ナタリー PowerPush - buck number

3人の成長を刻み込んだニューシングル

小さな幸せに気付けるような精神状態でないと歌えない

──「日曜日」の作曲は、清水さんとシンガーソングライターの川村結花さんの共作ですね。

清水 はい。自分たちの音楽をより進化させたくて今回川村さんにお願いしたのですが、今までやったことのないコード進行が多くて最初は泣かされました(笑)。川村さんはピアノで作られる方なので、ギターでの曲作りとは違うコードのぶっ飛び具合というか……「(弦に届かなくて)小指をもう1本ください!」みたいなやつがバンバン入ってて(笑)。これはどうしても無理だっていうところは少しアレンジさせてもらったんですが、その中で新たな音楽との出会いがあったり、メンバー全員とてもいい勉強になったと思います。

──栗原さんは今回のテンポやリズムに関してはいかがですか?

インタビュー写真

栗原 今までにない感じのミドルテンポというか。昔のback numberって、わりと悲しい曲や暗めの歌も多かったんですけど、去年あたりから温かみのあるものやポップなナンバーも生まれるようになってきてて。そういう流れを踏まえての今作……という感じで、結果的に成長が確認できる1曲になった気がします。

──ライブでの反応はいかがでしたか?

清水 これをやると会場がすごく温かい空気になりますね。でも僕らにとっては、やればやるほど難しくなっていくというか……。

──と、いうのは?

清水 みんなで手を挙げてワーッと騒ぐ曲じゃないし、かと言って悲しく切ないバラードでもない。どっちかに振り切ってると感情も込めやすいんですが、この曲はその中間というか、「小さな幸せ」みたいな感情を表現するのってすごく難しいんです。ツアー中は正直、「今日(のパフォーマンス)は“日曜日”というより月曜日だったな」っていう日もあったし(笑)、僕は歌にかなり苦労しましたね。

──“日曜日”のパフォーマンスをするのは、なかなか難しいんですね。

小島 はい。練習中もメンバー内で「今のはまだ火曜日くらいだね」とか言いながら(笑)。

清水 良くなってくると「だんだん週末感出てきたよね?」みたいな(笑)。歌詞のとおり、ちゃんと小さな幸せに気付けるような精神状態でないと歌えないなっていうのは強く思いましたね。

迷いを吐き出したい気持ちで音楽をやってきた

──2曲目「one room」は「日曜日」とは対照的に切ないナンバーです。

清水 この曲に関しては自分の中のスタンダードな部分が出せたなというか。元々、こういうことが歌いたくて音楽やってるんだろうなっていうところがあるんですよね。

──「こういうこと」とは?

清水 後悔の念とか、幸せを求めるがゆえに迷ってしまう気持ちとか。

──なるほど。歌詞の主人公は終わってしまった恋を憂う男性ですが、彼女がいなくなった部屋で1人過ごす情景が、これまたリアルに想像できます。

清水 僕、この場面がすごく好きで。今までも歌ってきたような内容ではあるんですけど、この曲はそれをいろんな意味で突き詰めた、僕の失恋ソングで現段階の最高点ですね。

──清水さんは、先程「自分の中のスタンダード」とおっしゃいましたが、どちらかというと「日曜日」のような幸福な曲より、こういう切ない楽曲のほうがしっくりくるんですか?

清水 もちろん「日曜日」みたいな曲も歌いたいと思うんですけど、どこか心に迷いがある歌のほうが逆に歌うと心がスッキリするというか。基本的には迷いを吐き出したいっていう気持ちで音楽をやってきたところも大きいので。

──そうなんですね。

清水 はい。でも「日曜日」も、実は迷いがある曲ではあるんです。「アイドルと付き合えなくたって」とか「有名になれなくたって」とか歌ってるけど、本当はそういうことも諦めてなくて(笑)、そこを踏まえての幸福なんですよね。

──ちなみに、清水さんの歌詞にはどのくらい自身のリアルが含まれているんでしょう?

清水 もう、完全に自分だらけですよ(笑)。若干の妄想も含みつつですけど、基本は実話から作り始めることが多いですね。自分がリアルに感じたことじゃないと、そもそもの切り口がわからないんですよ。

ニューシングル「日曜日」2012年5月30日発売 1050円(税込)UNIVERSAL SIGMA UMCK-5383

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CD収録曲
  1. 日曜日
  2. one room
  3. アイアムノットイナフ
  4. 日曜日(instrumental)
  5. one room(instrumental)
  6. アイアムノットイナフ(instrumental)
buck number(ばっくなんばー)

back number

2004年に清水依与吏(Vo, G)を中心に群馬で結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年に小島和也(B, Cho)と栗原寿(D)を加えた現在の編成となった。最初の音源は、2009年に発売されたミニアルバム「逃した魚」。大手レコード店で絶賛され、全国的に話題となる。2010年にはフルアルバム「あとのまつり」を発表し、美しいメロディに切ない歌詞を乗せるというバンドのスタイルを確立した。2011年4月にシングル「はなびら」でメジャーデビュー。さらに同年、「花束」「思い出せなくなるその日まで」という2枚のシングルに加え、メジャー1stアルバム「スーパースター」を発表した。2012年に入ると初のワンマンツアー「恋は盲目ツアー2012」を敢行し、全公演大盛況にて幕を閉じる。そして、3月に4thシングル「恋」、5月に5thシングル「日曜日」をリリース。同曲はバンド初となるドラマ主題歌として、HMC・TBS系ドラマ「スープカレー」でオンエアされている。