音楽ナタリー Power Push - Awesome City Club

戦略的? 衝動的? オーサムの選ぶ“ペース”とは

今年4月、アルバム「Awesome City Tracks」でビクターエンタテインメント内の新レーベル・CONNECTONEからデビューを果たしたAwesome City Club。彼らから早くも2枚目のアルバム「Awesome City Tracks 2」が届いた。これまでライブで演奏していた「愛ゆえに深度深い」「WAHAHA」「GOLD」や、クラウドファンディング限定リリースというトピックで話題を集めた「アウトサイダー」など、前作と同じボリュームの7曲が収録されている。

今回はバンドを代表してatagi(Vo, G)とPORIN(Vo, Syn)にインタビューを実施。デビュー当初に各方面から“戦略的なバンド”と評された彼らの真意や、早いペースで活動を進める理由を聞いてみた。

取材・文 / 宇野維正 撮影 / 福岡諒祠

曲を寝かせないバンド

──4月にリリースしたデビューアルバム「Awesome City Tracks」に続いて、早くも2ndアルバムが完成しました。ペースが速い!

atagi(Vo, G) はい(笑)。

PORIN(Vo, Syn) あはは(笑)。

──しかも、今回の作品で改めて思ったんですけど、前作も今作もミニアルバムではなく、あくまでも「7曲入りのアルバム」なんですよね。そこにオーサムからの1つの提案というか、主張のようなものを感じるんですけど。

atagi(Vo, G)

atagi そうですね。今の音楽業界のセオリーだと、シングルやミニアルバムを出して、最終目標がフルアルバムってことになるわけですけど、僕らはあまりそういうことを考えていなくて。前作や今作のように7曲というボリュームの作品を1つのアルバムとしてパッケージングして、それをコンスタントに出し続けていく。それが、なんとなく今の自分たちのペースに合っているんですよね。

──ああ、これは作り手としての生理にもとづいたものなんですね。

atagi まずはそこですね。

──作品を受け取るリスナーにとって、12曲とか1時間というフルアルバムのフォーマット自体が、時代的にヘビーなものになっているんじゃないかって。そういう提案かとも思ったんですけど。 

atagi それもあります。もうリスナーとしての肌感覚として、自分も8曲か9曲くらいまでがちょうどいいから。

PORIN 私は7曲がほんとにちょうどいい(笑)。

atagi 12曲も13曲もあると、曲がかわいそうに思えてくるんですよね。

──かわいそう?

atagi みんながSNSとかLINEとかやっていて情報があふれてるこの時代、アルバムに曲がそれだけあると、あまり聴かれない曲、飛ばされちゃう曲がどうしても出てきちゃうじゃないですか。

──いくら作り手が手を抜いてなくても、聴き手がそのボリュームを消化できないっていうことですね。それはわかるかも。

atagi あと、全7曲ってところから生まれる、作品のスピード感も好きで。スピード感っていうのは、リリースのペースとしても、作品の中身としても、僕らが大切にしているところだから。

PORIN(Vo, Syn)

PORIN なるべくフレッシュな状態でリスナーに曲を届けたいんですよね。そうすると、今のやり方が一番しっくりくる。

──なるほどねえ。じゃあ、例えばこの先に12曲とか13曲とか入ったフルアルバムを作ることは今のところ念頭に置いてない?

atagi 今はまったく考えてないですね(笑)。

──今、PORINさんは「なるべくフレッシュな状態で届けたい」って言ってましたけど、ということは、オーサムはあまり曲のストックを持たずに次から次へと作っては出している感じ?

atagi 完全にそうですね。たぶん、同業者から見たら「え? マジで大丈夫?」って言われるくらいストックがない。

──ここぞという時の勝負曲をまだ寝かせているとか?

atagi ないない(笑)。

PORIN 何も寝かしてないよね(笑)。

atagi 曲のパーツみたいなものはいくつか寝かしているものもあるけど、個人的にはそれをわざわざ掘り返していくつもりはないですね。メンバーがやりたいって言ったら考えますけど、それよりもどんどん新しい曲を作っていきたい。

2ndアルバム「Awesome City Tracks 2」 / 2015年9月16日発売 / 2160円 / CONNECTONE / VICL-64421
「Awesome City Tracks 2」
収録曲
  1. GOLD
  2. what you want
  3. WAHAHA
  4. 僕らはここでお別れさ
  5. 愛ゆえに深度深い
  6. アウトサイダー
  7. Lullaby For TOKYO CITY
Awesome Talks -One Man Show-
  • 2015年11月6日(金)愛知県 APOLLO BASE
  • 2015年11月13日(金)大阪府 Shangri-La
  • 2015年11月15日(日)福岡県 DRUM SON
  • 2015年11月28日(土)東京都 UNIT
Awesome City Club(オーサムシティークラブ)
Awesome City Club

「架空の街Awesome Cityのサウンドトラック」をテーマに、テン年代のシティポップを“RISOKYO”から“TOKYO”に向けて発信する男女混成5人組バンド。2013年春、それぞれ別のバンドで活動していたatagi(Vo, G)、モリシー(G, Syn)、マツザカタクミ(B, Syn, Rap)、ユキエ(Dr)により結成。2014年4月、サポートメンバーだったPORIN(Vo, Syn)が正式加入して現在のメンバーとなる。初期はCDを一切リリースせず、音源はすべてSoundcloudやYouTubeにアップし、早耳の音楽ファンの間で話題となる。ライブを中心に活動しており、海外アーティストのサポートアクトも多数。2015年、ビクターエンタテインメント内に設立された新レーベル・CONNECTONE(コネクトーン)の第1弾新人アーティストとしてデビュー。4月にmabanuaプロデュースの1stアルバム「Awesome City Tracks」、9月に2ndアルバム「Awesome City Tracks 2」をリリースした。