ナタリー PowerPush - アンジェラ・アキ

新たな夢への第一歩 有終の美を飾る集大成ベスト

自分の実力でやれることはやった

──改めて確認すると、アメリカでの音楽活動は日本での活動の延長線上にはないということですよね。

はい。グラミー賞は今の活動の延長線上にはないと思うし、ここで区切りをつけて勉強に集中することが何はともあれ必要だということです。

──でも、そういう決断に至ったのは、これまでものすごく充実した濃い活動をしてきたからなんでしょうね。まだ日本でやりきれてないという思いがあったら、そういう決断はできなかっただろうし。

そうなんですよ。こういう言い方をすると誤解されるかもしれないけど、今の自分の実力でやれることはやったんですよ、私は。目標にしていたことは全部達成できたし。武道館でやりたいと思って、史上初の武道館ピアノ弾き語り公演をすることができたし。まさか教科書に載るような曲が作れるなんて思っていなかったけど、それもできた。自分が思い描いていたよりも、ずっと先にいる気がするんです。思い描いていたものよりも多くのものを得られたと思うんですね。それは、クリアしたってことじゃなくて、心が満たされたっていう意味で。本当に素晴らしい経験をすることができた。中でもやっぱりライブ。私にとってはそれが一番大きいですね。私はライブに生きてきたんだなって改めて思う。曲作りで煮詰まったことはあっても、ライブに関して行き詰まりを感じたことは一度もなかった。5周年のあと燃え尽きたような感じになったけど、それでもまた続けていけたのは、やっぱりライブのおかげなんですよ。

──ただ音楽を聴きに来るというのではなく、アンジェラのライブには“私にとってのアンジェラ像”といったものを抱きつつ共感を求めて来るお客さんもたくさんいるでしょ。例えばそれが重荷になるなんてことはなかった?

それに応えようとはしていたんだと思います。でもそれに応える責任を感じてたということではなくて。やっぱりそこまで自分の音楽に入り込んでくれるというのはうれしいことだし、私自身、そこでつながれた感覚を持てるのは幸せなことだったから。むしろ私自身がいつもライブに救われていると感じていたくらいで。来てくれた1人ひとりとつながれるのは本当に喜びだった。だから私はこれからも一生パフォーマンスを続けるだろうなって思っています。それは1万4000人の前じゃなくて、何百人、何十人の前かもしれないけど、でも私は死ぬまで人の前で歌っていたいと思う。

ベストアルバムに込めた思い

──それではベストアルバムの話をしましょう。

はい。あ、そうそう、ジャケの話は聞きました? あのね、最後だからってことで思いきって……。

アンジェラ・アキ「TAPESTRY OF SONGS-THE BEST OF ANGELA AKI」初回限定盤ジャケット

──まさか裸になったとか?(笑)

ある意味、裸と一緒ですよ(笑)。メガネをとったの。初回限定盤のスリーブケースがある状態ではメガネをかけてるように見えるんだけど、それを外すと素顔。メガネなし。

──おおっ! ようやく美しいお顔が拝めると。

またまた(笑)。でもこれは私がやりたいって言ったの。ひとまずは、この10年の区切りとして。マイクを置くんじゃなくて、メガネを外すっていう。

──はははは(笑)。いいね、それ。

再出発の決意や初心に返る気持ちをビジュアルでも表せればいいなって考えて。

──なるほど。そしてタイトルが「TAPESTRY OF SONGS-THE BEST OF ANGELA AKI」。“TAPESTRY OF SONGS”というのはジャニス・イアンと共作した「Every Woman's Song」の歌詞のワンフレーズですね。

そう。あの曲を作っているときに、私が考えたラインなの。ジャニスに「すごくステキな表現ね」って褒めてもらって、うれしかったっていうのがあって。本当にこうやって1曲1曲並べてみて改めて思ったけど、ああ、タペストリーだなって。

──1曲1曲、魂をこめた糸によるつづれ織り。

そう。

──通常盤は全シングル曲を発表順に並べたものですが、初回限定盤にはアンジェラ自身が選んだ裏ベスト的な曲を集めたディスクとDVDが付くんですね。

どっちかだけじゃ成り立たないから。例えば「宇宙」とか「モラルの葬式」みたいな曲のダークな世界観も間違いなく私のものであって、シングル曲だけだと私を表現したことにならないんですよ。

──確かに。それにしても改めて思うけど、1曲1曲が濃いですよね。

ホントにねえ。遊びのある曲とか、軽い感じの曲をあんまり作ってこなかったのは、ちょっと反省すべきところですね。でも軽い感じで音楽に向き合うことができないんですよ、私は。全部真剣。だから全部濃くなっちゃうっていう(笑)。

アンジェラの原点になったデビュー曲「HOME」

アンジェラ・アキ「HOME」ジャケット

──ではシングルで発表された15曲の中からいくつか聞いていきますが、まず「HOME」。記念すべきデビューシングルでしたね。

はい。この曲をデビューシングルにすることは満場一致で決まりました。ただ、サビの頭に「ふるさと」って言葉を持ってくるのは、初めは抵抗があったんです。ちょっと和風すぎるかなって。けっこう何回も書き直して、時間をかけて作りました。

──結果的にそこがアンジェラの個性につながったよね。和風のテイストがすっと入ってくるという。

そうですね。デビュー曲だから胸を張って出せるものにしたかったんですよね。この曲はいつも自分が帰ってこれる場所になった気がしてるんです。節目節目で帰ってこれる曲というか。

──ホーム、ふるさとというのは、生まれ育った場所というよりは心の場所という意味だと、この曲ができたときの取材で言っていたのを覚えてます。

そうそう。だからこの10年で出会った人、つながり、そういうのも全部私にとってのふるさとだと思うし。ふるさとっていろんな景色の中に存在するし。10年近く歌ってきた今、なおさらそう感じますね。

アンジェラ・アキ「サクラ色」ジャケット

──「サクラ色」はアンジェラ史上、屈指の名曲だと僕は思っています。初めての武道館で初披露されたときのことが忘れられない。あれは心底感動しましたよ。

ありがとうございます。あの日、あの場所に来てくれた人のために曲を作りたいと思って書いたのがこれだったんですよね。私にとっての第2のふるさとであるワシントンD.C.のときの思い出を客観的に歌にしたもので。音楽という夢を初めて描いた場所だったし、離婚したけど当時の夫もその夢を一緒に見たし。あの時代がなかったら今の私はなかったという。

──ワシントンD.C.で過ごした18歳から25歳までがサクラ色だったとしたら、日本で活動を始めた26歳から今に至る10年は何色だったと思いますか?

何色だろう……。いろんな色が混ざっているんだろうけど。サクラ色みたいに淡い色じゃないことは間違いないですね。もっと強い色のような気がします。

ベストアルバム「TAPESTRY OF SONGS-THE BEST OF ANGELA AKI」 / 2014年3月5日発売 / EPICレコードジャパン
初回限定盤 [2CD+DVD] 3990円 / ESCL-30010~2
通常盤 [CD] 3059円 / ESCL-4170
CD収録曲
  1. HOME
    (2005年9月発売デビューシングル)
  2. 心の戦士
    (2006年1月発売2ndシングル)
  3. Kiss Me Good-Bye
    (2006年3月発売3rdシングル / 「ファイナルファンタジーⅩⅡ」挿入歌)
  4. This Love
    (2006年5月発売4thシングル / MBS・TBS系アニメ「BLOOD+」エンディング・テーマ)
  5. サクラ色
    (2007年3月発売5thシングル / ソニー「サイバーショット」CMソング)
  6. 孤独のカケラ
    (2007年5月発売6thシングル / TBS系ドラマ「孤独の賭け ~愛しき人よ~」主題歌)
  7. たしかに
    (2007年7月発売7thシングル / au LISMO CMソング)
  8. Again
    (2007年9月発売配信限定シングル / フジテレビ系「めざましテレビ」テーマソング)
  9. 手紙 ~拝啓 十五の君へ~
    (2008年9月発売8thシングル / NHK全国学校音楽コンクール「中学校の部」課題曲)
  10. 愛の季節
    (2009年9月発売9thシングル / NHK連続テレビ小説「つばさ」主題歌)
  11. 輝く人
    (2010年4月発売10thシングル / NHK総合「こころの遺伝子」テーマソング)
  12. 始まりのバラード
    (2011年6月発売11thシングル / フジテレビ系ドラマ「名前をなくした女神」主題歌)
  13. I Have a Dream
    (「始まりのバラード」カップリング曲 / 「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」テーマソング)
  14. 告白
    (2012年7月発売12thシングル / TVアニメ「宇宙兄弟」エンディングテーマ)
  15. 夢の終わり 愛の始まり
    (2013年7月発売13thシングル / シオノギ製薬「セデス・ハイ」CMソング)
初回限定盤ボーナスディスク収録曲
  1. Rain
    (ミニアルバム「ONE」収録)
  2. 宇宙
    (1stアルバム「Home」収録)
  3. MUSIC
    (1stアルバム「Home」収録)
  4. TODAY
    (2ndアルバム「TODAY」収録)
  5. モラルの葬式
    (2ndアルバム「TODAY」収録)
  6. One Melody
    (2ndアルバム「TODAY」収録)
  7. 愛のうた
    (2ndアルバム「TODAY」収録)
  8. ANSWER
    (3rdアルバム「ANSWER」収録)
  9. ダリア
    (3rdアルバム「ANSWER」収録)
  10. Final Destination
    (3rdアルバム「ANSWER」収録)
  11. LIFE
    (4thアルバム「LIFE」収録)
  12. Every Woman's Song
    (4thアルバム「LIFE」収録)
  13. 愛と絆創膏
    (4thアルバム「LIFE」収録)
  14. Cry
    (6thアルバム「BLUE」収録)
  15. One Family
    (5thアルバム「WHITE」収録 / NHK「宇宙の渚」テーマソング)
初回限定盤DVD収録内容
  • 150分にもおよぶ、全てのミュージックビデオ+「手紙」の新ミュージックビデオ、未発表の秘蔵ライブ映像を収録
アンジェラ・アキ

1977年徳島県出身、ピアノ弾き語りスタイルが特徴の女性シンガーソングライター。日本人とイタリア系アメリカ人とのハーフで、黒縁メガネにTシャツ&ジーンズといった気取らない格好がトレードマーク。中学卒業時からアメリカに移住し、大学時代から本格的に音楽活動を開始した。2005年9月にシングル「HOME」でメジャーデビュー。2006年6月にリリースした1stアルバム「Home」は60万枚を超えるロングセラーを記録し、老若男女問わず幅広い人気を獲得する。また、同年12月日本武道館にて史上初となるピアノ弾き語りライブを行い、以降年末の武道館弾き語りライブが恒例化する。2008年には全国学校音楽コンクールの課題曲として「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」を提供し、このシングルはプラチナディスクに認定。2009年リリースの3rdアルバム「ANSWER」もチャート1位を記録した。2013年11月に、2014年秋からアメリカの大学に留学しブロードウェイミュージカルプロジェクトに専念することを発表。2014年3月5日にベストアルバム「TAPESTRY OF SONGS -THE BEST OF ANGELA AKI」をリリース後、4月より全44公演の全国ツアーを実施し、8月4日の東京・日本武道館公演をもって日本での音楽活動を無期限休止する。