小学校でBOØWY、中1でイカ天、中3でクラブデビュー

──ILMARIさん、最初に買ったCDは何か覚えてますか？

ILMARI　初めて買ったのはチェッカーズか、マッチ（近藤真彦）の「スニーカーぶる～す」。幼稚園の頃。「ザ・ベストテン」とか観て、テレビの音声をカセットに録音して、よっぽど欲しいやつだけ親にレコードを買ってもらってた気がします。

──その後、好きになったアーティストやジャンルは？

ILMARI　小3、4の頃にBOØWYですかね。6年のときに解散したんですけど。バンドものは洋楽も邦楽もけっこういろいろ聴いてましたよ。Bon Joviとか、RED WARRIORSとか、THE PRIVATESとか。

──そういうロック好きな少年だったなら、ギターを始めようとは思わなかったんですか？

ILMARI　ならなかったですね。うちそんなに裕福じゃなかったんでギターは買えませんでした。

PES　ダンボールだっけ？

ILMARI　ダンボールで作ったギター弾いてました（笑）。そのあと中1になると「イカ天」（「三宅裕司のいかすバンド天国」）が始まってバンドブームが来て。ユニコーンとかジュンスカ（JUN SKY WALKER(S)）とか、聴いてましたね。で、中2か中3くらいからヒップホップです。クラブ行き出したのもそれぐらいです。

PES　ダメだよね（笑）。

ILMARI　クラブ行ってる中3なんて俺以外いなかったもん。

PES　みんなまだ「クラブ」っていうと部活のほうだもんね（笑）。

ILMARI少年の音楽情報源

──学生時代はどんな方法で新しい音楽に触れていましたか？

ILMARI　やっぱりCD屋さんと、ケーブルテレビと、友達との情報交換。インターナショナルスクールだったんで、友達が撮り貯めてくれた「Yo! MTV Raps」（※MTVで1988年から1995年まで放送されていたヒップホップ番組）から自分が気に入ったミュージックビデオの曲をメモって、レコード屋行って買ってたかな。お金ないから今より全然買えなかったけど、学校帰りにとりあえずお店寄ってました。

PES　かわいいー。

ILMARI　かわいいよね。

PES　俺もやってた。

ILMARI　あと俺とRYO-Zくんの先輩にDJがいて、ビデオとCDのレンタルショップで働いてたんですね。その人がコアな音楽もいろいろ教えてくれて。例えばMC HammerのCD借りようとすると、「いやお前こっちだろ」とか「ギャングスタ聴けよ」とかいろいろ勧められて、その人が推すものをRYO-Zくんと勉強してましたね。日本語ラップや日本語のレゲエを教えてくれたのもその人。「ブギー・バック」もその店で短冊のシングルCDで借りた気がします。

FUMIYAが入らなかったら普通にヒップホップやってただろうな

──RIP SLYMEの音楽性はどのように組み立てられたんでしょうか。

PES　最近、リップの録音スタジオを作ってるんですけど、そこにフレームアートで何か絵を飾ろうと思って。フレームに入れるもん何がいいかなってネットで探してたら、やっぱりメンバーみんなが好きだったヒップホップグループの写真になったんですよね。5人の共通言語として。それをトイレに飾ったら、懐かしいなあっていうかやっぱここは基本になってるなと思いましたね。

ILMARI　でもフロント4人とかのヒップホップのアーティストって、海外でももうあんまりいなくない？

PES　儲からないもんね。

ILMARI　（笑）。あとまあ相当面倒くさいんだろうね。集団活動ですから。

PES　で、最初はそういう人たちが好きでラップ始めたんですけど、FUMIYAが入らなかったら、たぶん普通にヒップホップやってただろうなって思いますね。トラック作るヤツがかなり雑食なものを出してくるようになったから、ジャンルがよくわかんないっつうか、ポップというか、いわゆるヒップホップっぽいものではなくなったんだろうなと。FUMIYA自身の好みとか持ってるものを投影して作ることで、オリジナリティのあるものができてきたんだと思います。

──なるほど。

PES　あと、今回のシングル（「POPCORN NANCY / JUMP with chay / いつまでも」）でトラック制作にJazzin'parkに入ってもらったりして、いろんな人の仕事を見たけど、やっぱりみんな器用なんですよ。リップのメンバーも周りから「こういうの作らない？」って言われたら一応順応する感じは見せるけど、そこまで器用じゃないからこそ、音楽的にも独特のカラーができたんじゃないかな。

ILMARI　うん。FUMIYAの存在はすごいでかいですね。5人ともThe Pharcydeが好きっていうのは共通してるんですけど、そのあとの発展の仕方はまた全然違う。FUMIYAはヒップホップからとんどん離れて……まあずっと好きだとは思うけど、最近のヒップホップをどんだけチェックしてるかっつったら、たぶんそんなに聴いてない感じがしない？

PES　そうだね。

ILMARI　根本的にずっとダンスミュージックではあるけどね。

PES　ただ、FUMIYA自体はそんなに踊らない（笑）。

ILMARI　踊らないね。

PES　あははは（笑）。ここポイントですよ。FUMIYAは実は踊らない。

──4人のラップはどうですか？ 例えば世の中の流行りを取り入れたりはします？

ILMARI　今の若い日本のヒップホップの人たち、トラックの感じとかは海外のトレンドをけっこう取り入れてるじゃないですか。リップはああはならないですよね、わざとじゃない限り。

PES　リップの場合は、乗せるオケとか雰囲気に合わせるかな。曲を作る時点から、スタッフとかメンバーがそのとき思いついたことに乗っかっていくっていう形が多いんで。まあ、その中に今風なものがあればそうなるし。なるべく器用にはしようとしてるけど、根本的に音楽やってる人間なんて不器用ですからね。