「ちょっと、隣に座らせてください」
──続く「六等星の夜 Magic Blue ver.」も、やはり「新たな一歩」的なメッセージを感じます。つまりこのタイミングで、最初の一歩になったデビュー曲をセルフカバーするという。
「六等星の夜」(※2011年9月発売のデビューシングル)はまさしく始まりの曲だし、今まで1番ライブで歌っている曲だし、昔からのファンの方に愛してもらってる曲なので、それを今の自分の声で、また作品として残すということに、すごくドキドキしましたね。でも、変に気負わず、今歌える歌を真摯に歌う以外にないなと、腹をくくりました。もう、ごまかせないレベルでシンプルなバックで歌っているので。
──オリジナルバージョンはバンド演奏をバックに歌われていましたが、今回は1番はピアノの伴奏のみ、2番以降もそこにストリングスが加わるだけ。
正直、みんながどう思うんだろうっていうのは、すごく気になりますね。
──一聴して、声の密度が違いますね。
それは、息の漏れ方がぜんぜん違うからかもしれません。初期は、ホントに息がだだ漏れで(笑)。ただ息が漏れることで、いわゆるウイスパーボイスのような神秘的な響きになるんですけど、それは声帯にすごく負担がかかる歌い方なんですよ。なので意識的に息が漏れないように歌ってきたし、「今の声帯で、可能な限り長く歌えるように」ということを一番に考えてやってるので、そういう意味ではベストな成長ができてるんじゃないかと、自分では思ってます。
──そうした技術的な部分以外にも、例えば「RE:I AM」(※2013年3月発売の5thシングル)以降の力強さも備わっていると言うか。
それは、とてもうれしい感想です。ありがとうございます。
──先ほど「ドキドキ」とおっしゃいましたが、レコーディングの際、過去の自分と対決するみたいな意識、あるいはプレッシャーはありました?
いやあ、明らかに、昔のほうがへたっぴですから(笑)。
──いやいや(笑)。
ただみんなのオリジナルバージョンへの愛と言うか、思い入れを想像すると……思い入れって、歌の巧拙とは関係なく、何回聴いたかとか、どんなときに聴いたかとか、歌と一緒に歩いてきた年月と共に深まっていくものでもあるじゃないですか。だから、それに対して戦いを挑むと言うよりは、横に座らせてもらうみたいな感じで。
──オリジナルさんにはそのまま居てもらって。
「ちょっと、お隣よろしいですか?」って(笑)。
「糸」のようにいろんな人と、いろんなものを織り成してきた
──そして4曲目の「糸」は、中島みゆきさんのカバーですね。
これこそプレッシャーがありました(笑)。「六等星の夜」のようにセルフカバーではなく、正真正銘のカバーなので。「糸」は昔から大好きな曲で、何回も聴いて、歌っていた曲なんですけど、音源にするにあたって改めて何回も聴き返して、細かく音取りもして音程を叩き込んで。そのうえで原曲に忠実にするところと、自分の色を加えるところを考えて、念入りに取り組んだ曲です。
──レコーディングは順調でした?
そんなにたくさんは録り直さなかったと思います。「糸」は、いろんな歌い方ができる、すごく表現の自由度の高い曲なんですよ。ロングトーンもあるし、BPMも緩めなので、歌い方の選択肢がたくさんある。その方向性さえ定められれば、あとはわりとスムーズに。それこそ「花の唄」で設定をいろいろ考えたみたいに。「糸」は、自分としてはいつもの少し冷ややかな感じではなくて、可能な限り温かいほうに。じんわり、温かくなるようなニュアンスを出せるように歌いました。
──以前、Aimerさんは「自分が人間として一番誇れるのは、出会う人に恵まれているところ」だとおっしゃいましたが……。
あはは(笑)。はい。でもすごい発言ですね、改めて聞くと。
──その言葉と「糸」の歌詞はリンクする部分もあるのかなと。
確かにそうですね。私もこれまでいろんな人と出会って、いろんなものを織り成してきたので。今回のシングルにしても、梶浦さんとの出会いがあったり。そういう運命的なものを、改めてこのシングルで感じましたね。
生命の危機を感じるくらいじゃないと燃えない
──11月からは全国ツアー「LIVE TOUR 17/18 “hiver”」が始まりますね。
冬をテーマにしたツアーなので、フランス語で冬を意味する「hiver」という、また読みにくいタイトルを付けてしまったんですけど(笑)。武道館公演を終えたあとの、次の一歩になるツアーなので、また新しい“今の歌”をお聴かせできたらいいなと思っています。
──冬はお好きですか?
好きです。ただ、ジャケットの撮影などで寒いところに行き過ぎて……。
──ははは(笑)。
手足がかじかむ経験ばかりしているんですけど、うん、でも好きです。
──今回のジャケットとアーティスト写真はどこで撮影されたんですか?
今年の3月にアイスランドで撮りました。
──その3月のアイスランドで、Aimerさんは半袖なんですけど……。
もはや寒くない撮影だと逆に物足りないと言うか、燃えないと言うか。生命の危機を感じるぐらいの環境にいると、ライブをやってるときみたいな精神状態になれるんです。
──ほどほどにしたほうがいいと思いますよ(笑)。
はい(笑)。ライブのときは、声帯的な意味で追い詰められているので、それと寒い場所での撮影が似ている気がして。そうやって逆境とか苦境に立たされているほうが、力を発揮できるのかもしれません。
- Aimer
「ONE / 花の唄 / 六等星の夜 Magic Blue ver.」 - 2017年10月11日発売 / SME Records
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初回限定盤 [CD+DVD]
1620円 / SECL-2209~10 -
通常盤 [CD]
1350円 / SECL-2211 -
期間生産限定盤 [CD]
1620円 / SECL-2212
- 初回限定盤、通常盤CD収録曲
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- ONE
- 花の唄
- 六等星の夜 Magic Blue ver.
- 糸
- 期間生産限定盤CD収録曲
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- 花の唄
- ONE
- 六等星の夜 Magic Blue ver.
- 糸
- 花の唄 Movie ver.
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 「zero」MUSIC VIDEO
- 「歌鳥風月」MUSIC VIDEO
- Aimer「LIVE TOUR 17/18 "hiver"」
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- 2017年11月16日(木)埼玉県 和光市民文化センター サンアゼリア
- 2017年11月23日(木・祝)北海道 わくわくホリデーホール
- 2017年11月26日(日)静岡県 アクトシティ浜松
- 2017年12月2日(土)新潟県 新潟県民会館
- 2017年12月8日(金)岡山県 岡山市民会館
- 2017年12月10日(日)兵庫県 神戸国際会館
- 2017年12月16日(土)宮城県 東京エレクトロンホール宮城
- 2017年12月17日(日)群馬県 ベイシア文化ホール
- 2017年12月24日(日)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2018年1月14日(日)長野県 レザンホール
- 2018年1月20日(土)広島県 上野学園ホール
- 2018年1月21日(日)京都府 ロームシアター京都
- 2018年1月23日(火)大阪府 フェスティバルホール
- 2018年1月27日(土)福岡県 福岡サンパレスホテル&ホール
- 2018年2月21日(水)東京都 NHKホール
- Aimer(エメ)
- 女性シンガーソングライター。幼少期よりピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始め、15歳のとき声が一切出なくなるというアクシデントを経験し、それがきっかけとなり独特の歌声を獲得する。2011年から音楽活動を本格化させ、同年9月にシングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビューを果たした。以降、「夏雪ランデブー」「機動戦士ガンダムUC」といったアニメ作品のテーマソングを担当。2014年6月に2ndアルバム「Midnight Sun」と、澤野弘之とのコラボレーションアルバム「UnChild」を同時発売し、同年9月には菅野よう子、青葉市子らが参加する新作「誰か、海を。」を発表した。2015年7月に3rdフルアルバム「DAWN」をリリース。2016年7月にONE OK ROCKのTaka(Vo)と凛として時雨のTK(Vo, G)が提供およびプロデュースした楽曲を収めた両A面シングル「insane dream / us」、8月にRADWIMPSの野田洋次郎(Vo, G)制作の「蝶々結び」を収めたシングルをリリース。9月にTaka、野田のほか、andropの内澤崇仁(Vo, G)、スキマスイッチが楽曲提供およびプロデュースをした新曲を含むアルバム「daydream」を発表し話題を集める。2017年5月にベストアルバム「BEST SELECTION "blanc"」と「BEST SELECTION "noir"」を同時リリース。8月に初の東京・日本武道館単独公演を行い、1万3000人を動員した。10月にトリプルA面シングル「ONE / 花の唄 / 六等星の夜 Magic Blue ver.」を発表。