音楽ナタリー PowerPush - アンジェラ・アキ 日本武道館ライブBlu-ray / DVD発売記念 村石雅行×沖山優司

本人不在のインタビュー 2人が語るアンジェラの素顔

常に前に向かって進んでいる

──約4カ月、全44本のツアー。ファイナルの日本武道館当日の心境はいかがでした?

「アンジェラ・アキ Concert Tour 2014 TAPESTRY OF SONGS -THE BEST OF ANGELA AKI」東京・日本武道館公演当日の様子。(撮影:田中栄治)

村石 俺はね、アメリカに行くって本人からメールがきたときだけ「お別れなんだ」と思ったけど、時が経つに連れて、また絶対一緒にやれるっていう気持ちに変わっていったんです。お別れという気持ちは、ツアーに入ってからはまったくなかった。そこはオッキーと違ってたかな。必ず帰ってくるって、絶対そうなるって思ってたから、武道館のときも同じ感覚でしたよ。

──村石さんは本番のMCでもアンジーさんに「向こうで用事済ませたらすぐ戻ってきてね」って、ちょっとそこまで行くみたいな感じの言葉を贈られてましたよね。

村石 なんか家族で旅行に行ってるぐらいの感じに思えるんですよ。そのうちすぐ帰ってくるんだからって。得るものを得たら帰ってくるって、僕は思ってるんで。

──お2人から見て、当日のアンジーさんの様子はどうでした?

村石 いい演奏だったと思いますよ。素晴らしかった。

沖山 ファイナルの武道館の直前、大阪2DAYSまで構成とかでいろいろ悩んでたけど、それが決まってからは吹っ切れたというか、生き生きとしてた気がします。

村石 本人も納得してたしね。今回のツアー中でも、試行錯誤やいろいろ苦悩する部分があったけど、常にそれだけ完成度の高いものを求めてたんでしょうからね。

沖山 最後だし、大事にやりたいと思ってたんだと思うし。

──ファイナルなんだけど、ものすごく前に向かって進んでるツアーであり、武道館だったなと思います。

沖山 それがアンジーだよね。前向きですよね、常に。

村石 留まらない人ですから。

本作は豪華LPボックス仕様でのリリースとなる(写真はDVD盤)。

──最後の曲をアンジーさんが1人で歌い終えて舞台裏に戻ってきたときはどうでした?

村石 マネージャーが泣いてたから、泣けなかった(笑)。

沖山 先に泣かれちゃうとね。

村石 「終わったー」って顔してたね。ホッとしてたと言うか、悲しんではいなかった気がする。

沖山 あの最後の曲「サクラ色」はステージの脇で見てたんですけど、桜吹雪が舞うシーンはグッときましたね。いいシーンでしたよ。

──この武道館公演が1つの区切りとなったわけですが、お2人の中では、今後もまた一緒にやれるという思いでいらっしゃるようですね。

沖山 そうですね。アメリカでいろいろ音楽を学んでいただいてね。

村石 そして外国人……黒人のベーシストとドラマーを連れて帰ってくる、みたいな(笑)。

沖山 あははは!(笑) で、僕らのところにはライブの招待チケットが届くとか。そしたら、僕らローディーとしてツアーに帯同しましょうか(笑)。

“初老の2人”による即興演奏と小芝居

──では最後にこのDVDの見どころについて伺いたいのですが、今日はせっかくお2人に来ていただいてるので、2人のセッションについての話はいかがでしょうか。あのセッションには正式なタイトル名はないのですが、内輪では「耐え難き初老の日々」という名前で呼ばれてたんですよね。

沖山 そうです、そうです(笑)。

──村石さんの案で「貴重な青春の日々」と呼ばれるようになったんだけど、リハをやっていくうちにお2人がしんどいと言い出して結局「耐え難き初老の日々」になった、と以前アンジーさんに聞きました。

左から村石雅行、沖山優司。

村石 ま、そういうことにしておきましょうか(笑)。

沖山 初老の2人ですから(笑)。

村石 あの曲はアドリブで毎回違う感じでやってきてたんだけど、最後のほうはこのDVD収録のこともあるから、なんとなく同じ感じで固めてきてたんですよ。そしたらアンジーに怒られちゃって。

沖山 そうそう。「小さくまとまるな、最初のインプロみたいなほうが全然カッコいい」って。

村石 だから武道館は即興ですよ。何も決めずにね。そしたらあの日は、アンジーの衣装替えか何かに時間がかかったみたいで、それまでのホールでのライブの倍くらいの時間がかかって。ドラム叩きながら「まだ来ないの?」みたいな。こっちはなんとなく起承転結付けて、そろそろ終わろうかと思ってるのに全然来なくて。あれはけっこうきつかったな。それも収められてるってことですね?

──あ、それでドラムスティックを折ったんですか?

村石 いや、まあそれは、ね。

沖山 耐え難い感じになって(笑)。あ! あと小芝居も入ってるんですよね!?

村石 参ったな、あれはカットされると思ってたのに。

沖山 どうしてやらせるかね、素人に(笑)。

──アンジーさんがスナック「ふるさと」のママに扮してトークを展開する名物コーナーで、今回はお2人もお客さんとして登場されたんですよね。

沖山 リハでは何度ダメ出しされたことか(笑)。「ちゃんとセリフしゃべって!」「滑舌よく!」って。

──じゃあその成果もたっぷりDVDでご覧いただけると。

沖山 恥ずかしくて自分じゃ観られないわ。

──スナック「ふるさと」が次回いつ開店するのかを待ちつつ(笑)、この顔ぶれがまたそろうことを心待ちにしたいと思います。

沖山 スナック「ふるさと」も、次はセリフとか全部英語になってたりしてね(笑)。

村石 あははは!(笑)

ライブDVD / Blu-ray「アンジェラ・アキ Concert Tour 2014 TAPESTRY OF SONGS- THE BEST OF ANGELA AKI in 武道館0804」 / 2014年12月17日発売 / EPICレコードジャパン
「アンジェラ・アキ Concert Tour 2014 TAPESTRY OF SONGS- THE BEST OF ANGELA AKI in 武道館0804」
Blu-ray Disc / 7400円 / ESXL-48
DVD / 6300円 / ESBL-2374~5
収録内容
  1. 告白
  2. Again
  3. 輝く人
  4. Final Destination
  5. Kiss Me Good-Bye
  6. 心の戦士
  7. 大袈裟に愛してる
  8. TRAIN-TRAIN
  9. スナックふるさと
  10. 孤独のカケラ
  11. 始まりのバラード
  12. モラルの葬式
  1. 乙女心
  2. ダリア
  3. This Love
  4. 夢の終わり 愛の始まり
  5. MUSIC
  6. たしかに
  7. 手紙 ~拝啓 十五の君へ~
  8. HOME
  9. サクラ色
特典映像

ANGELA AKI 2005-2014

アンジェラ・アキ

1977年徳島県出身、ピアノ弾き語りスタイルが特徴の女性シンガーソングライター。中学卒業時からアメリカに移住し、大学時代から本格的に音楽活動を開始した。2005年9月にシングル「HOME」でメジャーデビュー。2006年6月にリリースした1stアルバム「Home」は60万枚を超えるロングセラーを記録し、老若男女問わず幅広い人気を獲得する。また、同年12月日本武道館にて史上初となるピアノ弾き語りライブを行い、以降年末の武道館弾き語りライブが恒例化する。2008年には全国学校音楽コンクールの課題曲として「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」を提供し、このシングルはプラチナディスクに認定。2013年11月に、2014年秋からアメリカの大学に留学しブロードウェイミュージカルプロジェクトに専念することを発表。2014年3月5日にベストアルバム「TAPESTRY OF SONGS -THE BEST OF ANGELA AKI」をリリース後、4月より全44公演の全国ツアーを実施し、8月4日の東京・日本武道館公演をもって日本での音楽活動を無期限休止した。

村石雅行(ムライシマサユキ)

1964年生まれ。東京藝術大学在籍時より工藤静香、森高千里らのバックドラマーを務める。大学卒業後はKENSOや葉加瀬太郎率いるクライズラー&カンパニーに参加した。これまでに松任谷由実、椎名林檎、アンジェラ・アキ、スキマスイッチらのツアーサポートを担当。ドラムスクール「村石雅行ドラム道場」を運営するなど後輩の育成にも尽力している。

沖山優司(オキヤマユウジ)

1959年生まれ。1979年に近田春夫&BEEFを経て、1980年にテクノポップグループのジューシィ・フルーツのメンバーとしてデビュー。1985年のバンド解散後は、1987年にビブラストーンのメンバーになりアーティストとしての名を広めるほか、ベーシスト、作・編曲家としても活躍。ライブサポートを務めるアーティストに、アンジェラ・アキ、YUKI、清春、安藤裕子らがいる。