ナタリー PowerPush - Alice Nine

ロックバンドを組む楽しさと ポップミュージックの奥深さ

1月に初の日本武道館公演を成功させ、2月発売のアルバム「GEMINI」がバンド史上最高傑作と各方面から絶賛されるAlice Nine。ソングライティングや演奏スキル、ライブパフォーマンスなどあらゆる面で彼らは今まさに急成長を続けており、その進化の勢いはとどまることを知らない。そんなAlice Nineが6月8日にニューシングル「BLUE FLAME」をリリース。彼らは何を思ってこの曲を作り出したのか、ナタリーでは5人のメンバーにその真意を訊いた。

取材・文/橋本尚平

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この曲を聴いて「バンドを始めよう」と思ってくれたらうれしい

──アルバム「GEMINI」でAlice Nineらしさが確立し、バンドとして完成形に到達した印象を受けたので、次の一手がどうくるのか興味深かったです。でも「BLUE FLAME」は「GEMINI」の延長線上にある曲というわけではないですよね。

沙我(B) そうですね。作り手の意識としてはアルバムとシングルは別なものと捉えてるんです。シングルは自分たちの音楽をみんなに知ってもらうツール。

将(Vo)

将(Vo) 変な妥協や打算もなく思いっきりアルバムが作れたからこそ、シングルでは「良い曲を作る」ってことだけに集中できたんです。

沙我 今回は曲を聴いた人に「Alice Nineみたいなバンドを始めよう!」とか、「こんなギターソロを弾きたい!」と思ってほしかったので、実際に僕らがバンドを始めた、中~高校生だった90年代ごろの匂いがある曲にしようと思いました。

──ああ! その「聴いていてバンドをやりたくなる」というのはすごく感じました。この曲をコピーできたらかなり気持ちがいいだろうな、って。

沙我 「これなら俺でもできるんじゃねえかな?」みたいな気持ちになってくれるとうれしいです。

──いやいや、この難しそうな演奏を聴いて「できるんじゃねえかな?」なんて思う人はなかなかいないと思いますよ(笑)。でも確かに「BLUE FLAME」はすべての楽器にそれぞれ見せ場が用意されていたり、2本のギターのアンサンブルだったり、バンドをやることの楽しさが詰め込まれた1曲だと思います。

ヒロト(G) 「GEMINI」では曲によって2人のギターの役割がほぼ完全に分かれてたけど、今回はシングルなので1曲の中でそれぞれのキャラが見えるようなアレンジにしようっていうのは心がけました。うちのバンドは2人のギタリストの方向性が極端に違うので、音のキャラやフレージングの癖を1曲の中で振り分けてわかるようにしたいなって。ライブだと虎のアンプからはアメリカンな音が、僕のアンプからはブリティッシュ寄りの音が出てるんです。演奏も虎はズッシリしたリフがメインで、僕は上モノとか。でも「BLUE FLAME」ではそれが混ざってますよね。

──各パートのアレンジについてはメンバー同士で話しあって考えるんですか?

 そうですね、そこは結構細かく話すようにしてます。なるべくそれぞれが同じ音を弾かないようにとか。誰か1人が欠けただけですごく寂しく感じるくらい、1人のパートの存在感を大事にしたいと思ってるんです。

──実際にAlice Nineの曲をコピーしている人の話は聞きますか?

沙我 ええ、最近増えてきた印象はありますね。

 まだ発売される前の曲をコピーした映像がYouTubeにアップされてることもあるよね(笑)。黒人さんが「Kiss twice, Kiss me deadly」にあわせてベース弾いてて、すげえなって感動した。

虎(G) へえーっ。でも、もちろんうれしいんだけど、映像を観る前は多少怖いって気持ちもありますね。たまに最近、アマチュアだけどめちゃくちゃうまい人とかいるじゃないですか。発売前の曲なのに自分よりうまかったりしたらショックですから。いや、今のところはないですけどね(笑)。

自分が中学生だったころの感じが自然と出てくる

──Alice Nineのサウンドには海外のロックの要素がありますが、メロディだけを取り出すと日本の歌謡曲や、もっと言えば演歌にも通じる情緒やメランコリックさがどことなくありますね。沙我さんが作曲した今回の「BLUE FLAME」でも強く感じました。

沙我 そうですね。僕はTHE YELLOW MONKEYがすごく好きで、やってる音楽は全然違うんですけどすごく影響されてますから、彼らが目指したものに自然と僕も向かってるってことじゃないかなと思います。単なる海の向こうのコピーじゃない、この国でしかできない、自分たちにしかない味を出したい、って。

──確かにTHE YELLOW MONKEYと考え方は近いかもしれませんね。そこにルーツがあったんですか。

ヒロト バンドを始めて7年目になって気持ちにもちょっと余裕が出てきたからか、僕も最近は曲を作ったりアレンジするときに、自分が中学生だったときに聴いてた音楽や、よくコピーしてた曲の感じが自然と出てきてる気がします。僕の場合はもともとLUNA SEAから始まって、U2とか、あんまりギターが歪んでない音楽ばかり聴いてたんです。後になって好きになったバンドも彼らに影響を受けたバンドだったりして、いろんな音楽を試したけど結局自分が好きなものは一貫してるんだって気付いたから、最近はそういうのをもっと掘り下げていこうと思うようになりました。

ニューシングル「BLUE FLAME」 / 2011年6月8日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ

  • 初回限定盤A[CD+DVD] / 1890円 / TKCA-73648 / Amazon.co.jpへ
  • 初回限定盤B[CD+DVD] / 1890円 / TKCA-73649 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] / 1260円 / TKCA-73653 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. BLUE FLAME
  2. 残響ホワイトアウト
  3. G3(※通常盤のみ)
DVD収録曲(初回限定盤A)
  1. BLUE FLAME (MUSIC CLIP)
  2. MUSIC CLIP MAKING
DVD収録曲(初回限定盤B)
  1. BLUE FLAME (MUSIC CLIP) (another edition)
Alice Nine Live 2011 "7th THEATER"

2011年9月9日(金)
東京都 NHKホール
OPEN 17:45 / START 18:30
チケット一般発売:2011年8月6日(土)
前売 5250円 / 当日 5775円

Alice Nine(ありすないん)

2004年結成のヴィジュアル系バンド。将(Vo)、ヒロト(G)、虎(G)、沙我(B)、Nao(Dr)の5人からなる。所属事務所はthe GazettE等が所属するPS COMPANY。ポップで華やかなパフォーマンスは国内に留まらず世界的に高い人気を誇る。サウンド面ではデビュー当初の和情緒にこだわった作風からロック的な壮大さをもつものへと進化を遂げ、表現の幅を広げている。バンド名表記は2009年より「アリス九號.」から「Alice Nine」に統一。2011年には初の日本武道館ワンマンライブを成功させ、最高傑作との呼び声が高いアルバム「GEMINI」、そしてシングル「BLUE FLAME」を発表した。