あたし「イベリス」インタビュー|あたしの声、あたしの言葉で伝える「あたし」の音楽 (2/2)

相手のことを長く、ずっとまっすぐに愛しているんです

──そして今回、MBS系ドラマ「4月の東京は…」の主題歌として「イベリス」という新曲を発表されました。主題歌を担当することが決まったときのことは覚えていますか?

はい! 本当に、めちゃくちゃうれしくて。うれしさのあまり、発表前に口を滑らせそうになったりもしました(笑)。

──そうだったんですね(笑)。あたしさんが「4月の東京は…」から受け取った印象はどのようなものでしたか?

原作のマンガを読ませていただいたのですが、登場人物がすごくまっすぐな気持ちを持っていて。大人だから言えないこと、できないことがあるというもどかしさもありつつ、すごく美しい作品だなと思いました。第三者から見たら「そこは押していこうよ!」と思ってしまうような場面も多いんですけど、実際に自分がその立場だったら絶対に登場人物と同じようになるだろうし、立場があるから前に進めないという葛藤には共感がありました。「自分が当事者だったら、そんなに素直に言えないよなあ」なんて思いながら。

──そうやって作品から受け止ったものを、歌詞としてどのようにアウトプットしていったのでしょう。

強く印象に残るシーンがすごく多いなと思ったんです。物語において大切な場面がすごく丁寧に描かれていて、そこが素敵だなと思ったので、そういったシーンをモチーフにしながら歌詞に落とし込んでいった感じです。なので、作品を観たあとにこの曲を聴くと、「ここはあのシーンだよね」とわかっていただけるかなって。1番の歌詞は、特にそれを感じていただけるかと思います。

──サビの「100万回100億回の愛してる」というフレーズの繰り返しがすごく印象的ですよね。

ありがとうございます。「4月の東京は…」の登場人物って、相手のことを長く、ずっとまっすぐに愛しているんですよ。それを思い浮かべながら歌詞を考えて、「こういう言葉が合っているんじゃないかな?」と思って入れたフレーズです。

──そうだったんですね。あたしさん的に、特に気に入っているフレーズなどはありますか?

「頭じゃわかってるのに 心が追いかけて止まらない」や「初恋みたいなトキメキ しつこいぐらいに伝えたい」は、素直な思いはありつつもどかしくなってしまう、恋愛をしているときならではの気持ちが詰まっている部分なので、ここは特に好きだなと思います。

あたし

──楽曲タイトルの「イベリス」は白い花の名前ですが、このタイトルにした理由は?

「曲のタイトルはお花の名前とかがいいな」と思って調べたときに見つけたんです。この花の名前にした理由は花言葉とか、いろいろあるんですけど……イベリスという花が和真の性格だったり、和真と蓮の出会いにすごく合っている素敵な花だと思ったんです。よかったら皆さんもイベリスのことを調べてみてもらえたらと思います。

──確かに、花言葉などを調べてみると、「4月の東京は…」との親和性に「なるほど!」となりますね。

そうなんです。もちろん、お花自体もすごく素敵なんです。

感情の赴くままに

──では、歌唱についてはいかがでしょう。すごく繊細な心情を表現されているボーカルだと感じました。

「歌ってみた」での経験を含め、こんなに正統派のバラードを歌った経験がこれまでになかったのでめちゃくちゃ難しくて。「どう歌えばいいんだろう?」という思いが自分の中にあったので、家でもしっかり練習しました。特に、サビの「100万回100億回の愛してる」というフレーズはすごく印象的ですし、何回も繰り返される部分なので、すごく大切に歌いました。

──同じ「100万回100億回の愛してる」というフレーズでも、この歌詞が出てくる場所によって聞こえ方が変わるように工夫されているのかなと感じました。MAISONdesであたしさんが歌った「わかっちゃない feat.あたし, zumiTa」にも「わかっちゃない」というフレーズのリフレインがありますが、この曲でも場面場面で「わかっちゃない」をしっかり歌い分けていらっしゃいましたよね。

「わかっちゃない」は感情の赴くままに歌ったので、歌詞にメモを書き込んだりもしていなくて。それと同じように、「イベリス」も自分が感じたままに歌いました。

妄想も自ずとたくさんできるように

──あたしさんは、恋をしている人の繊細な感情を歌詞で描写するのが得意なのではと思ったのですが、ご自身ではどう思いますか?

私、妄想することがけっこう好きで。恋愛にまつわる歌詞も、頭の中で想像したことをもとに書くことが多いんです。恋愛の物語を考えたりするのが好きなんですよ。もちろん全然思い浮かばないときもあるけれど、特別難しいと感じたことはないです。

──妄想なんですね。それにしては肌触りがリアルというか……。

解像度、高いですかね?(笑)

──そう思います。共感性が高いというか。恋愛マンガやドラマはお好きだったりしますか?

好きです。Twitterのタイムラインに流れてくるマンガとか、Instagramの広告で流れてくるマンガとかも、すぐ気になって買っちゃうんですよ。そういうものばかり読んでいると、妄想も自ずとたくさんできるようになります(笑)。

──ちなみに、歌詞を書くときはどのように作業を進めているんですか?

決まりはなくて、そのときどきでバラバラかもしれないです。考えつくタイミングも、お風呂に入っているときとか、寝る前とか……。寝る前って、考えごとをする時間があるじゃないですか。そういうときにアイデアを思いついて、書き留めたりしています。

あたし

いろんなあたしを知ってほしい

──これからの活動についても聞かせてもらえたら。ここから、どのように進んでいきたいと考えていますか?

もちろん歌を通して自分のことをいろんな方に知ってほしいという思いがありますし……歌以外に、こうしてお話をすることも好きですし、ライブもたくさんしたいなと思ったりしています。

──あたしさんは、ライブでは顔出しをしてパフォーマンスをされていますよね。

そうですね。メディアに出るときは、もう少し隠したままにさせてもらおうかなと思っています。

──ありがとうございます。では最後に、読者の皆さんに伝えたいことがあれば、お願いいたします。

私は、歌う曲によって自分の中でキャラクターを変えて歌っています。きっと聴いていて面白いと思うので、オリジナル曲や歌ってみた動画など、ぜひたくさん聴いていただいて、いろんなあたしを知ってほしいなと思います。

プロフィール

あたし

2020年に「現役女子高生あたし」名義で歌い手として活動をスタートさせ、高校在学中にYouTubeに投稿した「グッバイ宣言/Chinozo 【歌ってみた】」が500万再生を記録し注目される。2021年、SDR「クリエイターズマッチングプロジェクト」での歌唱部門・チーム部門のダブル受賞をきっかけにクリエイティブレーベル・MeMeMeetsに参加。テレビドラマ「東京放置食堂」の主題歌「碧の宵」で歌唱を担当した。2022年に、あたし名義でのプロジェクトが始動し、5月に「太陽観測」でデビュー。同年8月、MAISONdesにzumiTaとともに参加し、032号室の住人として「わかっちゃない」を、2023年6月にテレビドラマ「4月の東京は…」の主題歌「イベリス」を配信リリースした。