詩羽の3Dアバターが歌い踊る! αU metaverseで水曜日のカンパネラのバーチャルライブを体感せよ

KDDIが「もう、ひとつの世界。」をコンセプトに掲げた新たなサービスプラットフォーム「αU」をローンチ。「αU metaverse」「αU market」「αU live」「αU wallet」「αU dotadp」「αU research」「prompt αU」といった多岐に渡るサービス / 活動を通して、Web3.0時代におけるバーチャルとリアルの可能性を追求していく。

その施策の1つとして、3月7日にアプリ「αU metaverse」がリリースされた。これはユーザーが自身のアバターを作成し、渋谷などの街に繰り出して他ユーザーとコミュニケーションを取ることができるメタバースプラットフォーム。さらにプライベート空間である「マイルーム」や「ライブ体験スペース」、居酒屋などの「コミュニケーションスペース」も設けられ、バーチャルならではの演出に彩られたライブやイベントを体験することができる。また「αU metaverse」のリリースを記念して、3月8~12日には東京・Hzにて「αU」のポップアップコーナーが展開される。

本特集では3月12日に「αU metaverse」にてバーチャルライブおよびミート&グリートを行う水曜日のカンパネラにインタビュー。モーションキャプチャ用のスーツを着て自身の3Dアバターの動きを確認するリハーサルを終えた詩羽およびDir.Fに、ライブへの意気込みやメタバースについての印象などを語ってもらった。

取材・文 / ナカニシキュウ

バーチャルはあくまで手段の1つ

──水曜日のカンパネラは3月12日にαU metaverseにて自身初のメタバースライブを行います。詩羽さんはこれまで、そうしたバーチャルな文化にどんなイメージを持っていましたか?

詩羽 世代的にも、少しずつそういうものが当たり前になってきた感覚はあるんですけど、私自身はまったく詳しくなくて。まあ、TikTokとかのSNSだったり、ライブチャットアプリだったりをバーチャルのアカウントでやっている人たちも普通にいるので、身近なものなんだろうなとは思いつつ……自分自身にとってはちょっと遠いものでもありましたね。

──VRコンテンツなどに触れたこともそんなにない?

詩羽 ないですね。興味はあったし、普通に「やってみたいな」とはずっと思ってるんですけど、VRゴーグルとかを持ってる友達がいるわけでもなく(笑)。“どこかへやりに行かなきゃできないもの”という感じだったから、もっとスマホなどで気軽に触れられるものになればいいなと思ったりはしていました。

──水曜日のカンパネラが表現している世界観はバーチャルの世界と親和性が高いような印象が個人的にはあるんですが、ご本人的にはいかがでしょうか。

詩羽 親和性……?

──例えば、「現実のライブよりもバーチャルのほうが、より伝えたい世界観を表現しやすい」というような思いはあります?

詩羽 「現実的に難しいことがバーチャルならできるな」っていう感覚は、もちろんありますね。曲によって一瞬でセットを変えられるとか……でもまあ、バーチャルで何ができるのかを私自身まだよくわかってないので、やっていくうちにわかっていけばいいかなと思います。バーチャルでライブをすることがもっと当たり前になっていけば、「あの人はこんなことやってる」というのを見て「私もやってみたいな」と思うかもしれないし。それは今、普通に誰かのライブを観に行って思うこととまったく同じだと思うので。

──なるほど。やっていくうちに何かが見つかれば前のめりになるかもしれないし、見つからなければそうでもないだろうし、という。

詩羽 そうですね、1つの手段にすぎないと思うので。

──Dir.Fさんはいかがですか? 以前お話を伺ったときに「今後、水曜日のカンパネラとしてアウトプットのチャンネルを増やしていきたい」ということをおっしゃっていましたが、その意味でメタバースというものの可能性をどんなふうに考えてらっしゃいます?

Dir.F 今、詩羽が言ったように、手段の1つでしかないとは思いますね。もちろん選択肢が増えるのはいいことだと思うので、今後の盛り上がり次第というところでしょうか。

──環境さえ整えば、積極的にバーチャルの世界にもコミットしていきたい?

Dir.F そうですね、面白いと思います。でも、まずはユーザーが増えてからの話でしょうね。例えば格闘ゲームなんかでも、ユーザーがキャラクターに近くなればなるほど愛情を持って戦いますよね。それに近い感覚で、各ユーザーがその世界の中で自己投影しやすい何かがあれば盛り上がっていくのかなと思いますので、その環境が整備されていけば状況も変わってくるんじゃないでしょうか。そうなったとき、そこでしかカンパネラに触れないという人が出てきてももちろんいいし、それでもなおリアルのライブにしか来ない人がいてもいいですしね。

バーチャルのステージに違和感はまったくない

──そして先日、メタバースライブのリハーサルが本番さながらに行なわれたということですが、そこで詩羽さんはモーションキャプチャ用のスーツを着てパフォーマンスされたんですよね。

詩羽 はい、やりました。

──率直に、やってみてどうでした?

詩羽 うーん……あんまり普段と違わなかったですかね。

──あ、そうなんですか。それは意外です。

詩羽 その場にお客さんがいるかいないか……実際に目の前にいるお客さんに届けるのか、その先の人たちに届けるのかの違いだけだったので、パフォーマンスへの力の入り方とかは特に何も変わらずでしたね。逆に、普段のリハーサルとかでもその場にいるスタッフさんたちをお客さんに見立てて歌ったりしているので、今回もそれと同じです。感覚としてはそんなに変わらなかったですね。

──なるほど。では、アバターとして仮想的なステージに立つ感覚はどんな感じでした?

詩羽 一応、目の前に大きなモニターを置いてもらっていたので、そこで私がアバターになっている様子も見られる状態だったんですよ。だからなんか、「私がもう1人いる」みたいな感覚に近かったかもしれないですね。

──違和感などは特になく?

詩羽 違和感は特になかったんですけど……例えば腕を上げるような動きをするときに、自分が思ってる高さと画面上に映ってる腕の高さにズレがあるように感じる瞬間はあって、「腕が顔に被っちゃうな」とか。そこは画面を見ながら動かし方を微調整したりはしたんですけど、それ以外は特に。パフォーマンス面で違和感はあんまり覚えなかったですね。

──そのズレも、特にストレスという感じではなかった?

詩羽 なかったですね、はい。

──やってみて、特別な不満はなかった感じですかね。

詩羽 そうですねえ……不満というか、私は別に大丈夫だったんですけど、「その場にお客さんがいると思ってやる」というのが難しいと感じるアーティストも中にはいるんじゃないかと思うんですよ。私は受け入れる能力が高くて想像力も豊かなほうなので「お客さんがいるんですね! わかりました!」ってできるんですけど、そういうのが苦手な演者さんのためにも「もっと現場スタッフさんが楽しそうにしたらいいのに」とは思いました(笑)。

──なるほど(笑)。

詩羽 もちろん、みんなそれぞれ機材をいじったり仕事してるので、大変なのはわかります。演出のタイミングとかは1秒たりともずらせないし必死なんですけど、目の前でスタッフさんたちが盛り上がってくれてたら、こっちもやりやすいのかなって思いますね(笑)。

──それは実際にステージに立った人からしか出てこない、とても貴重な意見ですね。

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詩羽 あははは。

アバターはファッションの一種

──ライブで使うアバターのデザインに関しては、どんな印象ですか?

詩羽 あのアバターは「赤ずきん」のミュージックビデオに出てくる、JINOさんが作ってくださったキャラクターをもとにデザインされているんですけど、「そうそう、こういうの!」って感じでうれしかったですね。“私のベビちゃん”みたいな感覚に近いかもしれないです(笑)。自分が動くと画面の中のその子も動くのが見えて、「あー、かわいいねー」ってなる。そのベビちゃん的なかわいさ、“私の子”って気持ちはちょっとありましたね。

ライブに登場する詩羽のアバター。

ライブに登場する詩羽のアバター。

──これはちょっと聞き方が難しいんですけど、「アバターの姿でバーチャルの世界に存在する」ことって、ある種「違う自分としてそこにいる」ことに近い行為だと思うんですね。その点について、普段から「見せたい自分を見せる」ということに意識的な詩羽さんがどう思っているのか、ぜひ知りたいんですが……。

詩羽 ……えーと、どういうことですか?(笑)

──ですよね(笑)。例えば、画面の中にいるアバターを指して「この子が詩羽だ」と思われるのが嫌だったりはしないのかなと。

詩羽 うーん、でもそれは私が動いてるわけだから。もし私じゃない人が私のキャラクターを使って動いているとしたら、それは私じゃないからたぶん嫌ですね。でも、今回の場合は私が私のキャラクターになってやってるので、それはやっぱり私だと思うんですよ。自分の子だから自分がやる権利がある……って感じですかね。

──いつもの自分の姿のままバーチャルのステージに立てるのであれば、そのほうが望ましいですか?

詩羽 いや……。

──それはそれで違うんですね(笑)。

詩羽 あはは。なんかまあ、基本的に自分の姿でいつも出てるので、こういう機会に新しく面白いことをするってなったときは、新しいやり方をしてみたいという気持ちはありますよね。これまでと違う新しい場所へ届けるためには、やっぱりバーチャルって大きな手段だと思うので。

──なるほど。「面白いんだからいいじゃん」という感じですかね。

詩羽 はい。

──例えば、変身願望というかコスプレ願望みたいなものって詩羽さんは持っていたりするんですかね?

詩羽 んー、コスプレかあ……別に、世間的にコスプレとされている衣装でも、私の中では単に「着たいときに着ればいいもの」なんですよね。特にハロウィンに限らなくてもいいなと思ってて。例えばゴスロリファッションとかをコスプレの枠としてハロウィンに着てる人もけっこういるけど、私は別に「これは普通にファッションだな」と思うから……あ! だから、アバターもそれと一緒かもしれない。「何を着ようかな?」という気持ちで、ナース服なのか、ゴスロリなのか、アバターなのか、みたいな(笑)。そのくらいの気持ちなのかもしれないですね、自分の中で。

──なるほど、ようやく腑に落ちました(笑)。それはすごくわかりやすいです。

詩羽 うん、そういう感じですね。