音楽ナタリー PowerPush - AREA51

海外プレイヤーと生み出す“日本語メタル”

イングヴェイ、インペリテリの影響をオリジナルに

──ネオクラシカル系の楽曲でテクニカルな要素を追求すると「イングヴェイ・マルムスティーンっぽい」ってなりがちじゃないですか?

石野 うん、それも1つの表現なんでしょうけど、自分はそうはしたくないなって思うんですよね。プレイスタイルってもともとは全部何かしらの影響を受けて生まれるものじゃないですか。だからイングヴェイとかクリス・インペリテリとか色んなものの影響を自分の中でどうミックスしてどう昇華していくかってことが大切だと思います。テクニックを吸収してそのまま真似するんじゃなくて、自分にしか出せない方向にどう持っていくかっていう。オリジナリティって実はそんなに複雑なことじゃないし、自分にしか出せない解釈の仕方を突き詰めていくことで自然とオリジナリティが生まれて、本物になると思うんです。

──それだと例えばCONCERTO MOONの島紀史さんがイングヴェイ以降のネオクラシカルスタイルを踏襲してるのが“本物”じゃないってことになっちゃいません?

石野 島さんのテクニックってイングヴェイ以上だったりするからなあ(笑)。彼の“本物”の表現方法って、イングヴェイ的なアプローチを盛り込みつつ「イングヴェイ超えてるやん!」みたいなところがすごいと思うんですよね。俺がキッズのときに、島さんがドーンってギターヒーローとして出てきてたんで、逆にもうそれを超えるってなったら、相当な壁だなと感じましたし。技術的に島さんみたいには弾けないから、逆にそうじゃない表現の仕方を見つけたいなって気持ちになりました。ちなみに俺の最初のギターって島さんが大阪の楽器屋でバイトしてたときに、彼から買ってるんですよ(笑)。

「Valkyrja」はももクロの影響でできた

──2人はどのような邦楽に影響を受けたんですか?

石野 日本の音楽だったらやっぱりもうXでしょうね。Xをおいてほかにないっていうか。あと今でこそインターネットがあるからいろいろ海外にも情報を発信できるけど、それがない時代に海外への道を切り拓いていったこととかにも影響を受けました。

Kate メタルとかあんま聴かない人だったんですけど、Xで初めてああいう激しいヘドバンとかするようなバンドを知りましたね。あとはノンジャンルです。Base Ball Bearさん、アジカンさんみたいなロック系からファンクやポップスも。最近すごくはまっているのは miwaさん、ももクロさん、関ジャニ∞さんとか……。

──アイドルもいますね。

Kate(Vo)

Kate アイドルさんからはとにかく元気がもらえるから好きなんです。実は今回、ももクロを頭に浮かべながら作った曲もあるんですよ。

──どれですか?

Kate 「Valkyrja」って曲です。ライブ会場で感じたオーディエンスの熱気を表現してます。

石野 この曲はダークが叩いてくれるってことが決まってから作ったんで、疾走感ある感じになってます。

Kate ビートも攻めてる感じだから戦いの歌みたいだなってオケを聴いて感じてたんです。それで全力で戦ってるって言ったら、ももクロしかいないなと思って勝手にイメージしてます(笑)。ほかのアーティストさんのことを歌詞にしたっていうのは初めてで、そのぐらい衝撃を受けたんですよね。2012年の夏に西武ドームでやったときのライブを観に行ったらもう神セットリストで(笑)。

石野 ははは(笑)。

Kate 去年ももクロの「猛烈宇宙交響曲・第七楽章『無限の愛』(Emperor Style)」でインギーが参加したこともかなり驚きましたし、今回のアルバムを作る上でもかなりの原動力になりましたね(笑)。

──アイドルを含む日本のカルチャーの影響を受けてるKateさんと、メタルサウンドを追求し続ける石野さんという2人のバランスがAREA51のこだわりに直結してますね。

石野 メタルらしさも日本語で歌うこともどっちも大事だから、そのミックスの具合というか……さっきのギターのオリジナリティの話もそうだけど、いろんな要素のバランスの取り方次第でできあがってくるものの個性も変わると思うんですよね。海外アーティストを迎えてメタルサウンドを仕上げつつ、日本人が日本語で歌ってるっていうギャップみたいな部分は海外の人から見たときに興味を持ってもらえる武器だと思ってます。

ニューアルバム「Judge the JOKER」2014年11月12日発売 / 2700円 / The Devil's Own Music / DQC-1395 / Amazon.co.jp
「Judge the JOKER」
収録曲
  1. The Phantom
  2. The Vampire's Agony
  3. Over the Rainbow
  4. FALSA LUCE
  5. CALL MY NAME
  6. The Devil's Own
  7. Valkyrja
  8. No More Pain (Why not me?)
  9. Sang Noir
  10. Fly away from the flower
  11. Save Our Roots
AREA51(エリアフィフティワン)

石野洋一郎(G)とKate(Vo)を中心としたハードロック / ヘヴィメタルユニット。ネオクラシカルロックに傾倒した重厚なアンサンブルと、エモーショナルなハイトーンボーカルが織り成す壮大な楽曲群でメタルファンの支持を得る。2005年8月に1stアルバム「Ankh」でデビューし、2008年3月発表の2ndアルバム「Daemonicus」収録の長編曲「Lord Knows」にImpellitteriのロブ・ロック(Vo)をゲストに招くなど、海外の名立たるアーティストやエンジニアとのコラボレーションも行い始める。2014年11月にはSoilworkのダーク・ヴェルビューレン(Dr)、Symphony Xのマイケル・レポンド(B)、ジェイムズ・ラブリエのソロプロジェクトメンバーであるマット・ギロリー(Key)という実力派メタルバンドのメンバーが参加した4thアルバム「Judge the JOKER」をリリース。