー3人にインタビューを実施。シングル「瞬き」の制作を中心に、2017年前半に開催されたアリーナツアー「All Our Yesterdays Tour 2017 supported by uP!!!」の手応え、2018年以降のバンドの方向性などについても語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 上山陽介
自分たちの血が通っているものにしないとダメ
──ニューシングル「瞬き」の表題曲は映画「8年越しの花嫁 奇跡の実話」の主題歌です。書き下ろしの新曲とのことですが、オファーを受けていかがでしたか?
清水依与吏(Vo, G) 映画の主人公(佐藤健が演じる尚志。原因不明の病に倒れ、意識不明になった婚約者を支え続ける)の行動がすごく美しいなと感じて、これは歌詞を書くのが難しいと思いましたね。これまでのback numberの曲は、“どうせ俺なんか”と思っているような男が女性に対して好きとか好きじゃないとか言ってるような歌詞が多かったと思うんですよ。でも今回の曲はそれだけでは作れないだろうなと。
──これまでの制作スタイルを変える必要があった?
清水 そうですね。どうなるかわからないまま曲を作り始めたんですけど、それが新鮮だったと言うか、初めて曲を作ったときの感じにも近くて。メロディはわりとすぐにできたんですけど、最初に思った通り歌詞を書くのが難しかったです。この物語が実話をもとにしていることも意識しました。モデルになった方に起きた出来事をそのまま描いているわけではないものの、この曲がその人たちの人生に強く触れることになると思ったので。
──なるほど。それにしてもこの曲の歌詞は強烈ですよね。「幸せとは」という歌い出しからすごくインパクトがありました。
清水 歌詞はそのあたりからできていったんですけど、書いてるときは「ずいぶん仰々しい歌だな」と思ってました(笑)。大したことは1つも歌ってないし、すべて普通のことばかりだけど、あのメロディが大それた歌にしてくれてると言うか。あと「これは自分たちの歌だ」と思えるものにするのも難しかったんです。しっかり自分たちの血が通ってるものにしないとダメなので、「瞬き」というタイトルを決めたあとも歌詞を少し変えました。
──当然ですが、映画の主題歌であると同時にback numberの作品ですからね。
清水 はい。「ハッピーエンド」(映画「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」主題歌)もそうだったんですが、作っている途中で映画のことをそこまで考えなくなったんですよね。あくまでも自分たちの楽曲として作っていったと言うか。だから「本当に映画と合うのかな?」と思っていたんですが、実際に完成した映画を観たら、主人公の気持ちの断片とも重なっていて安心しました。一番大事なのは「~だよね」とか「~かも」ではなく、「(幸せとは)~ことだ」と言い切ることだと思っていたんですよ。そこをしっかりやり切れたのはよかったかなと。
栗原寿(Dr) サビの歌詞、すごく刺さりますよね。
小島和也(B) 今までとは違う表現だと思うし、サビが繰り返されるたびに意味合いが強くなって、「やっぱりそうだよな」って確信を持てる。読めば読むほど深い歌詞だなと思います。
清水の往生際の悪さはback numberの力
──アレンジ、プロデュースには小林武史さんが参加していますね。小林さんとback numberは何度も一緒に制作していますが、今回はどんなやり取りがあったんですか?
小島 今回はバンドである程度作り込んでから、小林さんにお願いしたんですよ。最初は3連のリズムで「こういう感じはひさしぶりだな」と思っていたんだけど、アレンジの段階でさらに変わっていって。
栗原 小林さんが提案してくれたアレンジは僕らが最初にやろうと思っていたことと真逆だったんです。音数を少なくしてどっしり構えたドラムにしようと思っていたら、小林さんのアレンジではガッツリとフレーズが入ったものになっていて。
清水 ドラムがそれだけ変わったら、曲の聴こえ方も全然違うからね。
栗原 そう。レコーディング当日も「こうしてみよう」というアイデアが出てきて、さらに盛りだくさんになって。ドラムに関してはかなり生みの苦しみがありました。
清水 小林さんにはこういうバラードのシングルのときにお願いすることが多いんですけど、ストリングス、ピアノのアレンジも含めて、今回も「やっぱりすごいな」と思い知りました。今までは1曲ずつだったから、いつか3曲とか5曲とかまとめて総合プロデュースをお願いしたいなという気持ちもあります。バラードだけではなくて、いろんなタイプの曲で一緒にやってみたいなと。
──歌詞の面では新しいトライがあって、サウンドメイクでは小林さんとの相性のよさも確認できて。発見の多い制作になりましたね。
清水 そうですね。本当にデッドラインのギリギリまで、僕自身の中で決着が付くまで制作していたので、自分は本当に往生際が悪いんだなと思ったけど(笑)。最後の最後の「これ以上は無理です」というところまで「もっとよくなるように」って考えるタチなんです。でもそれはback numberの力になっていると思うんですよ。この曲だけではなくて、あきらめないでずっとやってきてよかったなと再確認できました。最近はレコーディングが終わったあと「あそこだけやり直したいです」って歌い直すこともけっこう多くて。
──すごい(笑)。「瞬き」のクオリティは本当に高いと思うし、back numberにとっては新しい表現に踏み出した楽曲でもあって。
清水 そうですね。最初にも言いましたけど、新鮮な気持ちでやれたところもありましたからね。メジャーデビューしてから5、6年経って、そういう気持ちになれたのもいいことなのかなと。完成までにかなり時間がかかりましたけど(笑)。
「胸触りたい」は大丈夫?
──カップリング曲の「ゆめなのであれば」「ARTIST」も「瞬き」とはまったく違う方向で振り切っていますね。「ゆめなのであれば」はすごくポップな楽曲ですが、歌詞のシチュエーションが「夢の中で“これは夢だ”と気付いた男が、好きな女の子に近付いて、触れようとする」っていう。これ、ヤバい人の歌詞ですよね(笑)。
小島 僕も同じことを思ってます(笑)。
清水 歌っていいことと悪いことの区別が付かなくなってるのかも(笑)。こういう歌詞が書けたのはたぶん「瞬き」ができたことが大きいんですよ。以前だったら「自分たちはそんなキャラじゃないよな」「こういうことは歌えない」という感じで「瞬き」みたいな歌詞は歌えなかったと思うんですけど、それを照れないでしっかり歌えたことで1つ殻を破れたんじゃないかなと。「ゆめなのであれば」も「ARTIST」もそうなんですよね。「今まではやってなかったけど、とりあえずやってみよう」という感じで書いてみたら「これは面白いな」と思えて。「ゆめなのであれば」なんて、最後に「胸触りたい」って歌ってますから(笑)。
──「そして君と夢の中 胸触りたい」という歌詞は衝撃的でした。
小島 この歌詞がメンバーのグループLINEで送られてきたときに僕は「胸触りたい?」って返したんですよ。「これは大丈夫なの?」というニュアンスのつもりだったんですけど、寿は「この歌詞、いいですね!」って返していて、依与吏も「じゃあ、これでOKね」って(笑)。そこで俺が「これはやめたほうがいい」って言うのも違うかなと……。
清水 いやいや、そこは言ってもらっていいんだけどね。そのためにLINEで送ってるんだから。
栗原 正直僕もまだ仮の歌詞だと思ってたから「この部分の歌詞はあとで変えるんだろうな」と思って「この歌詞、いいですね!」って返したんです(笑)。全体的なテーマはすごくいいと思ったから。
清水 ははははは(笑)。
小島 面白い歌詞だなと思いますよ、もちろん。こんな発想は自分にはないですから。
清水 夢の中で「これは夢だ」って気付くことってあるじゃないですか。そういう歌詞は見たことがなかったし、やってみたら面白いんじゃないかと思ったんですよ。
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振り切った歌詞を書いたことで解放された
- back number「瞬き」
- 2017年12月20日発売 / UNIVERSAL SIGMA
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初回限定盤 [CD+DVD]
1944円 / UMCK-9928 -
通常盤 [CD]
1080円 / UMCK-5643
- CD収録曲
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- 瞬き
- ゆめなのであれば
- ARTIST
- 瞬き(instrumental)
- ゆめなのであれば(instrumental)
- ARTIST(instrumental)
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 「瞬き」music video
- 「瞬き」making of studio recording&music video&photo session&back number exclusive video
- back number「All Our Yesterdays Tour 2017 at SAITAMA SUPER ARENA」
- 2017年11月15日発売 / UNIVERSAL SIGMA
-
初回限定盤
[2Blu-ray Disc+グッズ]
7560円 / UMXK-9017 -
初回限定盤 [2DVD+グッズ]
6480円 / UMBK-9298 -
通常盤 [Blu-ray]
6264円 / UMXK-1051 -
通常盤 [DVD]
5184円 / UMBK-1255
- 収録内容
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- はなびら
- 高嶺の花子さん
- 003
- そのドレスちょっと待った
- 花束
- クリスマスソング
- fish
- 黒い猫の歌
- アップルパイ
- MOTTO
- SISTER
- 幸せ
- 助演女優症
- 恋
- ハッピーエンド
- 君の恋人になったら
- 光の街
- stay with me
- 繋いだ手から
- 青い春
- スーパースターになったら
- 世田谷ラブストーリー
- 日曜日
- 海岸通り
- 初回限定盤付属DISC 2収録内容
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- 全公演密着ドキュメンタリーメイキング映像
- back number ドームツアー
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- 2018年7月29日(日)愛知県 ナゴヤドーム
- 2018年8月11日(土・祝)東京都 東京ドーム
- 2018年8月12日(日)東京都 東京ドーム
- 2018年10月27日(土)大阪府 京セラドーム大阪
- 2018年10月28日(日)大阪府 京セラドーム大阪
- back number(バックナンバー)
- 2004年に清水依与吏(Vo, G)を中心に群馬県で結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年に小島和也(B, Cho)と栗原寿(Dr)を加えた現在の編成に。2009年に発売した初のミニアルバム「逃した魚」は大手レコード店で絶賛され、全国的に話題となる。2010年にフルアルバム「あとのまつり」を発表し、美しいメロディに切ない歌詞を乗せるというスタイルを確立。2011年4月にシングル「はなびら」でメジャーデビューした。2013年には東京・日本武道館でワンマンライブを成功させ、その後もコンスタントに作品を発表。2015年12月に5thアルバム「シャンデリア」をリリースしたのち、2016年1月からはアリーナ公演を含む32カ所39公演のツアーを実施。11月にシングル「ハッピーエンド」を、12月にキャリア初のベストアルバム「アンコール」をリリースした。2017年2月から約4カ月にわたる自身最大規模の全国ツアー「back number "All Our Yesterdays Tour 2017"」を開催した。12月に佐藤健と土屋太鳳のダブル主演映画「8年越しの花嫁 奇跡の実話」の主題歌「瞬き」をシングルリリース。2018年1月よりファンクラブツアー「one room party vol.4」を行う。