音楽ナタリー PowerPush - AREA51

海外プレイヤーと生み出す“日本語メタル”

海外アーティストにオファー

──制作に入ったのはいつからですか?

石野 前作出してからちょくちょくやってたけど、ガッツリやりだしたのは今年からですね。レコーディングは今回、海外の連中とやったんで、データのやり取りをしつつ進めました。早い曲はもう1年以上前にドラムのトラックだけ録ってたものもありましたね。

──今作にはSoilworkのダーク・ヴェルビューレン(Dr)、Symphony Xのマイケル・レポンド(B)、ジェイムズ・ラブリエバンドのマット・ギロリー(Key)という海外のそうそうたるメンツがレコーディングに参加してますね。

石野 メタルのサウンドに妥協しないというコンセプトが一貫してあるので、過去にはImpellitteriのロブ・ロックにゲストで歌ってもらったりとか、スウェーデンでミックス、マスタリングをやってみたりとか……。3rdアルバムの「Goddess」(2010年3月発売)からKateと2人のユニット編成になったんで、逆にそれも生かしてやりたいなあと思って。で、そう考えたときに、今回のアルバムを作るときはいわゆる “本場”のメンバーを迎えて作ろうっていうのを決めて。で、コンタクトした感じですね。

──もともと知り合いだったんですか?

石野 いや。直接ホームページからコンタクトして「音源とPVチェックして気に入ったらやってほしい」ってお願いして(笑)。

──それで返事が来るっていうのもすごい話ですね。

石野 そうね、ダメもとっていう感じもありました。最初ダークにコンタクトしたら、曲もいいしやりたいって言うてくれて。次にマットにお願いするときは音源とPVにプラスして、「ダークがやってくれる」っていうのもセットでメールを投げて。それでマットを口説いたあとは、「ダークとマットがやってくれる」ってメッセージも添えてマイケルに連絡したんですね(笑)。

Kate(Vo)

Kate あははは(笑)。

石野 ほかのアーティストも候補でいたんですけど、一緒にやりたいと思ってコンタクト取った最初の人たちでもうOKでした。

──実際にこのメンバーがレコーディングに参加したことによって、アレンジに変化が生まれたり、何かインスピレーションを受けたりすることってありました?

石野 基本はドラムだとドラムパターンとか、ベースだとベーシックのリズムっていうのはできてたんで、それを送って彼らが何をしてくるかっていう楽しみはありましたね。「これ弾いて」って言って「うん、わかった」って言って演奏するだけじゃなくて、曲全体を理解して「俺ならこうだね」とかっていう主張も入れてきたんで、すごい興奮しました(笑)。

──マット・ギロリーと石野さんのソロバトルも聴きどころですね。キーボードのパートは楽譜で渡したんですか?

石野 いや、ソロは俺が先に弾いたトラックをボンって投げて、それを聴いてもう自由にやって、っていう感じですね。

日本語をやめたら普通のメタルバンドになる

──海外の実力派メンバーを迎えた今作ですが、歌詞は一貫して日本語ですね。

石野 そう、そこはこだわってます。一番大事なのは本物であることっていうことで、言葉とか歌での表現力ってネイティブランゲージに勝るものはないと思ってるんです。「メタルサウンドにこだわるんだったら英語にしたらどうなの?」って言われることもあるんだけど。

──それこそ海外でも受け入れてもらいやすくなるんじゃないですか?

石野 でもそれをすると圧倒的に失うもののほうが多いと思うんです。しかも「日本語でやってるからこのバンドは聴かない」っていう人は海外ではあんまりいない実感がありますね。あとは歌が英語になると、途端に“普通のメタルバンド”になるんで。

──日本語もオリジナリティの1つとして捉えているんですね。

Kate(Vo)

Kate 英語で歌ってる日本のメタルバンドだったら、現地の人はわざわざ日本人のバンドを聴かなくてもいいよってなっちゃうと思うんです。日本人のリスナーは日本語を意味のあるものとして聴いてくれるし、逆に海外の人は「日本語はクール!」みたいな感じで、斬新な響きを感じてくれることもあるので。

──「Over the Rainbow」は「君の味方さ」という歌詞を含め、前向きなメッセージが印象的でした。作詞はKateさんが手がけてるんですよね?

Kate はい。曲とか音楽面のプロデュースは全部リーダーに任せて、できあがった曲の雰囲気から、私が頭の中で物語を作って歌詞にしていきます。この曲は制作中に震災があって、当時けっこう大変な目に遭ったんですけど、だからこそ人を歌で励ましたいなっていう気持ちになれた曲なんです。

ニューアルバム「Judge the JOKER」2014年11月12日発売 / 2700円 / The Devil's Own Music / DQC-1395 / Amazon.co.jp
「Judge the JOKER」
収録曲
  1. The Phantom
  2. The Vampire's Agony
  3. Over the Rainbow
  4. FALSA LUCE
  5. CALL MY NAME
  6. The Devil's Own
  7. Valkyrja
  8. No More Pain (Why not me?)
  9. Sang Noir
  10. Fly away from the flower
  11. Save Our Roots
AREA51(エリアフィフティワン)

石野洋一郎(G)とKate(Vo)を中心としたハードロック / ヘヴィメタルユニット。ネオクラシカルロックに傾倒した重厚なアンサンブルと、エモーショナルなハイトーンボーカルが織り成す壮大な楽曲群でメタルファンの支持を得る。2005年8月に1stアルバム「Ankh」でデビューし、2008年3月発表の2ndアルバム「Daemonicus」収録の長編曲「Lord Knows」にImpellitteriのロブ・ロック(Vo)をゲストに招くなど、海外の名立たるアーティストやエンジニアとのコラボレーションも行い始める。2014年11月にはSoilworkのダーク・ヴェルビューレン(Dr)、Symphony Xのマイケル・レポンド(B)、ジェイムズ・ラブリエのソロプロジェクトメンバーであるマット・ギロリー(Key)という実力派メタルバンドのメンバーが参加した4thアルバム「Judge the JOKER」をリリース。