ナタリー PowerPush - あらかじめ決められた恋人たちへ

池永正二が語る「DOCUMENT」劔樹人が語る「劔樹人」

あらかじめ決められた恋人たちへがニューアルバム「DOCUMENT」をリリースした。

2011年発表のアルバム「CALLING」で“叙情派轟音ダブ”というワン&オンリーのスタイルを確立。以来、国内大型フェスに多数出演し、ロックバンドに勝るとも劣らないエモーショナルなステージを展開してきた彼らが今作で聴かせたのは、さらにストロングなサウンドだった。池永正二(Track、鍵盤ハーモニカ)が繰り出すマシンビートと、キム(Dr)&劔樹人(B)が刻むアップリフティングなリズム、サポートメンバー・オータケコーハン(LAGITAGIDA)のバカテクギターが絡むアンサンブルを背に、クリテツ(テルミン、Per、鍵盤ハーモニカ)のテルミンと池永の鍵盤ハーモニカが切なくもどこか希望を感じさせるメロディを奏でまくる。アルバムにはそんな8トラックが収録されている。

今回ナタリーではこの快作の発売を記念して、あら恋の特集企画を展開。まずは池永のインタビューを敢行し、バンドがさらなるタフネスを身に付けた、そのワケを聞いた。そして特集後半では劔への取材を実施。神聖かまってちゃんマネージャー、杉作J太郎率いる「男の墓場プロダクション」構成員、世界エアセックス選手権王者……。およそあら恋とはかけ離れたフィールドで活躍し続ける彼にベーシストとしてのルーツとこだわり、あら恋への思いを大いに語ってもらった。

取材・文 / 成松哲(P1~4)、橋本尚平(P5~8)
撮影 / 小原啓樹

池永正二インタビュー

「DOCUMENT」=この2年と旅立ちのためのアルバム

──過去のアルバムのタイトルは「釘」「ブレ」「カラ」「ラッシュ」「CALLING」。抽象性が高かったのに今作は「DOCUMENT」。ものすごく具体的ですよね。それだけに「いったいなんのドキュメントなんだろう」っていうのがまず気になったんですよ。

池永正二

前のアルバムの「CALLING」が出て(2011年5月)から、いろいろ状況が変わってきたっていうか。フジ(ロックフェスティバル)に初めて出たのもアルバムを出してから(2011年7月)なんで。あとはウチの照明さんに子供が生まれたりとか、「DOCUMENT」のジャケットを描いてくれてるSHOHEI(TAKASAKI)くんはもうすぐアメリカに住んじゃうし。それから仲のよかったミュージシャンが実家に帰っちゃったりとか。この2年、なんか出会いや別れが多かったっていうのは確かにあって。前のアルバムが出てから2年間ずっと曲を作ってたわけじゃないんですけど、そういう出会いと別れに直面して、なんやかんや感じたことや心の中に溜まったことを吐き出したかったんでしょうね。

──「でしょうね」ということは、アルバム制作当初からあら恋や池永さんを取り巻く状況の変化と、心の移り変わりを切り取る“DOCUMENT”にするつもりではなかった?

今回に限らず、タイトルはあと付けですね。あと付けって言ったらちょっとアレなんですけど、それこそ妊娠する前から子供の名前を考える人はいないでしょ(笑)。それと同じでアルバムタイトルも曲が生まれてから付ける。で、オレ、基本的にデモは外を歩きながらチェックすることが多いんですよ。新宿から家まで歩きながらアルバムに入れる曲をバーッと聴いたりするんですけど、そのときなんか「ああ、やっぱり『DOCUMENT』やな」って。曲を聴くたびにこの2年間のいろんなことがフラッシュバックしたんです。あとは旅立ちっぽい感じがしたというか。旅立ちっていうとちょっとカッコつけてるみたいなんだけど。

──いや、実際、TAKASAKIさんは渡米するし、バンド仲間は新しい道に進んでいるし、あら恋自身も大型フェスっていう新しいステージに踏み出しているし、池永さんは今回のリリースタイミングで新しいレーベルを立ち上げているわけですし。皆さん、なんらかの旅には出ている。

うん。今回のアルバムにはそんな感じがモロに反映されている気がしたんですよ。ターニングポイントっていうか、震災もあったし。そういういろんなことに対して何か大きいタイトルつけて総称するより、ほんと単純に「記録」って感じだと思って。

アンプ山積みで爆音ドーンッ!

──「DOCUMENT」ってその旅立ちの第1歩をかなり大股で踏み出した感のあるアルバムですよね。「CALLING」収録の「BACK」「ラセン」、去年のミニアルバム「今日」の1曲目「前日」と地続きであり、進化版。アタックの強いリズムの上で、オータケ(コーハン)さんが「ラセン」や「前日」以上にガツガツとギターを弾いていて。ぶっちゃけた話、傑作、名作の類だと思ってます。

ありがとうございます。確かに攻めてますよね(笑)。ややこしいことが多いですから。ややこしいことってなんか粘着質で、ネバネバしてて、ブワッて勢い付けないと振り切れないっていうか。あとなんか自分が若返ってる気がするんですよ。なんでなんかな?

──まさにその「なんで」を聞こうと思ったんですけど(笑)。

池永正二

うーん……。なんかね、昔のほうが年行き(年寄り)っぽいんですよね、ウチの曲って。それは自分が聴いてる曲とかでもそうで。昔はどアングラなヤツばっかり聴いてたんですけど、最近はなんか1周回ってSebadohとか、Passion Pitとかよく聴いてて。シーン全体を見ても、なんかオッチャンびいきな感じがしません?

──確かに洋楽誌の表紙や特集を見てると、ベテラン勢が元気ですよね。

J・マスシス(Dinosaur Jr.)とかも元気だし。相変わらずアンプ山積みで爆音ドーンッ!って感じでギターを弾いてて。見た目は志村けんみたいだけど(笑)、昔好きだったバンドが今でもバリバリ現役な姿を見てると、なんか吹っ切れたんですよね。オレ、カッコつけてたんかなって。

"Dubbing 06" あらかじめ決められた恋人たちへ Release TOUR 2013

2013年9月22日(日)
京都府 京都METRO
<出演者>
あらかじめ決められた恋人たちへ / LAGITAGIDA
2013年11月1日(金)
大阪府 梅田Shangri-La
<出演者>
あらかじめ決められた恋人たちへ
2013年11月2日(土)
愛知県 池下CLUB UPSET
<出演者>
あらかじめ決められた恋人たちへ
2013年11月9日(土)
東京都 代官山UNIT
<出演者>
あらかじめ決められた恋人たちへ
2013年11月16日(土)
福岡県 天神graf
<出演者>
あらかじめ決められた恋人たちへ / LAGITAGIDA / チーナ / 百蚊 / Hearsays
2013年11月23日(土・祝)
岡山 YEBISU YA PRO(オールナイト)
<出演者>
あらかじめ決められた恋人たちへ / and more
あらかじめ決められた恋人たちへ
(あらかじめきめられたこいびとたちへ)
あらかじめ決められた恋人たちへ

1997年、池永正二(Track、鍵盤ハーモニカ)のソロユニットとして活動をスタートしたエレクトリックダブユニット。当時の池永の勤務先、大阪・難波ベアーズを中心としたライブハウスやカフェ、ギャラリーなどでライブ活動を開始し、2003年アルバム「釘」をリリースする。2005年のアルバム「ブレ」のリリースを経て、2008年に拠点を東京に移すと、クリテツ(テルミン、Per、鍵盤ハーモニカ)、元ズボンズのキム(Dr)、元ミドリの劔樹人(B)を迎えたバンド編成でのライブを積極的に展開。同年に3rdアルバム「カラ」を、2009年にはライブ音源をエディットしたフェイクドキュメンタリー的アルバム「ラッシュ」を発表する。そして2011年に全曲バンドレコーディングによる「CALLING」を発売。これと前後して“叙情派轟音ダブバンド”としてその名を広く知らしめ「FUJI ROCK FESTIVAL」「BAYCAMP」「RISING SUN ROCKFESTIVAL」「朝霧JAM」など、大型ロックフェスにも多数招へいされる。2012年、30分2曲のミニアルバム「今日」をリリースし、2013年9月には5枚目のオリジナルアルバム「DOCUMENT」を発表した。