anoが背負った使命と、作曲への意識の変化、そして本当の自由を見つけるための挑戦|アルバム「BONE BORN BOMB」インタビュー (2/4)

世間からナメられてることへの抵抗

──今回のアルバムはアニメタイアップ曲が多いですが、どれも原作の世界観に寄り添っていて、原作ファンが納得するような仕上がりになっているなと思いました。

ありがとうございます。

──あのさんが作る曲は基本的に、自分が実際に覚えた感情を言葉にした、ものすごくパーソナルな作風だと思うんです。でもアニメに提供した曲はいずれも、あくまで自分自身の内面も描いていながら、同時に「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」の曲でもあるし、「らんま1/2」でもあって「僕とロボコ」でもある。作詞家・作曲家としての才能をすごく発揮してるなと思ったんですけど、手応えは感じていますか?

そうですね。前よりは前向きに作れてます。

ano

──前はそうでもなかった?

歌詞はずっと書いてたけど、メロディとかは別に自分がつけたいって感じもなかったし。

──ソロ活動を始めたばかりの頃に、そんな話をしてましたね。作曲にはそんなに興味ないって。

僕に魅力を感じてくれてる方々に作曲してもらって僕が作詞していくことで生まれる音楽の面白さはあると思うんです。でも自分の中でこうしたいああしたいって湧いてくる音楽をやってるうちに、「自分で曲も作れば早いんじゃないか?」って思うようになってきて。どっちもよさがあるのでどっちがいいとかないけど、作曲に前向きになれてきたのはそれが大きいです。

──とはいえ、普通の人は「そのほうが早いから」という理由で作曲してもうまくいかないものですよ(笑)。

「ロりロっきゅんロぼ♡」も本当に急ピッチで作ったけど、「僕とロボコ」を観て思い描いたことがちゃんと曲にできたのでよかった。全部歪ませようとか、サウンドについても突き詰められたし、「かわいい」「ポップ」だけじゃないハードな音楽が作れたなと思う。

──もともと作曲には興味がなかったという話ですけど、今回のアルバムは半分くらい自分で作曲していますよね。

やっぱり意識が変わった気がします。

──表現に対して貪欲になってきた、というのもありますか?

だし、あと「世間からナメられてることへの抵抗」というのもあるかな? 音楽に関して期待も評価もされてないし、「ただ声に特徴があるから歌わされてる人」ぐらいに捉えられてるのをすごく感じてて、そういう反応に対する反骨精神もある。歌わされてたことなんて一度もないのに。もちろん誰と音楽をやるかも自分で希望してる方々とさせてもらってるし、自分で曲作りもして、こういうライブ演出をしたい、こういう服にしたい、こういうミュージックビデオにしたいとか、そういうことも全部僕が主軸でやらせていただいてて、大人に用意されてるわけじゃないのに、あんまり世間に知られてない。なので「じゃあもっとがんばんなきゃ」でやっているところもある。テレビの共演者から「あの曲よかったね。誰が作ってるの?」って褒めてもらうことが多いんですけど、「それ、僕が作詞作曲やってるんです」って⾔うとすごく驚かれて。そういう反応もなんか悔しいんですよね。

──でも今は、しっかり結果を出しているように見えますよ。ぶっちゃけて言うと、数年前まではあのさんのアニメ主題歌タイアップが発表されたときに、原作ファンにはがっかりしている人も多かったと思うんです。

すごいマイナスな意見ばっかでした(笑)。風当たりの強さがすごかった。こんなに嫌なことばっかり言われるなら、もうタイアップやりたくないって思った記憶があります。

──でも「僕とロボコ」もそうですけど、ここ最近は「主題歌はano」と発表されたときにすごく歓迎ムードで、否定的なことを言う人はほとんどいませんよね。

うん、減ってきました。喜んでくれる人がいっぱいいてうれしかったです。「絶絶絶絶対聖域(ano feat. 幾田りら)」も、TKさん(凛として時雨)や幾田りらちゃんのファンにも広まったから、「あのちゃんってこんなふうに歌えるんだ」「あのちゃんってこんな歌詞を書けるんだ」って反応がめちゃくちゃ多くて。「ホントに知られてなかったんだな……」という気持ちもありつつ、すごく自信になりました。

──確かに「絶絶絶絶対聖域(ano feat. 幾田りら)」を作ったことは、世間のあのさんを見る目が変わる大きなきっかけの1つだった気がします。

この曲に対して向き合った時間はすごく長かったし、自分の本質的な部分と「デデデデ」の世界観が完全に重なるところを全部詰め込んだ曲だから、ステージで歌ってるときはすごく気持ちいいし、すごくすごく苦しい。何度歌っても、毎回不思議な気持ちになってます。

「タコピー」と「ロボコ」で情緒がヤバかった

──あのさん自身の本質的な部分と、曲を書き下ろした作品の世界観がクロスしているという意味では、いじめや家庭崩壊を描いたアニメ「タコピーの原罪」もそういうところがありますよね。僕は、あのさんが「タコピーの原罪」のオープニングテーマを担当すると聞いて、すごく納得の人選だなと思ったんです。

原作のマンガは大好きだし、実際に自分が中学生のときに思ってたこと、見てきた景色を曲にしたので書きやすかったです。でも、さすがにちょっとプレッシャーもありました。「大丈夫かな?」って。

──そういうプレッシャーって普段から感じるほうですか?

僕はそんなに感じないタイプだと思ってたんだけど、やっぱり「タコピーの原罪」はお話がダークでシリアスだし、当然、雑に解釈できないし。

ano

──オープニングテーマとして書き下ろした「ハッピーラッキーチャッピー」は、パッと聴いた印象はポップで優しい曲ですけど、あえて暗い曲にはしないようにしたんですか?

そうですね。「めちゃくちゃ暗くなっちゃいそう」って思いながら、そうならないように。この曲は今年の元日から5日くらいまでの間に作ってたんですけど、書いてるうちにどんどんどんどん気持ちが暗くなって。「どうしよう」ってなりながらも、サビでは開放感を出したい、夜空を飛んでる感じにしたい、という思いがあったので、できるだけ明るくなるようにしました。

──同じ「ジャンプ」系の原作でもギャグマンガの「僕とロボコ」とはテイストが真逆ですもんね。

全然違うから情緒がヤバかった(笑)。しかも作った時期がほぼ同時ぐらいで。「ロりロっきゅんロぼ♡」を書いたのは年末ぐらいだったから。頭がついていかなくて、正月はホントによくわからないテンションになってました。