ナタリー PowerPush - Aimer

大人と子供、永遠と刹那、優しさと寂しさ 相反する何かを歌う

相反する感情を断言せずに歌う

──そしてカップリング2曲は“シンガーソングライター”モードの楽曲。いずれも自作詞曲です。まず「Even Heaven」について伺いたいんですけど、せっかく「StarRingChild」で澤野さんから怒りや焦燥感から解放されて希望の光を見出すという歌詞をもらったのに、そのご本人は「終わりのない 願いだけ 響いていく」「“願い”だけは 誰にも壊せないと 信じてた」と相当希望のない歌詞を書いている(笑)。

ふふふふふ(笑)。確かに過去形で終わっているのでそう見えるかもしれないんですけど、私なりに希望を込めて書いた歌詞ではあるんです。私も澤野さんと一緒。「Even Heaven」に限らず、歌詞は聴く人に自由に解釈してほしいなと思っているので、壊れたのか壊れなかったのかは聴く人自身に決めてほしくて。

──そうか。「“願い”だけは 誰にも壊せないと 信じてた」けど“壊れちゃった”とも読めるけど、「“願い”だけは 誰にも壊せないと 信じてた」から“壊れない”とも読めるのか。

Aimer

はい。永遠に壊れないという希望を持つこともできると思いますし、やっぱり壊れてしまっているのかもしれない。そこはわからない。

──僕なんかはせっかくだから壊れないほうがいいんじゃないかなあって思っちゃいますけど、その結論に興味はない?

ああ確かにそうかもしれないですね。以前にもお話させていただいたんですけど、私自身は永遠なんてものはないし、心は脆いものだと思ってはいるんですけど、ないとわかっているからこそ執着してしまうこともあって。永遠を願ってしまう自分もいるし、その願う気持ち自体ずっと続いてほしいと思うこともありますし。一方で「ずっと続くのはイヤだなあ」って思うことも少なくはないんですけど(笑)。思春期の頃からそうやって永遠についていろいろ考えを巡らせるのが好きなんです。あとこれは1stシングルの「六等星の夜」の頃からそうなんですけど、相反する気持ちを書くことを一番大切にしていて。

──相反する気持ち?

永遠なんてあるわけがないと思っている自分もいる一方で、あるといいなと思っている自分がいることもそうなんですけど、なんにおいても人の気持ちは一筋縄ではいかないんだろうなって思っていて。悲しみを覚えることができるから、いいことがあったときのうれしさがひとしおになるんだろうし、絶望があるから希望もあるというか。その相反する気持ちっていうものを一番大切にして作詞するようにしているんです。両極端な感情を知っているからこそ、そのどちらの感情も生きてくると思っているので、歌詞においても両極端にある感情を両方とも出したいので。

──どうせならうれしいほうがいいに決まってるし、希望を抱けたほうがいいんだけど、やっぱりそう断言はしない?

はい。私自身、これまで心を動かされてきた音楽って、悲しいけれど温かいとか、優しいけど苦しいとか、そのどちらも表現しているものばかりだったので。それに幸せな曲を聴いて救われることもあれば、悲しい曲を聴いて救われることもあるとも思いますし。私の曲を救いの曲と聴くのか、悲しみの曲と聴くのかは、皆さんに委ねたいですね。

優しくも寂しい過去に包まれながら前を向く

──もう1つのカップリング曲「Mine」は「Even Heaven」とある意味対照的。ある春の風景という過去を歌いながらも、ちょっとだけ前を向いています。「春の陽気に誘われて前を向け!」とまでは言わないものの、きちんと希望を感じさせてくれる。

確かに(笑)。「しっとりとしたピアノが耳に残るバラード」という言葉にしてしまうとセンチメンタルな印象を受けるんですけど、メロディや音色に木漏れ日的な温かさを感じたのと、これまで春を描いた曲を歌ったことがなかったということもあって春をテーマに書いてみました。

──当たり前の話なのかもしれないんですけど、詞を書くときはやっぱりメロディに引っ張られる部分はあります?

ええ。「Even Heaven」が終わることはわかっているけど、続いていてほしいと願う歌詞になったのも、曲調がそうだったからっていう面がありますし。

──絶望的に真っ暗っていうわけではないけど、ウエットで粘度の高いブレイクビーツものだったから、ああいう詞になった。

そうですね。だから「Mine」では過去を思い出すことで前に進める力を持ってもらえるような、誰かの背中を押せる歌詞にしてみたかったんです。ただやっぱり相反する気持ちっていうのにすごくこだわっている自分がこの歌詞の中にもいて。温かみがあって背中を押してくれるような曲に仕上がった気はするんですけど、過去を歌っている以上、寂しさを覚える人もいるだろうなとも思ってます。でもきっとその少しの悲しさがあるからこそ、それを乗り越えようと前を向けることもあるはずで。優しい思い出に包まれながら前を向いてほしいとも思うし、悲しみを覚えながらも前を向いてほしいとも思いながら書いた歌詞なんですよね。

Aimer
ニューシングル「StarRingChild EP」 / 2014年5月21日発売 / DefSTAR Records
初回限定盤 [CD+DVD] 1620円 / DFCL-2060~1
通常盤 [CD] 1350円 / DFCL-2062
期間生産限定盤 [CD] 1620円 / DFCL-2063
CD収録曲
  1. StarRingChild
  2. Even Heaven
  3. Mine
  4. StarRingChild(Movie ver.)
  5. StarRingChild(instrumental)
  6. Even Heaven(instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • StarRingChild(Music Video)
Aimer(エメ)

女性シンガーソングライター。幼少期より両親の影響で音楽に親しみ、ピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始める。15歳のときに声が一切出なくなるアクシデントに見舞われるが、回復とともに独特の甘い歌声を得る。2011年から本格的に音楽活動を開始。幅広いジャンルのクリエイターとコラボレーションし、楽曲提供やゲストボーカリストとしての活動を通じてその才能が知られるようになる。2011年9月にシングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビュー。2012年8月発売のシングル曲「あなたに出会わなければ ~夏雪冬花~」はテレビアニメ「夏雪ランデブー」のエンディングテーマに採用され、大きな注目を集めた。その後10月に初のフルアルバム「Sleepless Nights」、12月にカバーアルバム「Bitter & Sweet」と精力的なリリースを展開。2013年3月にはアニメ「機動戦士ガンダムUC episode 6 ~宇宙と地球と~」の主題歌「RE:I AM」を、同11月には新曲とライブ音源を収録したアルバム「After Dark」をリリースした。そして2014年5月、表題曲が「機動戦士ガンダムUC」シリーズ最終章となる「episode 7 ~虹の彼方に~」の主題歌に採用されたシングル「StarRingChild」を発表する。