この3人でやってみたらピンと来た

──ソロの前作「Nancy」は抒情的な楽曲が中心でしたが、今回のシングルはエッジの立ったロックンロールが軸になっていて。それもこの3人で音を出したことによる必然だったんでしょうね。

浅井　それは絶対、どこかにあるよね。「Messenger Boy」に関しては、前からあったフレーズがもとになってるんだわ。歌詞もすでに存在しているんだけど、なかなか形にできなかったんだよ。でもこの3人でやったらいい感じになったから、初めて「これは絶対に発表できるな」と思って。

──以前にも曲にしてみようとトライしたことがあるんですか？

浅井　あるよ。SHERBETSでもやったことあるし。

中尾　あ、そうなんですか。

浅井　うん。でも「何か違うな」って感じで、自然とやらなくなった。曲にしたいんだけど、なかなか完成しないフレーズやリフがいっぱいあるんだよ、レコーダーの中に。それをこの3人でやってみたらピンと来たというか、すごくいい形になったということだよね。

──まだ曲になってないリフもあるんですか？

浅井　あるよ。リフを作るのはそんなに大変じゃなくて、それを使って曲にまとめるのが大変なんだわ。今回のセッションでも、まとめきれなかった曲はあるし。まあ、ある日突然できたりもするけどね。

不思議な行為だよね、歌詞を探すっていうのは

──「Messenger Boy」はホテルのメッセンジャーボーイが主人公で、「American Blitz Kids」は“人の心をわくわくさせることを学ぶ”架空のクラスが舞台。本当に豊かな想像力に満ちていますが、こういう歌詞のビジョンはどうやって生まれてくるんですか？

浅井　曲ができてきて「この場面、このメロディで何を言えばいいだろう？」って考えるだけなんだけどね。もう何百曲と作ってるけど、その言葉を見つけるのは大変なことでもあり、実はすげえ楽しい……いや、楽しくはないか。

中尾　あはははは（笑）。

浅井　でも不思議な行為だよね、歌詞を探すっていうのは。自然界にはないことというか、ほら、お米を作るとかさ、それはよくわかるじゃん。

──太古から行われている行為ですからね。

浅井　でも、歌詞を書いたりとか、こういう行為（鍵盤を弾くマネ）とか、ヘンでしょう？ ケータイでメールを打つのもヘンだし。ドラムとかはいいよね。原始時代から叩いてただろうし。

小林　そうですね（笑）。

──確かにそうかも……って、何の話でしたっけ？

浅井　何の話をしてたかなんて、わからなくていいんじゃない？（笑）

──浅井さんは絵も描かれていて、今年6月には作品集「FRED & SUSAN」を発表しました。歌詞を書くことと絵を描くことは連動しているんですか？

浅井　連動というか、似てるところはあるだろうね。何もないところから作るわけだから、絵も歌詞も。想像力から何かを表すわけだけど、それを目に見えるものにするか、見えないものでやるかっていう。

自分で「すげえ！」ってビックリした

──「Rat Party」はストーリー性が強い楽曲ですね。

浅井　これは2人と出会ってすぐに作った曲なんだけど、「地下街の片隅で 生きているネズミ」から始まって、このあとはどうしよう？って思ったんだよね。それから“ローラースケートで地面を滑りながら、食べ物を盗む”っていう「トムとジェリー」みたいな世界を思い付いて。ネズミは「空ってものがあるらしい」って噂を聞いて、冒険に行くんだよ。ずっとアンダーグラウンドにいるから、空なんて言われてもぜんぜん想像つかないからね。で、最後はどう終わればいいかずっと考えていたんだけど、ある日「死んでいたネズミ見て」という歌詞を思い付いて、自分で「すげえ！」ってビックリした。これはいい歌だなって思ったよ。なぜかそんなストーリーができたから、みんなにも「Rat Party」の世界を知ってほしい。

中尾　曲を作っているときは、まさかそんな結末になるとは思ってなかったんですよね。ベースラインもモータウンみたいなリズミカルな感じなんですけど、あるときリハーサルで最後に歌詞が聞こえてきて「ええーっ!?」ってなった記憶があります（笑）。

小林　私もビックリしました（笑）。中尾さんのベースがノリノリだったからドラムもそういう感じになってたんですけど、最後に「死んじゃうの？」ってショックを受けて。

浅井　そうだよね（笑）。初めは適当な宇宙語で歌っていて、その後いろいろと歌詞を試していくから。

中尾　リズミカルな感じが、余計に切なさを強調する曲になりましたね。